第68話 完全に忘れてたけど、一応ダンジョンなんで……
次の日の朝になった。
エルフさん達は思っていたよりも空の旅で疲弊しきっていたようで、夕食を取った後も、誰もダンジョンへ行こうとはしなかった。
私は特に気にせず1人でダンジョンに行ったが、最初のククルをホームランした際にハンマーの柄が折れたので帰った。
所詮は手作りの消耗品よ。
結構ショックだったけど……。
まぁ、そんなわけでサクッと帰って寝て朝になったのだ。
しっかり休んだことでエルフさん達の体調も良くなったようで、みんなやる気満々だ。
朝から全員でダンジョンへと入る。
ちなみにこの後、エルフさん達とは一緒に行動しない。
最初の方は数が多いだけで、私と隊長さんは1人でも問題なく戦えるからね。
私1人、隊長さん1人、エルフちゃん&パットン君プラス4人の6人組に分かれてダンジョンを探索していく。
1階層が結構広いうえに、昨日の夕飯前にあれだけ倒したのに、まだまだ遠くに沢山確認できる程モンスターの数が多いからね。
「まとまって動いてたら時間が掛かり過ぎる」という、隊長さんの判断だ。
集団行動が苦手なのでむしろ好都合だね。
問題なくダンジョン内に入れたので、エルフさん達とは分かれてレベル上げを始めるのだった。
さて、ククルは鳥のような頭のモンスターだが、嘴ではなく実はちゃんと歯が生えている。
つまり近接戦となると噛みつきに注意しないといけないモンスターなのだ。
一応ハンマーは修理して持ってきたが、一撃で殺せるくらいの力で殴ると数十匹程度で壊れてしまうため、新たな処理の仕方を考えなければいけないが、噛みつきを警戒しなければいけないのでなかなかいいアイデアが浮かんでこない。
「いっそこのハンマーを口に突っ込んでみるか?」
口を開いたタイミングで挑戦したが、顎がなくなっただけだった。
出来れば瞬殺がしたい。
となるとやはり物理魔法か?
斬ろうとすると難しいが、刺すくらいなら問題ない。
動きながらでも正確に首に刺す練習をしようかな?
いいタイミングでククルがこっちに来た。
ハンマーは捨て、少し息を吐いて少しだけいつもより集中する。
殺る気満々のククルが大きく口を開けて襲い掛かって来たタイミングに合わせ、カウンターするように顎と喉の境目を狙って下から貫手を突き刺してみる。
……うん。
骨に当たってるね。
飛び掛かって来たククルちゃんに対して貫手とか選択肢間違えてるよね。
突き指もせずに骨に突き刺さったから良かったけど、やっぱり急所を狙った正確な一撃とか私には難しすぎるわ。
素手だから素振りじゃなくて……型稽古だっけ?
そういうのをやるべきなんだろうね。
格闘技の経験が無いからその辺の知識が全然ないんだよなぁ~。
そんなことを考えながらも襲いかかってくるククルを1匹づつ丁寧に処理していく。
そして単純なことに気づいた。
「あ、そうか。抜き手で刺すより指で刺した方が簡単に突き刺さるね。二本指の方が刺した後捻りやすいし。」
今までは突き指が怖くて手刀だったが、二本指でも突き指にならずに問題なく刺さる。
狙った位置を確実に突ける訳ではないが、倒すペースは格段に上がった。
ただ刺すのではなく、刺してから捻ることで傷口を開き、指先に伝わる感触で確実に血管や神経を切断出来るようになったのだ。
「骨ごと両断できなくても結構何とかなるんだなぁ。これなら新しく武器を買わなくてもいいかな?……いや、外でこんな倒し方してたら血で手が酷く汚れちゃうか。やっぱり切れ味の良い武器は買おう。日本男子だし、日本刀とか憧れるよね~。」
どこに向かっているわけでもなく適当に歩きながら、ククルの処理にも慣れていきサクサク奥へと進んでいると、1時間もかからずに下へ降りる階段を見つけた。
周囲を見渡すがエルフたちの姿は見えない。
「隊長さんは『先に階段を見つけた場合、合流するまで待っていて欲しい』って言ってたし、もう少し周辺を回ろうかな。そういえばレベル上がったかな?」
いつの間にかLv.31まで上がっていた。
とりあえず(知力)を100にする。
これで全部のステータスが100になったね。
SPが81余ってるけど、どうしようかな?
(筋力)でもいいけど、この先武器を使うなら(器用さ)もありかな?
う~ん……。
別に今困ってないし、取っておこうかな。
____________
Lv.31(34%)
・HP(体力):98/100
・MP(魔力):96/100
・STR(筋力):100
・MAG(超感覚):100
・SEN(器用さ):100
・COG(認識力):100
・INT(知力):100
・LUC(運):100
SP.81
スキル
・ステータス割り振り
・破魔魔法(4/100)
・火魔法(16/100)
・物理魔法(40/100)
・錬成魔法(19/100)
____________
しっかし、全ステータスが来た時と比べて10倍だよ。
だいぶ強くなったはずだよね。
まだまだドラゴンさんには勝てる気がしないけど……。
階段からあまり離れることなく30分近く周囲のククルを掃討していると、最初に来たのは隊長さんだった。
6人もいて最後に来るとか遅れてるぅ~。
「早いな。ちゃんと待っていてくれて安心したぞ。……あとの6人は見たか?」
「いえ、30分ほど前からこの辺にいますけど見ていませんね。」
「そうか……、おかしいな。」
隊長さんは何か気になるようだ。
とりあえず隊長さんも来たことだし、階段で少し休憩することにする。
前回の砂漠と比べると格段にマシって感じだけど、やっぱり暑いものは暑いからね。
水を飲んで休んでいると、考え込んでいた隊長さんがこちらに来た。
「休憩し始めたところすまないが、今すぐ2人で次の階に降りてみよう。6人が未だに来ていないのは少し気になる。結構移動しながら戦って来たんだが、1度も6人を見ていないんだ。どこかで下の階に落ちた可能性がある。」
……まぁ、ダンジョンだもんね。
聞いた内容を理解するのに数秒かかったが、確かにダンジョンに落とし穴があってもおかしくはない。
一度に6人全員が引っかかったとしたら非常に間抜けな気もするが、ここは一応砂漠なので砂の下は見えないのだから、あり得ないことではない。
という訳で少し急ぎ気味で下の階へ降りてみる。
下の階は砂漠ではなく、ダンジョンらしい石壁の通路が迷路のように広がっていた。
……うん。
少し遠いけど、天井に穴が開いてるのか光が差し込んでいるところがあるね。
これ完全に落ちてますわ。
結構時間が経っている可能性もあるけど、皆無事かな~?
「急ぐぞ。」
隊長さんも遠くの天井の穴を見て同じことを思ったのか、今にも走り出しそうな感じだ。
だが、急いだとしても普通に進むと少し遠い気がする。
とりあえず焦る隊長さんは一旦無視して、壁を叩いてみる。
今まで行ったダンジョンとは違い、落とし穴で下の階に進めるのだ。
ショートカット出来るか、試す価値はあるだろう。
……普通にこの壁壊せそうなんだよな。
「これ壁を壊して進んだ方が早そうですけど、通路に沿って進みます?」
ダンジョンの壁は、以前穴を開けた城壁と比べると薄いのに硬かったが、問題なく壊すことができた。
観察してみるが数秒で穴が塞がる様子もない。
壁尻は嫌だからね。
隊長さんはこっちを見て完全に固まっている。
急いでるんじゃなかったの?
ほら、こっちに行くよ。
「すまない。壁を壊すのは任せる。……こんな風に進むことも出来たのだな……。」
そうだね~。
『急がば回れ』という結構正しそうなことわざに真っ向から喧嘩売る行為だし、どこかで厄介な敵とか出そうだから注意して進まないといけないけど、やっぱこういう状況だと近道したいよね。
ガンガン壁を壊して進んでいくと、少し開けたところで人型の何かと戦う6人組を、無事に見つけたのだった。
全員怪我はあるみたいだけど、問題なく生きてるね。
なんかすっごく見られたけど。
化け物を見るような目で見られたけど!
というか何と戦ってたの?
パッと見……、背中に羽の生えた人間?
悪魔か何かかな?
そいつにもすっごい化け物を見る目で見られたけど!
いつの間にか、後ろにいたはずの隊長さんは、向こうでエルフの方々と感動の再開を果たしていた。
私と悪魔(仮)は一言も話してないよ。
あっちとこっちで温度差激しいよ。
結構間があったが、悪魔(仮)が口を開く。
「貴様は……、エルフではないな。だが人間にも見えない。」
「……人間ですが?」
半ギレで答えた。
いきなりのライン越えやぞ!
どっからどう見ても人間やろ!
少し離れた位置でエルフ達が互いの生存を喜び合いながら話をしているが、私と悪魔(仮)は非常に張り詰めた重い空気で睨みあうのだった。
……どちらかというと私が一方的に睨んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます