第51話 とんかつって肉の厚さが重要だとは思わない?
強くなった自信はある。
強くなった自信はあるんだが、やはり今まで頭のどこかでストッパーがかかっていたのだろう。
本気の全力ダッシュで帰った結果、15分で街まで帰り着いた。
「まさかエルフ隊長さんと会うとはなぁ……。二度と会うことはないと思ってたんだけど。来たのは隊長さんだけかな?」
まだお昼の時間だ。
観戦が想像以上に早く終わってしまったし、帰り道が速かったので時間が余ってしまったのだ。
「あ、昨日のお肉と油受け取りに行くか。」
昨日解体に出したイノシシの肉と油は、今日受け取ると言っていた。
(今夜はとんかつかな?)と思いながら、ギルドへと行き、中に入ると可愛い子がいた。
……うん、エルフちゃんだろうね。
特徴的なエルフのお耳が普通の人間っぽくなってるけど、たぶんエルフちゃんだ。
こっちに来るには早いんじゃなかったの?
それともただ、サバイバルキャンプするには早かったって言うだけ?
とりあえず無視して受付に行き、肉と油を受け取りに来たことを伝える。
ほら、こんなところに可愛い子がいたら絡まれるじゃん?
そしたらエルフちゃんvsチンピラ(仮)のバトルが始まるじゃん?
ピンク枝豆と落花生(柿の種)を食べながらヤジを飛ばして観戦したいじゃない?
つまり関わらない方が吉。
……誰も絡みに行かないな。
なんでだ?
私が来る前に終わっちゃってた?
適当に近くにいた冒険者っぽいやつに聞いてみる。
「ねぇねぇ、あそこに可愛い子がいるけど、誰も絡みに行かないのはなんで?」
「あ?……あぁ、少し前にギルドを壊滅まで追い込んだやつがいるらしくてな。今この街はそういう冒険者はほとんどいないと思うぞ。外から来る冒険者もギルドの信頼があるやつじゃないと受け入れてないしな。」
……へ~。
ギルドを壊滅まで追い込むって怖いですね。
そんな奴のせいで観戦できないなんて……許せねぇよ!
反省してまーす。
……帰るか。
とんかつの準備したいし。
「お、お久しぶりです。」
誰かに話しかけられたが無視して宿へ戻った。
さて、鍛冶屋に行って鍋とフライパンも受け取ったし、『あれ』もちゃんと考えていた通りの物を受け取った。
『バット』というらしい。
初めて知った。
とりあえず必要と思われるものは全て揃った。
長いお箸をギリギリで思い出せてよかった。
これがないと、いざ揚げ始めるときに困っちゃうからね。
聞くところによると、野菜などを揚げる文化はあるそうだが、肉に衣をまいたりはしないらしい。
パン粉はなかった。
せっかくなので落花生の柿の種を取り出して、細かく砕いて代用した。
以前なんかのアニメで見た影響だ。
内容は全く覚えていないが、お菓子を衣にしてあげていたことだけは覚えている。
小麦粉・卵・砕いた柿の種を付けて、いつでも揚げられる状態にしておく。
問題は油の温度だ。
いつも温度計を使っていたので油の温度が分からない。
油の温度管理は揚げ物で一番難しいところなのに……。
パン粉を落としたときの反応で温度を測ると言うが、いい音が鳴るだけでよくわからなかった。
たぶん大丈夫だと思うんだよね。
深呼吸した後、とんかつモドキを油の中に慎重に投入した。
……揚げ始めて少しした後ひっくり返し、しっかりととんかつモドキの様子を観察する。
3分くらい経っただろうか?
泡が小さくなった気がしたので素早く油から取り上げた。
そういえばこの油ってどう捨てればいいのかな?
固めるやつとかないだろうし……。
今度考えればいいか。
今はとんかつに集中だ!
切ってみるといい音がする。
断面を見たところ火の通りも問題なさそうだ。
興味があったのかずっと見ていた料理人っぽいおっさんにも一切れあげて、食べてみる。
……うん。
肉だけ異常に旨いとんかつだわ。
肉の自己主張が強すぎて『とんかつ』って感じじゃないね。
もっと薄っぺらに切るべきだったか。
衣はサクサクで美味しいけど、完璧とは言えない出来だった。
普通に美味しかったけどね。
おっさんも感心している。
「やってみてもいいか?」と聞かれたので問題ないと伝える。
おっさんが油に少しビビりながら揚げ物に挑戦し始めたのを横目に、出来るだけ使った道具の片付けを始めるのだった。
あ、油は使ったら冷めるまで放置しないと危ないから気を付けてね?
(少し遅めの昼食も食べたし、早めに銭湯にでも行くかな?)
そう思い、のんびりと街の中を歩いていた。
ふと、また尾行されていることに気づく。
「またつけられてるなぁ……。最近多いのかな?この前は3人だったけど、今回は明らかに多いし。身に覚えがあり過ぎて困っちゃうな~。」
今回、人数は多いが完全に素人ばかりである。
この前の3人の報復だろうか?
やはり兵士に止められようと、確実に始末しておくべきだったか。
逆恨みって怖いからね。
殺すのが一番確実なんだよ。
そんなことを思いながら、今日も人気の少ない方へと足を進めるのだった。
さて、完全に囲まれた。
人数は……30人くらいだろうか?
全員薬中みたいだ。
お金が欲しいのかな?
それとも売人の一本釣りをしたから?
とりあえず警告する前に一蹴り。
6人ほどまとめて壁に激突した。
「逃げようとしたやつは潰す。」
警告はしたので1人づつ丁寧に殴っていこう。
警告通りに逃げようとしたやつを最優先でグチャ!っと潰して、それ以外はボディーブローで殴って無力化させた。
残り6人になった時に魔法の気配を感じた。
薬中っぽい顔のサンドバックに混じって、1人普通っぽい人が混ざっていたようだ。
魔力が徐々に氷の槍へと変化しながらこちらに飛んで来た。
……普通に掴んだけど。
火とか水なら物理魔法で壁作って防ぐかもしれないけど、土とか氷みたいな物は普通に掴めるんだね。
とりあえず投げ返す。
チッ!外した。
「お前は動いたら手足を折るね。殺す前に聞きたいことができたから。」
そう言いながら1人の胸に腕を刺し、心臓を見せつける様に引っ張り出した。
ちゃんと脅しは通じたようで、漏らしながら座り込んでしまった。
ついでにもう一人、頭を360度回転させて見せる。
……うん、いい反応だ。
やっぱり見せつけるような行動はギャラリーがいないと盛り上がらないね。
自己満足も悪くはないけど、マルチプレイのゲームが人気だったのはこの辺が関係しているんだろうなぁ。
その後は見せることを意識して腕を引き千切り、腸を引っ張り出しの大暴れだ。
最後の一人は両足を折った後に、あえてゆっくりと頭を踏みつぶした。
「さて、君が最後だね。大丈夫。質問に正直に答えてくれたら苦しまずに逝けるよ。」
そういえばこの死体たちどうしようかな?
お片付けが面倒だけど……。
まぁ、ゴミとしてまとめてればいいか。
「とりあえず何で俺を狙ったのかな?理由からまずは説明してもらおうか。答えない場合は指を千切るからね。」
……答えない。
手首をつかむ。
「ま、待ってください!私はあなたを殺すように上司に指示されただけです!上司の命令だから来たのであって目的は……」
とりあえず人差し指を思い切り引っ張った結果付け根から千切れた。
上司に言われたならしょうがないね。
運が悪かったと後悔しながら、来世で頑張って欲しい。
叫び声がひと段落した後、次の質問をする。
「素早く質問に答えないと、指って結構簡単に千切れるんだよ?それで、その上司は誰?」
「ギャップです!魚を販売しながら裏で少量のアヘンとドリームフィッシュをこの街に流し始めたところで、あなたが店を怪しんだため殺害するように指示を出しました!」
「素直でよろしい。」
ちゃんと答えたので中指は千切らずに折った。
手の甲につくなんてやわらかいね。
ところで、話的にこの前の魚屋が裏で麻薬を流しているってことでいいんだよな?
やっぱり裏で悪いことしてたんだね!
正直怪しんでなかったけど、当たっちゃったから自信満々に預言者って名乗ろうかな?
「さて、最後の質問だ。氷の魔法はどこで手に入れた?」
これが最も重要な質問である。
「生まれつき使えました」とか言ったらぶっ殺そう。
「え……?わ、私の父が貴族だったらしく生まれつ……」
喉に手を刺して黙らせた。
使えねぇなこいつ。
とりあえず聞きたいことは聞けたしいっか。
それで……、魚屋を壊せばいいのかな?
死体をゴミが溜まっている所へと集めながら、どうするか考えていると兵士がやって来た。
「動くっ……な……。なんだこれは……。」
2人の兵士が来たが1人は地面に座り込んで吐いてるし、1人は一瞬で戦意喪失した。
……兵士の質が悪いんじゃない?
「私を襲ってきた薬物中毒者達と、私を殺しに来た麻薬の売人の手下ですよ。あ、魚屋の『ギャップ』って人がこの街にアヘンと『ドリームフィッシュ』とか言うモノを流していたらしいですよ。」
兵士は何も言わない。
なんでだろうと思って近づくと、気絶してしまった……。
気絶していたのではなく、近づくと気絶したのだ。
少しだけ凹んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます