第49話 全然関係ないけど錬金術があるらしいよ
本日も晴天なり。
今日はイノシシを探して朝から少し遠出しております。
明日が『揚げ物用の鍋』と『人を殴れるくらい丈夫なフライパン』と『例のアレ』が完成予定の日だからね。
揚げ物用に油を集めたくてイノシシ狙いなのだ。
植物性油?
そりゃそっちの方が使い慣れてるしいいけど……、ないよ?
自分で作るのは流石に面倒だからね。
ただ油分を多く含む植物の種を絞ればいいってモノでもないだろうし……。
そんなことを考えながらも問題なく歩き続け、たぶんこの辺だろう。
小さな川から水が流れ込んでいる小さな湖。
そして木々の中少し開けた空間。
若干残る焚き火をしたような跡。
ビッグボア狙いの冒険者のほとんどがここを拠点にすると、事前に聞いていたのだ。
まぁ、結構遠いが日帰りできない程じゃない。
サクッと探して倒せば夕方には余裕をもって戻れるだろう。
という訳で台車は置いて、探索に出る。
もちろん魔力を時々放出しながらだ。
持っている武器は以前ダンジョンで宝箱(仮)から出たナイフのみ。
棒は全然使わなくなった。
たぶん今のステータスで本気出すと曲がるだろうし……。
そもそも物理魔法が武器として優秀過ぎるんだよね。
魔法を使う時の魔力消費量ってたぶん使っている魔力を体積で見たときの量と比例しているから、剣にしたときだと壁にしたときの5分の1くらいしか使ってないんじゃないかな?
ナイフだと消費量はもっと少ないよね。
他の魔法だと消費魔力はどのくらいなんだろ?
そろそろ新しい魔法が欲しいなぁ。
ダンジョンはこの近くにあるらしいけど、時間があったら中を見て行こうかな?
しばらく歩き回ったところでやっと目的のイノシシが襲ってきたので、心臓の辺りにナイフを刺してサクッと倒した。
吊るすのは無理だがロープで後ろ脚を持ち上げて血抜きをしておく。
イノシシの油も解体の時に言えばちゃんと受け取れるので、自分では解体しない。
やっぱりプロに任せるのが一番だよね。
1人だし、台車を借りていたとしても儲けが大きいからこそ解体とか全部お任せできるが、普通のパーティーだとどうなんだろうね?
血抜きが終わるまで待っている間、ナイフの手入れをしながらそんなことを考えていた。
血抜きも終わりデカいイノシシを台車に乗せたところで人が複数来たようだ。
「あ、あの時のっ!」
……向こうはこちらを知っているようだ。
どこかで見たことはあるのだが、正直顔を覚えるのは苦手なんだよね。
見たところ若い子が5人。
男3人女2人だ。
……あぁ、あの時の5人か。
ウサギ相手に苦戦してたけど、ここってイノシシ狙いの人が来る場所だよ?
大丈夫?
心配になるなぁ。
だってほら、台車に乗ったイノシシを見てビビっちゃってるし。
「ここはこのビッグボア狙いの人が来るところらしいけど、まだここに来るには早くない?少し前までラビット相手に苦戦してたような記憶があるんだけど……。」
非常に優しい私は遠回しに帰るように言ってあげる。
うん、私って優し~い。
……余計なお世話だろうけど。
「あの時苦戦してたのはビッグラビットだ!今じゃ簡単に倒せるようになった!それにウルフも倒せた!だからビッグボアに挑戦するんだ!」
元剣持ちだったか元槍持ちだったか忘れたが、男の子の1人が勇ましく宣言する。
正直興味はないが、観戦したら今度こそ楽しめるだろうか?
そういえばトウモロコシっぽいものは見かけたけど、ポップコーンに出来る品種か聞いてない。
観戦にはポップコーンだと思うけど、個人的には枝豆派なのだ。
枝豆は美味しい。
個人的には茶豆の方が圧倒的に好きなのだが、『茶豆も枝豆も同じ』と馬鹿なことを言うやつが知り合いにいるので、枝豆が好きと言っている。
そういえば何の話だったかな?
あぁ、観戦するかどうか考えてたんだった。
聞くだけ聞いてみるか。
「ビッグボアはすぐに狩りに行くの?」
「え?……いえ、今日は森の中を下見しておいて、明日から探しますけど……。」
……そんなおかしなこと聞いたかな?
(何言ってんのこの人)って目で見られたよ。
悲しいわぁ~。
でも明日か、明日なら問題なく何か摘まみながら観戦できそうだな。
他人の生き死にを娯楽にしているようで不謹慎だけど、人間ってそんなもんだよね。
「そっか、気をつけて頑張ってね。気を抜いたら簡単に死ぬと思うし。」
適当に警告だけして帰ることにする。
今から急ぎ気味で戻れば夕食の時間までに買い物に行ける程度の時間は出来るはずだ。
あ、鍛冶屋にも行って「明日遅くなるかもしれない」って言っとかないとな。
でもいつ揚げ物しようかな~?
明日の夜食べる予定だったけど、時間あるかな?
あ、長いお箸も用意しないと……。
食べ物のことで頭をいっぱいにしながら街へ戻って来た。
ギルドに行って少しの肉と脂肪を貰えるように注文してから、買い物だ。
以前トウモロコシが売られていた所へ行き、トウモロコシを買う。
種類を聞いてもポップコーンになるのかならないのか分からないからだ。
そして隣の店も見に行く。
落花生が売られていた。
たぶん落花生、見た目は普通の落花生。
中はどうなのだろうか?
店員さんに聞いてみたところ1つ食べさせて貰えることになった。
殻を割って中を見ると、2つの豆があった。
口に入れ噛んでみると、少しのピリッとした辛さが口の中に広がる……。
なんで落花生に柿の種入っとんねん!
勿論柿の中に入ってる種ではないし、食感も違うよ?。
食感は少し違うんだけど味はお菓子の柿の種そのままなんだよ!
買ったけど!
結構大量に買ったけど!
ついでなので枝豆を探す。
大豆があるので枝豆が売っていてもおかしくない。
たぶんあった。
莢の色がピンクだけど、気にしない。
一応店員さんに食べ方を聞く。
わざわざ剥いて豆だけスープに入れるの?
塩ゆでしても大丈夫?
大丈夫みたいだ。
次は果物屋だ。
勿論明日観戦しながら飲むためのジュースを作るためだ。
これは店員さんに普通に聞いた。
「これがおすすめですよ!」と言って指さしたのは輝く葡萄。
『シャインマスカット』というらしい。
昔錬金術師が品種改良してできた力作なのだとか。
誰だそんな下らねぇ駄洒落果物作ったやつは!?
まぁ、買ったけど。
一粒食べてみたら普通に美味しくて甘い葡萄だった。
お値段は高め。
その後は鍛冶屋に行き「明日遅くなるかもしれない」と一応伝えてから宿に戻った。
夕食を食べた後に「この後厨房を貸して欲しい」と言い、問題なく貸してもらえることとなった。
だが先に銭湯に行く。
(鍛冶屋に行くついでに行けばよかった)と思ったが、大量に買い物してたし仕方がないと思い直しのんびりと体を清めた。
という訳で厨房を借りて、下ごしらえをしてから落花生(柿の種)を炒め、ピンクの枝豆を塩ゆで塩もみし、葡萄を鍋にドバーっとしてざるにドッバーとして葡萄汁も出来た。
葡萄汁は氷で冷やしたいところだが、仕方ないので諦める。
明日には冷えてるといいなぁ。
観戦の準備は整った。
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