幕間:イケメンで女神のエルフ
※イケメンで女神のエルフ視点
景色のいい草原を奇麗なウルフの死体を持って歩いていく。
進化はしていないがウルフの中ではなかなかのサイズだ。
「ソフィーア隊長!」
向こうから部下の一人が走って来る。
「ちょうどよかった。こいつを持ってくれ。」
それほど重くはないのだが、持っている側の視界が悪くなるし、この状態では咄嗟に武器を構えるのも難しいので部下に預ける。
「こいつが人間の狩ったウルフですか。結構いいサイズですね。」
「そうだろう、こいつを先を尖らせた程度の棒で一突きなんて、新しくウチに入った新人にもやらせてみようかな?」
(お、いいところにちょうど良さそうな棒が落ちている。)
お土産にしようと思い拾っておく。
「そんな人間を放置して……。本当によろしかったのですか?」
こいつが部下となってから結構長いはずだが、昔からの心配性は変わらないな。
「『運が良かった』と言っていたのは嘘ではなかった。エルフに対して全然興味を示さなかったし、さっさとここを立ち去りたいとさえ考えているようだ。心配するようなことが起きる可能性は低いだろう。」
今の人間がエルフを見ることなんて滅多にないんだがなぁ……。
あそこまでエルフに対して無関心とは、ジャパンとはどんな国なのか……。
それに……
「何百年も前から『レベルを上げるより鍛錬した方が強くなれる』と人間たちの常識になるまで裏工作していたはずなのだが……。ジャパンにはそもそもエルフという種族は存在しないのかもしれないな。」
そう、人間に対してエルフとドワーフをはじめとする多種族が手を取り合って敵対し始め、裏工作が浸透してから何十年も経つ。
毎年のように人間の町を偵察して情報を集めているが、人間たちの中では今でも常識のはずなのだ。
「転移装置というのは嘘、ジャパンという国はホント。いったいどこからどうやってこの森に来たのか。たぶん本人も分かっていないんだろうな」
私はスキルを使って嘘を読み取れる。
あそこまで平然と嘘をつくやつも珍しかったが、なぜそんな嘘をつくのか意味が分からないのだ。
「今後ジャパンから人間が来る可能性はあるんですか?」
心配性の部下が聞いてくるが、そんなこと私にも分からない。
「とりあえず警戒はするべきだろうな。今回のように我々の脅威とならず、適度に距離を取ってくれる相手だと助かるのだがなぁ。」
情報がない以上、何も分からない。
私は強さだけで上の地位に昇ったようなものだから考えることは不得意なのだ。
「とりあえず中型モンスター討伐と合わせて上に報告だな。めんどくさい。」
場合によってはジャパンという国を探しに、まだ知らぬ他の大陸まで行かないといけないかもしれない。
優秀なエルフはたくさんいるが、人間に対して拒否感を示さず、適度に上手く付き合っていける人材は多くないのだ。
(最悪私が派遣されるかもしれないなぁ……。)
人間の街には何度も行ったことがあるし、交流のあった者もたくさんいたが、それはもう何十年も前の話だ。
未だに生きていそうな存在は一人しか思い浮かばない。
まぁ、あいつを人間と一緒にしていいのか迷うところではあるが……。
しばらく速いペースで歩き、集落にたどり着いた。
討伐したウルフの肉や毛皮を集落が欲しがる分の量を卸しお金に変える。
奇麗な毛皮は職人に預け、出来上がったものもお金に変わる。
お金は全て部隊の小遣いになるのだから、肉や毛皮が多く獲れた今回はウハウハなのだ。
魔石を欲しがるものもたまにいるが、エルフは人間と比べてレベルの上りが悪いので、エルフの中で魔石の価値は非常に低い。
そんなことを思いながらお金を部隊全員に分け、上司のところに報告に出向く。
「中型のグレートウルフ及びその群れの掃討は完了しました。」
「お疲れ様です。グレートウルフの群れが相手だとあなたに任せて正解でしたね。しばらくは森の生態を観察するものたちを派遣しますが、何か他に伝達事項はありますか?」
「一つだけ。今、森の中に一人の人間が迷い込んでいます。」
「……は?」
その顔が見たかった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます