第62話 隊長に騙された気がするよ。

王都を出てから4日が経過した。


ギルドに『私に関する情報』の取扱いに対して警告をした翌朝、普通に美味しい宿の食事を食べて、王都を後にした。

あまり王都を見て回る気分になれなかったからね。

また指名手配されると面倒だし……。

ぶっちゃけ寝て起きたらどうでもよくなってたし……。


という訳でダンジョン巡りが始まった。

初日から1日に1つのペースでダンジョンに入り、レベルは1つだけ上がってLv.28になっていた。

どのダンジョンも過去に行ったものと大差がなく、むしろ敵が弱いことの方が多かったのだ。


サクサクと回っていき、今日で5つ目のダンジョンとなる。

このダンジョンには先客がいるようで、入り口にまだ完全に燃え尽きていない焚き火の跡があった。


洞窟型のダンジョンに入る。

中はべーシックな通路型のダンジョンみたいだ。

モンスターもいないようなのでサクサクと階段を探して進む。


ダンジョン地下4階。


ここまで一度も戦闘がなかったが、先に入った人たちはこの階にいるようで、いくつかの足音が聞える。

どんなモンスターが出るのかだけ確認したいので、チラッと見てみると、グレートウルフとエルフズが戦っていた。

エルフちゃんに隊長さんに盾持ち君だ。

うん……、隊長さんと目が合ってしまった。

ここは一本道で逃げ場もないので、戦いが終わるまでのんびり待っておこう。


リュックからジャーキーを取り出してムシャムシャしながら、エルフちゃんの奮闘を観戦する。

盾持ち君は盾を新調したようで、全体が鉄製のしっかりとした盾を持っており、以前と変わらず安定したタンクをしていた。

エルフちゃんは少し動きが鈍い。

攻撃は全く急所を捉えていないし、捉えたとしても剣が刺さっていないのだ。

この調子だと時間がかかりそうだが、隊長さんは手伝う気がないようだ。

だってこっちに来たし……。


「こんなところで会うとは奇遇だな。」


「そうですね。あれは手伝ってあげなくてもいいんですか?」


「攻撃を受けるわけではないから問題ない。疲労で動きも剣筋も鈍くなっているが、そんな状態でもこのくらいは問題なく倒せるようになってもらわないとこの先困るからな。」


スパルタだね~。

あ、エルフちゃんもこっちに気づいた。

……完全に固まったけど大丈夫?

隊長さんは動く気は無いようだ。

お?

エルフちゃんの動きが変わった。

さっきまでの『安全に立ち回ろう』って感じの動きから『全身全霊をかけて敵を殺す』って感じの動きになった。

おぉ~!

結構スパッと斬れるじゃん。

やればできるじゃない。

グレートな毛並みのウルフもこれにはびっくり。

致命傷ではないようだけど、この調子ならすぐに倒せるだろう。


ムシャムシャしたら喉が渇いたので水を飲みながら待っていると、問題なく倒せたようだ。


「無事に倒せたようだな。少々危ない戦い方だが、まぁ良しとしよう。」


隊長さんは厳しいね。

向こうからエルフちゃんが近づいてきた。


「お、お待たせしてしまい申し訳ありません。」


……凄く怖がってるね。

大丈夫、待たされたからって怒ってないよ。


「先に進むのか?」


隊長さんが聞いてきた。


「そうですね。進もうと思います。」


「そうか、では付いていこう。」


……なんで?




エルフを後ろに引き連れてダンジョン内を進む。

既に地下5階。

襲って来たのは進化した熊だった。

まぁ、このくらいなら問題ない。

あまり数もいないようだし、ガンガン進む。


地下6階。

地下5階で終わりのようだ。

いつもの広間だった。


「終わりみたいですね。」


「……ここに来るまでにいくつかのダンジョンで、モンスターのほとんどが討伐されていたのに魔石が壊されていなかったのだが、モンスターを討伐したのは君の仕業だろう?あの魔石は壊さないのか?」


「あれって壊した方がいいんですか?」


「そうだな。あれを壊すことでダンジョンが活動を停止するんだ。ダンジョンは放置すると大襲撃の可能性も出てくるし、生活域を脅かすこともある。エルフの国では絶対に壊すものだな。」


……モンスターいっぱい湧かせてレベルアップ計画はやめた方がいいみたいだ。


「それじゃあ壊してきますね。」


サクッと壊した。

レベルが上がった。

これでLv29だ。

(知力)以外を全て100に出来たぞ。


____________


Lv.29(0%)

・HP(体力):98/100

・MP(魔力):98/100

・STR(筋力):100

・MAG(超感覚):100

・SEN(器用さ):100

・COG(認識力):100

・INT(知力):50

・LUC(運):100

SP.9


スキル

・ステータス割り振り

・破魔魔法(3/100)

・火魔法(14/100)

・物理魔法(35/100)

____________


「壊してきました。」


「あぁ、お疲れ様。今後はちゃんと潰した方がいいぞ。」


「……善処します。」


ダンジョンって結構生まれるものなのかな?

正直、今のところダンジョンのコアみたいなやつを壊したら確実にレベルアップしてるし、普通のモンスターからでた魔石じゃレベルアップしなくなってきたから潰すのも全然ありな気がするけど……。


まぁ、次からはちゃんと潰すか。

ダンジョンも一通り回ったし、そろそろ街に帰ろうかな?


「それじゃあ私は先に街へ戻りますね。」


「いや、少し待ってくれ。」


行こうと思ったが隊長さんに呼び止められた。

いったいなんだろう?


「もう少ししたら私達はエルフの国に帰るのだが、一緒に来ないか?見せたいものがある。」「遠慮しときます。」


即答だよ。

食い気味に答えたよ。

……見せたいものって何かな?

隊長さんがわざわざ言うって想像がつかないんだよね。


「間違っていたら別にいいのだが、君はおそらく転移者だろう?」


……転移者の存在って一般的なのかな?


「まぁ、別に答えたくないならいいのだが……。昔エルフと共に戦ってくれた人間が転移者だったらしくてな。今のエルフの国があるのも、その人間の協力があったからこそなんだ。」


へ~。


「何百年も前にその人は死んでしまったが、残したものが数多くあるのだが、私達には理解できない物などもたくさんあるから、一度見てもらいたいと思ってな。」


転移者と言っても違う世界線かもしれないですし……。

正直行きたくないような……。

少し興味があるような……。

行ってみるか。


「……分かりました。付いていきますので、出発する数日前に声をかけて下さい。……ところで、転移者の存在って結構一般的なものだったりします?」


「分かった。転移者は……滅多にいないのではないか?エルフでは聞いたことが無いし、私が知っているのは『過去に転移者がエルフと共に戦った』ということだけだぞ。」


じゃあなんで私が転移者だと思われたのかな?

言動か?

『ニート』だからか?


「君を転移者だと思ったのは、強くなるペースが異常だからだよ。」


……隊長さん、心でも読めるのかな?


「普通はレベルアップしてもステータスは変わらないらしいんだ。レベルアップによって上がるのはステータスの上限値らしくてな。まぁ、これをエルフたちに教え広めた人こそ、その転移者なのだが……。普通はレベルアップで上限が上がったステータスを、実際に体を鍛えることで伸ばさないといけないのだが、君はレベルアップがそのままステータスの上昇につながっているようだからな。転移者は皆、珍しいスキルを持っているのではないかと考えたんだよ。」


昔の人は鑑定のスキルでもあったのだろうか?

鑑定とか、あったら便利な能力ナンバー2だよね。

1位はやっぱり無制限にアイテムを収納できるスキル。


……ん?


「自分のステータスって確認出来ないんですか?」


「出来ないぞ。君は自分のステータスが分かるのだな。」


隊長さんの話し方が全体的に又聞きみたいなので聞いてみたら、意外な真実を知ることができた。

そうか……。

普通自分のステータスって見れないのか……。


そういえば隊長さんが昔言っていた『レベルを上げるより体を鍛えた方が強くなれる』とはなんだったのだろう?

レベルアップで上限が上がるなら、レベルも上げて体も鍛えないと駄目じゃん。

……まぁ、私には関係ないからいいか。


こうして色々なことを知り、エルフの国に行くことが決定したのだった。

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