第67話 高脂質高カロリーはやめられないんだわ

ようやく回復したエルフさん達と共に、ダンジョンへ向けて移動を開始した。

結構な回数先ほどの鳥竜種が襲って来たが、さすが隊長が連れてきても問題ないと判断しただけあって、新しく加わった自己紹介すらしていない4人はなかなかの腕前だった。


戦い方としてはセオリー通りって感じで、筋肉ムキムキのマッチョマンのエルフが大盾で敵の注意と攻撃を引き付けて、槍を持った少し小柄な男性エルフが攻撃する感じだ。

あとの2人は弓使いの少し背が高めの女性エルフと、水魔法が使えるっポイ女性エルフだ。

女性エルフ2人は未だに寒さによる影響が抜けていないのか、あまり戦闘には参加していなかった。

まぁ、弓矢とか指先がガチガチだとまともに扱えそうにないもんね。

魔法使いはもっと頑張って!


隊長さんも少し前より動きが悪いみたいだけど、問題なく首を切り落としている。

怖いね。

パットン君は普通だ。

安定して注意を引き付けているし、動きもいつもと変わらない。

ただ攻撃力がないんだよね。

もう少し攻撃面が改善すれば、クルルちゃん(仮名)相手でも単独討伐出来そうな感じだ。


……エルフちゃん?

あまりにも動きが酷すぎて隊長さんに動くなと命令されてたよ。

女性陣全員が寒さの影響を受けてるけど、エルフちゃんは断トツだね。

マジで動きが悪いし攻撃も全くキレがない。

多少怪我することも経験とか言いそうな隊長さんが『休んでおけ』と言うレベルで動けていなかった。

とりあえず温かいものでも飲んだら?

火熾しから頑張らないといけないけどね!


そんな問題だらけの一行で私はどうなのかというと、普通にサボってた。

ちょうどよさげな岩があったからね。

ハンマーにするために加工しちゃうよね。

両手が塞がっているので、仕方なく襲ってくるやつは全力で蹴り上げて対応していた。


あ、エルフちゃんの近くに落ちちゃった。

止めを刺しといて~。




という訳で洞窟前に着いた。

ドラゴンさんは「では、頼んだぞ。」と言ってどっかに行ってしまった。


とりあえずエルフさんたちは焚き火を熾す様なので、周りの整備をすることにする。

適当に木を伐り倒しまくってスペースの確保だ。

伐った木は適当に置いておく。

ハンマーの持ち手に使えるかもしれないからね。


向こうでは無事焚き火が熾せたようだ。

ここで少し休憩をするだろうし、ハンマー作りに戻ろうかな?

ハンマー作りで一番気を使わないといけないのは接合部分だ。

普通の小さなハンマーなら穴に少し太い木を刺せば問題ないのだが、この大きさになると石部分だけが吹っ飛んで行ってしまう可能性もある。

全て鉄製なら楽なのだが、石と木でかなりの重さのハンマーを作るとなるとやはり難しい。

まぁ、錬成魔法があるから出来ないこともないだろうけど。




……完成だ。

暇だったので無駄に凝りまくった結果、怒れるドラゴンの頭がそこにはあった。

柄もしっかりと嵌っているようで、木を叩いても抜けることはなかった。

木は普通に圧し折れた。

これならクルル改め、ククル(ドラゴンによる鑑定済み)ちゃんも問題なくペッタンペッタン出来るだろう。


「出来たみたいだな。武器も作れるみたいだが何のスキルだ?」


完全復活した隊長さんが聞いてくるがノーコメントで。

ほら、ちょうどいいところにククルちゃんが来たからね。


ダッシュでハンマーを振り上げながら近づき、踏み込んで上から全力で振り下ろした。

頭を潰してもなお地面が揺れてひび割れが発生するほどの威力。

やはりハンマーはいいな。

隊長さん以外のエルフの方々が完全にビビってるけど……。

自分でもびっくりの威力だもんね。

まぁ、ハンマーさえ壊れなければどうでもいいか。


「それじゃあ私は夕食の時間くらいまで、少しダンジョンに入ってみますね。」


「そうか、気をつけるんだぞ。」


という訳で洞窟に入った。

中はそこまで広くない。

30メートル程歩いたところで、ダンジョンの入り口らしき大きめの木の洞が見つかった。

さっそく入ってみる。

目の前にあるのは砂漠地帯だった。

前回の砂漠と違うのは、今回は岩山らしきものがたくさん見えている点だろう。

前回は本当に砂しかなかったからね。


「さて、周囲全てにククルがいるんだけど……。これは流石にヤバいかもね。」


そう言った直後に襲い掛かって来た。

飛んできたやつをハンマーで打ち返し、ノコノコと近づいてきたやつは上半身ごと叩き潰して対処する。

もちろん襲って来たタイミングが悪く、ただ吹き飛ばして対処したやつもいるが、順調に数を減らしていった。


30分ほど戦い続け、ようやく近辺にいたククルは全て討伐出来たようだ。


「やっと終わったか。思ったより長引いたな。やっぱり一瞬で即死取りにくいモンスターは効率が悪いな。あんまり自信はないけど、質のいい剣とか買って練習した方がいいかな?」


結構な数のククルに襲われたけど、正直手刀ナイフでスパスパ切れるなら処理に3分もかからなかったと思う。

30分も時間がかかったのはハンマーを振り回して戦ったからだ。

今まで必要としていなかったが、今後のことを考えると武器を新調するのもいいのかもしれない。


そんなことを考えながら帰るとエルフたちは食事の準備を始めたところだったようだ。

私が帰ってきたことに気づいた隊長さんが近寄ってくる。


「ダンジョンの中はどうだった?」


「中は岩の多い砂漠でしたよ。入り口付近にもかかわらずククルが大量にいて先に進めなかったです。」


「……そうか。君が進めないのなら相当厄介そうだな。」


なんで隊長さんって私に対する評価が高いのかな?

何かしたっけ?

私のことだいたい肯定してくれるやん。

美人に肯定的に接せられると困っちゃうわぁ~。

……適当に話題変えよ。


「エルフの方々も問題なさそうですね。ダンジョンには明日から?」


「あぁ、そのつもりだ。空を飛ぶということがあれほど過酷だとは思わなかったな。寒くもないのに君が何でそんなに厚着なのかと思っていたが、君はああなることを知ってたんだな。」


「風に当たると涼しいですけど、ずっと当たり続けると寒くなりますからね。」


夏場でも、早朝に原付で走るだけでも顎がガクガク震えるくらい寒かった経験があるからね。

まぁ、あの時はただのジャージで防寒とか一切なかったけど。

今回はまだ低空飛行だったから風で冷えただけだったけど、標高が上がると気温自体が低いはずだからね。

そんな中風圧をモロに受け続けたら寒いとかいうレベルじゃないよね。


「風か……。」


隊長さんが何か考え込んでしまった。

何か思いついたのかな?

考え事の邪魔するのも悪いし、とりあえず私も晩御飯の用意をするかな。

ちなみに人数が少ないので、自分の分は自分で作る方式だ。

だれもドラゴンさんに大荷物を運ばせる勇気は持ってなかったからね。

大鍋とかあれば、食材を持ち寄って料理の得意な人がまとめて作ったかもしれないが、小さな鍋とフライパンしかないから仕方ないね。


さて、私のリュックから取り出すは大量のベーコンと大きいチーズの塊。

……悪魔の食べ物が作れそうだぜ。

あの美味しくて高カロリーで毎日食べると絶対太る、チーズのベーコン巻き。

明日から大変そうだし、今日くらい豪華でもいいよね?




……その日の夕食はエルフさん達にめちゃくちゃチラ見されながら食べたよ。

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