第71話 ディーフェンス!ディーフェンス!

歩き回りながら蟹を倒し始めてから1時間程が経過した。

もう何匹の蟹を倒したのか覚えていない。

とりあえずさっきLvが34に上がる程度には狩り回っていた。

電気スライムも結構倒したからレベル上がったんだろうね。

まぁ、蟹の経験値が多いことは間違いないけど。


とりあえずでSPが279もあるので、(筋力)と(器用さ)に100づつ振っておいた。


____________


Lv.34(0%)

・HP(体力):90/100

・MP(魔力):96/100

・STR(筋力):200

・MAG(超感覚):100

・SEN(器用さ):200

・COG(認識力):100

・INT(知力):100

・LUC(運):100

SP.79


スキル

・ステータス割り振り

・破魔魔法(12/100)

・火魔法(17/100)

・物理魔法(43/100)

・錬成魔法(20/100)


____________


さすがに一気にステータスが上がると少し違和感があるな。

階段は見つけたけど、キリもいいし今日はもう帰ろうかな。

そろそろ戻らないと夕食が遅くなりそうだし。

一応下の階を見てから帰る方がいいかな?

砂漠に迷路に鍾乳洞のような洞窟、そして火山っぽいところと、このダンジョンは環境変化が激しいし、下が雪山でも驚かないぞ。

一応明日は全部の荷物を持ってくるつもりだけど、防寒着が必要ならエルフさんたちに教えといてあげないといけないからね。


そんなわけで地下5階を見に行く。

階段を下りた先には、見事なまでの氷の世界が広がっていた。


「雪原ではなかったね。……これ全部氷?床も壁も天井も全て氷?」


昔どっかの遊園地かなにかにこんな感じの場所あったな~。

『マイナス20度の世界を体験しよう』とかいうやつ。

寒い通路を歩くだけだったけど、なにが面白いのか分からなかったなぁ……。


「とりあえず帰るか。火山の後にここは寒すぎるし、これエルフさん達駄目かもしれないな~。」


そんなわけで引き返して帰った。




ダンジョンから出ると、今日もタイミングよくエルフさん達が食事の準備を始めたところのようだ。

エルフさん達全員がエルフちゃんが火熾しするのを見守っている。

今日はエルフちゃんが火熾し当番なのかな?

今日中に食べられるといいね。


温かい目で見ていたら、帰ってきたことに気づいたのか隊長さんがやって来た。


「無事に戻ったか。どこまで進んだんだ?」


「地下4階まで進みましたよ。一応伝えていきますけど、地下4階は糞暑いところで、地下5階は糞寒い場所でしたよ。進むには結構準備が必要な感じです。」


「結構進んだんだな。そうか……。ありがとう、後で私から全員に伝えておく。モンスターはどうだった?」


モンスター?

……電気スライムと蟹ってどうなんだろう。

電気スライムは近づかなければ問題なく倒せると思うんだけど、一般的なエルフは蟹を蹴ってひっくり返せるのかな?

関節部分とかお腹のところなら問題なく手刀ナイフが刺さったけど、甲羅とか殻はめちゃくちゃ硬かったし……。

とりあえず隊長さんなら問題なく倒せると思うけど、エルフちゃんとかパットン君だとめちゃくちゃ苦戦しそうだね。


「まあまあ強いと思いますよ。3階で出る電気スライムは近づいたら危険そうですし、4階に出るデカい蟹は結構硬いので、エルフさん達では少し苦戦するかもしれません。」


「……デンキスライムとカニ?」


……スライムは知ってるはずだよね?

電気じゃ伝わらないのかな?

まぁ、雷以外って電気が関係することないだろうしね。

下敷きで頭を擦って「これが電気です」とか言っても馬鹿みたいだし。


あと蟹か……。

なんて言えばいいのかな?

そもそもあれは本当に蟹だったのかな?

ヤドカリというよりは確実に蟹だけど、足は左右5本づつの10本だったけど……。

確かタラバガニは蟹じゃなくてヤドカリの仲間なんだったよね?

足が8本がヤドカリじゃなかったかな?

というか考えてみれば、普通の蟹って地面に潜らないよね?

ヤドカリも地面には潜らないイメージだし……。

じゃあそもそも蟹じゃない可能性もあるのか。

……これは答えられないな。


「実際に見て判断した方がいいと思います。」


「そうか……。分かった。」


隊長さんは苦笑いだ。


伝えるべきことは伝えたと思うので、こちらも夕食の準備を始める。

エルフちゃんはまだ火種が出来てないみたいだけど、これも教育なのか他の人は見守っているだけだ。


周囲からのプレッシャーの中、こちらが火熾しをすると分かったのかエルフちゃんがチラチラ見てくる。

いやぁ~、そんなに見られると困っちゃうな~。


火魔法を使い一瞬で火を熾して見せた。

エルフちゃんの表情が完全に無となった。

これには隊長さんもニッコリだ。

エルフちゃんからは見えない様に、必死に笑い声をあげないよう我慢している姿がこちらからは見える。


長い間火熾しと格闘するエルフちゃんを眺めながら食べる肉多めのニンニクチャーハンはなかなか美味しかった。

ちょうど食べ終わる頃に火種が出来たようで、みんなが拍手してたよ。

各自で火熾しすればいいのにわざわざ待ってる意味はよく分からないけど、とりあえず一緒に拍手しておいた。

よかったね~。




翌朝、今日はエルフの方たちはお休みだそうだ。

昨日の悪魔との戦闘で負った怪我がさすがに1日では完治していないのもあるが、今日辺り陸路でこちらに向かっている残りの隊員が来るかもしれないとのことだった。


……今日中にダンジョン攻略終わらないかな?

前と違って気づいたら密入国していたわけじゃなく、隊長さんに招待されたうえにドラゴンに依頼されてここにいるわけだけど、やっぱり知らない人たちに囲まれるのは嫌だなぁ。


わざわざ陸路で来るエルフさん達には申し訳ないが、今日中に攻略しようと意気込んでダンジョンに入った。

昨日モンスターを殲滅したおかげか、1度もモンスターと戦闘することなく地下5階へ。

リュックから雨の日に着るコートを取り出し羽織っておく。

ズボンは普通の物なので少し寒さはあるが、とりあえずこれで問題ないだろう。

出来るだけ早く次の階へ行こうと、素早く移動を開始した。


さて、床も壁も天井も全てが氷で出来ていると思われる地下5階。

昔少しだけアルバイトをしていたハンバーガー屋の冷凍庫よりかはマシだがやはり寒い。

寒いので軽くジョギングする感じで移動していたが、あるものを見つけた。


「なんだこれ?頭使わないといけない系のギミックかな?」


通路が不自然に広くなっているところに、氷の像が4つ設置されていた。

明らかに不自然なので何かのギミックだと思うのだが、ヒントがどこにもなかった。

とりあえずどこかにヒントがあるのではないかと思い、何も触らずにもう少し先へ進んでみる。

先へ進むと何もない広間があったが、そこで行き止まりのようだ。

今までの通路にはなかったが、奥の壁には継ぎ目があったので、きっとギミックを解けばそこが開いて先へ進めるのだろう。


とりあえず壁が火魔法で溶けないか検証してみた。

30秒ほど火で炙ってみたが氷の壁は一切溶けなかった。

きっと氷のような何かなのだろう。

とりあえずヤクザキックで攻撃したところ、壊れはしなかったが壁が少し動いた。

何度か蹴ったところ、何かが壊れた音が聞えたが無事に壁が扉のように開いたので、先へと進んだ。


進んだ先にいたのは3分の1スケールの白いドラゴンだった。

一応以前戦った恐竜みたいなドラゴンくらい強そうなのだが、本物のドラゴンの背中に乗った今ではあまり恐怖を感じない。

ドラゴンさんの知り合いかもしれないので、念のため話しかけてみることにした。


「チーッス!言葉は分かりますか~?」


返答はブレスだった。


あっぶねぇ!

咄嗟に動いたら壁に激突するところだったぞ!


昨日(筋力)を100上げてから、初めて素早く移動したので思いがけず事故るところだった。


咄嗟の行動は慣れてないと加減が出来ないから注意しよう。

とりあえずブレスは見てから回避でも問題ないな。

やっぱ筋力が上がった影響で移動速度が半端ないことになってるし。

とりあえず、問答無用でブレス吐いてきたんだから、討伐されても仕方がないよね?


そんなわけで攻撃を開始した。

とりあえずダッシュでドラゴンの横に回り込み、手刀ブレードで足首を切りつけてみる。

ちょっと洒落にならないくらい皮膚が硬く、全然斬れてはいないが、少しはダメージがあるようだ。


斬れなくてちょっとムカついたので、手刀ブレードで横から腹を思い切り突いたが刺さらなかった。


「やっぱドラゴンってヤバいね。前の恐竜ドラゴンは全然ドラゴンじゃないや。あんなのただのトカゲだよ。」


ボヤキながら火魔法の準備。

魔力を杭の形にして射出し、火魔法で炎の槍へと変える。

これも問題なく脇腹に命中したが、全くダメージを受けた様子はなかった。


「これは本当……、困ったな。防御面が強すぎて苦労しそうだわ。」


感覚的に、このドラゴンは依頼してきたドラゴンと比べると格段に下だと思うのだが、それでもここまで攻撃が通らないのだ。

動きもそこまで速くなく、ブレスも普通に躱せるので負けることはないと思うが、正直めんどくさい相手だった。


その後もドラゴンの死角を動き回り、様々な攻撃を繰り返すが、どれも今一つ効果がないまま時間だけが過ぎるのだった。

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