第48話 魔道具を知る
さて、宿へと戻ったがまだお昼の時間だ。
今日は何をしようかな?
そういえば昨日獲ったお肉とかお肉の代金を受け取ってないな。
飯食ったあとでギルドに行くか。
……ラーメンが食べたいな~。
スープがドロドロの超コッテリ豚骨ラーメン……。
アッサリ系のラーメンも勿論好きだ。
しかし、数か月に1回は濃厚なスープのラーメンが食べたい。
よし、パスタ食べに行こう。
ラーメンは無理でもパスタなら食べられるやろ。
タラコが好きだけど、そんなものある気がしないからカルボナーラ?
いや、それもあるか分からない。
ペペロンチーノならいけるか?
……最悪素パスタだな。
意外とおいしいし。
そんなことを考えながら歩いていると、フラフラと裏路地に歩いていく男を見かけた。
普段ならば(やばそうなやつがいるな~)程度だが、最近街中で薬がで回っていると聞いていたので跡をつけてみることにした。
今日は仕事をする気がなかったので暇だったのだ。
裏路地に入るととにかく汚かった。
流石に汚い道を歩きたくないので、ジャンプして屋根の上を歩いて尾行する。
うん、体重とか体型は感覚的に全然変わってないのにステータスだけ上がってるからね。
今なら垂直飛びで3メートルは余裕だと思う。
数分ほど尾行した結果、男は若い男に話しかけた。
「いつもの。」
「金は?」
「これ……。」
「……足りねぇな。」
「最初はその値段だったじゃないか。」
「最初はサービスだ。金がないならさっさといけ。」
「そんな……、あれがないと生きていけないんだ!売ってくれ!金はこれで全財産なんだ!」
「そうか。少し仕事を頼まれてくれるなら、考えてやらないこともないぞ?」
……普通の取引みたいだね。
とりあえずロープでも用意するか。
首に引っ掛けて持ち上げればいいかな?
持ち上げている最中に死ぬかもだけど、それは仕方ないよね。
薬の売人だし、いつ殺されてもおかしくないだろ。
偶然暇つぶしで殺されても文句は言わないはず。
罠みたいな結び方を覚えてたらよかったけど、普通に結べばいいか。
強めに引っ張れば締まるでしょ。
輪投げの感じでほいっ!
一発で成功!
フィーッシュ!
売人の一本釣りだぜ!
生きてるかな?
まぁ、死んでても気にしないけど。
死んでたら警邏している兵士に突き出せばいいか。
薬を売ってたならポケットでも探れば問題ないやろ。
ほら、紙を折って作った袋の中に粉が入ってる。
もう一人の薬中は放置でいいか。
どうせ売人の一本釣りなんて幻覚だと思うでしょ。
帰りも売人を引きずったまま屋根の上を移動して表の広い通りまで戻って来た。
降りようと思ったらちょうど2人組の兵士がいたので声をかけて降りる。
「……なぜ屋根の上に載っていたんだ?」
「これ、お土産。いかにも薬物中毒っぽいやつに『薬を売ってくれ』って言われてた。たぶん売人。」
言っていないが。
「な!?本当か?おい!ポケットの中を調べろ!」
あ、この人昨日と同じ人だ。
なんで素直にこっちの言うこと信じてくれるのかな?
たぶん面識なかったと思うんだけど……。
とりあえずポケットに入っていた『紙の袋に入った薬物の様ななにか』は見つかり、兵士さんにお礼を言われた後売人は連れていかれた。
……死んだと思ったけど生きていたからね。
やっぱ私の様な素人が確実に始末するなら首を落とさないと駄目だね。
あ、あれにも挑戦してみようかな?
手をグサッ!って刺して心臓を抜き取るやつ。
……手が汚れるから別にいいか。
そんなことを考えながらパスタを食べに行き、カルボナーラっぽいパスタを食べた。
チーズも牛乳も生クリームも流通してるっぽいぞ!
卵も普通に流通してるし、この街は結構いい街だな。
盛大に暴れた私が言うのもなんだけど……。
まぁ、街中を荒らしまわったわけじゃないからね。
ギルドと貴族の屋敷と城壁を壊しただけだからね。
被害は少なかった、いいね?
それじゃあ昼飯も済んだし、何しようかな?
当たり前だけど娯楽が少ないんだよね。
なにか趣味を見つけるべきかな?
前はパソコンでゲームするしかやることなかったからなぁ。
パソコンもゲームもない以上、何か趣味を見つけるしかない。
ちなみにボードゲームはある。
友達いないからやらないだけで……。
まぁ、元々友達とかいなかったし?
全然気にしてないよ?
ホントダヨ?
……さて、街の中を適当に歩いていたらある店を見つけた。
魔道具と書いてある。
ちゃんと文字は覚えたのだ。
当然魔道具が気になったので入ってみることにした。
入り口がいかにも『高級ですよ』って感じで入りづらかったけど……。
中はなんというか……、品揃えが悪かった。
結構棚がスカスカである。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「いえ、『魔道具』と書いてあったので少し見に来ただけです。……そもそも魔道具って何ですか?」
せっかくなので魔道具について説明してもらった。
なんでも、モンスターによっては属性を持った素材が獲れることがあり、それをうまく加工し組み込むことで狙った効果を引き出す物を『魔道具』というらしい。
例えばこの……ジョッキ?
見た目はビールとか入れて飲んでそうなデカいコップなのだが、魔力を取っ手に流すと中にいれた水がお湯になるそうだ。
……冷たくなる方が需要あるんじゃないのかな?
あ、冷たくする方は素材が獲れる魔物があまりにも遠すぎて流通してないのね。
それなら仕方ないか。
これは外でも手軽にお湯が沸かせるから冒険者に意外と売れてるんだ。
それならもう少し形を変えていろんなサイズを用意した方がよくない?
これって1人か2人分のスープが作れる程度の量じゃない?
少ないよね?
あ、素材の関係で大きくしたり形を変えたりすると全体が温まらないのね。
そっかぁ。
私は要らないかな?
他にはないの?
火起こしが手軽に出来るやつとか。
ある!
……うん、これ火炎放射器じゃない?
ちょっと欲しくなっちゃったけど、要らないかな。
携帯性が壊滅的だし。
もっと小さな火でいいんだよ。
火熾し用の物もあるんかい!
「ツッコミがうまいですね」じゃないんだよ。
店員さんの説明に振り回されながらも店の商品の説明を受けるが、正直欲しいものはない。
一応店の中を見て回ると角の方に本が置いてあった。
『魔道具の作り方:基礎』と書いてある。
値段は金貨30枚だった。
火炎放射器の6倍……。
勿論買った。
火炎放射器は買わないが本は買った。
一応確認を取って適当に開いたページを読んだが中身も問題なかったからね。
ライターがおまけでついてきた。
店を出て、宿に戻り本を読んで過ごした。
非常に分かりやすく面白い内容だった。
素材さえ揃えば今すぐにでも簡単な魔道具なら作れそうな程、本は詳しく丁寧に書かれていた。
……著者に『フランケンシュタイン』と書かれていたことだけが気になった。
「なんというか……物づくりの本なのに縁起が悪くない?」
『フランケンシュタイン』は怪物として有名だが、意味は『自分の作ったものに滅ぼされる人』とかそんな感じだったはずだ。
「まぁ、名前は気にしなくてもいいか。自分で名付けたわけじゃないだろうし……、自分で『ニート』って名乗ったやつがいたなそういや……。」
深く考えないことにした。
本を読み終わったので内容を思い出しながら何を作ってみようか考えてみる。
「とりあえず実用性あって、素材が簡単に手に入って、作りも複雑じゃないもの。……何かあったかな?」
魔道具は『魔力を流している間だけ効果を発揮する』ようで、一度多く流せばしばらく効果が持続するみたいなことはないそうだ。
ついでに言うと『モノを生み出す』より、『モノに影響を与える』方が簡単らしい。
本のおまけで貰ったライターは『生み出す』魔道具の中でもっとも優しい初心者用の物らしい。
火とは何なのかをある程度理解している身としては、火は『影響を与える』だと思うのだがどうなのだろう?
確か酸素と可燃物と熱があればいいだけだよね?
火ってモノじゃなくて現象だよね?
『生み出す』ってことはもしかしたら普通の水の中でも火が付くのかな?
……やってみることにした。
本のおまけで貰った物なので壊れたとしても気にしない。
桶に水を貰い、水の中でライター(仮)に魔力を流してみる。
結果としては火はついた。
水の中とか関係なかった。
これは間違いなく『生み出す』魔道具ですわ。
意味わかんない。
常識を下さい。
今日は暇だったのか気になったのか、一緒に見ていた受付ちゃんも驚いていた。
驚くよねこんなの。
ちなみに、火は燃え移らなかった。
当たり前だが、水の中に紙を入れても紙が濡れてるからね。
火が付いていても、濡れた紙には燃え移らなくて当然だよね。
おそらく『火』というモノを生み出すのがこの魔道具なんだろう。
熱で火が生まれると勉強したが、火で熱が生まれるのが魔法なんだろう。
勉強になった。
受付ちゃんにお礼を言って部屋に戻り、魔道具についていろいろと頭を悩ませるのだった。
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