第65話 でも食べるのやめれないんだけどwww
という訳でエルフの国に到着した。
遠くから見た感じだと城壁のない少し変わった街のように見えるが、明らかに目立つ木が1本生えていた。
『世界樹』ってやつかな?
エルフの国だもんね。
そういう特別な木があってもおかしくないよね。
隊長さんが先導しているので特に何も考えずに街へ近づいたが、街の入り口になるのだろうか?
大きな鳥居があった。
止まることなく鳥居の下を通りエルフの国に入国。
何と言えばいいのか、日本の観光地のような街並みをしていて非常に違和感があった。
大分の温泉街がこんな感じじゃなかったかな?
人間の国と比べると圧倒的に近代的で、最初にここに迷い込んでいたらステータスがあっても異世界だとは思わなかったであろう街並みだった。
だって木造の建物は多いけど、鉄筋コンクリートで出来てそうな建物とかもあるし、窓には透明なガラスが嵌ってるんだよ?
人間の国とは大違いだよね。
エルフの国なのでエルフしかいないのかと思ったが、人間以外の種族が多少いるようだ。
ドワーフっぽい髭のおっさんや、デカくて角がある鬼っぽいやつ。
妖精みたいにうっすらと光りながら飛び回るやつなどが確認できた。
めちゃくちゃ周囲から視線を浴びている気もするが、ガン無視して隊長さんの後ろをついて歩く。
やっぱあれだよね。
隊長さん美人だからみんな振り向いて2度見するんだろうね。
エルフちゃんも可愛い系だし。
パットン君もイケメンだし……。
きっと私は荷物持ちの雑用係りとしか認識されていないだろう。
(おっきい木だなぁ~)と遠くを見ながら歩いていたが、気づくと周りには大きな屋敷しかなかった。
「そういえば、今ってどこに向かってるんですか?5日ほどかけて人間でも泊まれそうな宿を探しに行こうかと思ってるんですけど。」
「もう少しで私の持つ屋敷に着くぞ。あと宿は探しに行かなくていいからな。」
女性の自宅に転がり込むだなんて……、ヒモになっちゃう。
家事でもやればいいのかしら?
という訳で隊長さんの屋敷に到着した。
すごく大きいね。
『屋敷を貰った』と言っていたが、これを維持できるということはきっと高収入なのだろう。
あ、メイド服ではないけど家政婦さんもいるんだ。
「荷物を置いたらすぐ、中央官庁に行くぞ。一応人間である君を連れてきたことを報告しなければいけないし、ドラゴンにダンジョン攻略を頼まれたことも伝えなければならないからな。」
……それって私も行かないと駄目?
トラブルにならない?
だいたいのことは拳で解決しようとする癖があるから、私は留守番してた方がいいと思うんだよね。
「問題ないから来い。」
あかん。
キレてはいないけどピリピリしてる。
ドラゴンに依頼されるってそんなに大変なことなのかな?
黙って素直についていくか。
「台車はここに置いておけばいい」とのことなので任せるとして、何を持って行けばいいのかな?
武器を持っていたら必要以上に警戒されるだろうからフライパンとナイフは置いていくとして、どうせついていくだけで何もすることないだろうし、荷物はジャーキーと水筒だけでいいかな?
お金は……、そういえば貨幣価値が違うんだったっけ?
『エルフの国の硬貨は価値が高い』って昔言ってた気がする。
そんなに昔じゃないけど。
まぁ、少しは持って行くか。
隊長さんについていくこと5分。
中央官庁とやらに到着した。
建物の見た目は完全に市役所だ。
ちなみにエルフちゃんはスタミナ切れでダウンしたので置いてきており、パットン君は実家に帰ったので隊長さんと2人だ。
何も考えずに隊長さんについていくと、3階にある両開きのいかにも『偉い人がいますよ』って感じの扉の部屋に入った。
「戻ったぞ。客人も連れてきて、帰りにドラゴンから依頼を受けた。」
ノックもせずに入った隊長さん。
全然敬語は使わないんだね。
報告と言っていたけど上司ではないのかな?
部屋の中には隊長さんと見た目年齢が変わらない感じのエルフの女性がいた。
「客人?……そちらは人間……。いえそれよりも、ドラゴンからの依頼について詳しく教えてください。」
人間よりドラゴン優先。
素晴らしい判断だね。
そのまま私のことは忘れていいからね?
「どの山かはまだ断定できないが、南にある山のどこかにダンジョンがあり、ダンジョンからモンスターがあふれているらしい。依頼はそのダンジョンの攻略だ。」
「そうですか……、分かりました。ドラゴンの依頼に関しては全てあなたに一任します。」
凄く信頼されてるんだね。
流石隊長さんだぜ!
……めちゃくちゃ苦渋の選択を迫られたかのような顔をしてるけど。
もしかしてドラゴンの依頼って失敗した場合にはペナルティでもあるのかな?
あの質量で知恵のある生物に街を襲われたらただでは済まないだろうし……。
「帰りに依頼を受けたということは、そちらにいる人間の方も……?」
「あぁ、やる気はないみたいだが、手伝わせるから大丈夫だ。」
……納得できるだけのお給料出るなら考えなくもないよ?
お給料が少なくても、美味しい食事が出るなら考えないこともないし……。
「あまりあなたにこういうことを任せたくないのですが……、本当に大丈夫ですか?いえ、信頼はしているんですよ?ただなんというか……。」
「問題ない。うちの隊の者を全員連れて行くから、物資の方は任せる。」
「分かりました、手配しておきます。何か特別必要になりそうなものはありますか?」
「今のところはないが、新たに必要なものが出てきたら連絡を送る。それとこの人間が自由に動き回れるように手配を頼む。喧嘩を売る馬鹿がいないとも限らないしな。」
「……ちなみにそこの人間はどれほどの実力なのですか?」
「さぁ?私と然程変わらないと思うぞ。」
「……分かりました。手配と通達はこちらで行っておきます。」
「頼んだ。では準備があるので失礼する。」
「えぇ、気を付けて。」
隊長さんが部屋を出るので後ろについていく。
隊長さんは隊長だし、もう一人も偉そうな立場っぽかったからね。
あまり話している内容は聞かない方がいいと思ったから、のんびりとジャーキーをムシャムシャしてたよ。
次はどこに行くのかな?
隊長さんに続いて建物から出ると、周囲にはたくさんのエルフが集まって、武器をこちらに向けて構えていたのだった。
完全に周囲を囲まれていて一触即発な雰囲気の中、(お?やんのかこら?戦争だ戦争!)と思っていたのだが、そこに新たな影……。
また上からドラゴンが登場だ。
今回はエルフたちを踏みつぶさないように配慮しているのか、地面には下りなかったが、それでも結構な風圧が来たんだよね。
周囲の窓ガラスとか全滅したんじゃない?
「おぉ!おったおった。先ほど同族に『見込みのありそうな者達にダンジョンの攻略を頼んだ』と話したら、『それなら早くダンジョンまで連れてきなさい』と怒られてしまってな。そんな訳で迎えに来たぞ。」
周囲はドラゴンの登場に戦々恐々だ。
隊長さん!出番ですよ~!
私はジャーキーをムシャる手が止まらないので丸投げする気満々だ。
このジャーキー塩加減が最高なんだぁ。
誰も名乗り出ないので隊長さんが仕方なく声をかけるようだ。
「すぐに出発の準備を終わらせますので、あちらの方にある泉の傍でお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「そうか分かった。ではそちらで待つとしよう。」
ドラゴンさんは迎えに来たって言ってたけど、背中にでも乗せてもらえるのかな?
オラわくわくすっぞ!
軽い高所恐怖症だけど……。
パラシュートとか、どっかに売ってないかな?
命綱とか当然ないだろうし……。
そもそも背中に乗って振り落とされたりしないかな?
……う~ん、行きたくねぇ!
なんで隊長さんは裾を掴んで離さないのかな?
逃げられないじゃないか。
こうして一触即発の雰囲気など跡形もなく消え去り、大混乱のエルフの国では、エルフ達と敵対せずに済んだのだった。
ついでに、買って来たジャーキーは全て食べ尽くしてしまった。
エルフの国にも美味しいジャーキーとかあればいいな。
のんびりと観光できそうにないけど……。
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