第19話 同行者ができたよ、やったね!

穏やかな時間が流れる午後、川沿いを台車を引きながらのんびりと歩く。

荷物もたくさんあり台車は少し重いが、この世界に来た頃と比べ、倍になった筋力のおかげで問題なく引くことが出来ていた。

盛大に寝坊してから今日で三日。

エルフの話と信じるなら、今日中には海に着いてもいいはずだ。


「そこの人間、止まりなさい。」


……。

何か聞こえた気がしたが、今はとにかく海が見たいのだ。

知らない人の声など一切気にせず、そのまま歩き続ける。


「止まれと言っている。」


チクショウ、前を塞がれた。

前に会ったエルフさんとは別人で間違いなさそうだ。

仮面も違えば、使っている武器も違う。

武器を持っている時点で非常に怖いが……。


「へっへっへ。旦那。こっちは気づいたら迷い込んだエルフ様の領域から出て行こうと移動しているでヤンス。何事もなく通しちゃくれませんかねぇ?」


めちゃくちゃ下手に出すぎて言葉遣いが変になってしまった。


「知っている。」


(怖いなぁ、なんて言葉が続くんだろうなぁ……。)


30秒ほど無言の間が続き、非常に心臓に悪い。


「私も人間の国に出向くこととなった。隊長から『ついでに迷い込んだ人間も送ってやれ』と言われたので、お前と同行することになる。拒否権はない。」


……そっかぁ。

あのイケメン女神エルフさんは隊長だったのかぁ。

拒否権をいきなり奪われちゃったよアハハ。

……普通に考えたらありがたい話である。

一人旅はあまりにも危険だ。

二人いれば何とかなることも多いだろう。

問題は何が目的かだ。

『送る』と言っていたがエルフの情報を人間側に渡さないために、あの世に送るとかではないよな?

それともジャパンについて探りを入れたいのだろうか?

あまり疑いすぎると、純粋な親切心から助けてくれている場合に良心が痛むんだよなぁ。


「分かりました。足手まといになると思いますが、どうぞよろしくお願いします。」


拒否権がない以上さっさと受け入れよう。


「よろしい。私が索敵をしながら先を歩く。余り遅れるなよ。」


そう言うとさっさと歩きだした。

なんだか少し張り切っているようだ。

普通に強そうなエルフさんだが、前のイケメンで女神で隊長のエルフさんと比べると貫禄の様なものが足りてない気がする。

まだ若いのだろうか?

見た目では分からない。

なんせ不気味な仮面かぶってるし……。

左の腰の位置にレイピアというのだろうか?細い剣を差している。

背中には弓と矢筒、エルフと言えば弓矢だよね!

背中の腰には短剣を差しており、未だ木の棒を武器に戦うこちらとは大違いだ。

そう言えばイケメンで女神で隊長のエルフさんは少し大きめの剣しか持っていなかったな。


そうして歩くこと一時間。

何事もなく海に着くことが出来た。

日が傾くまでまだ時間はあるので、そのままエルフさんの後を歩き続ける。

というかエルフさんは一切こちらを気にせず歩いてる。


(ついていくにも体力持つかなぁ……?)


結局その日は太陽が沈む直前まで歩き続けたのであった。

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