第16話 これはイケメンの女神だわ
重たいウサギを担ぎ、相棒ともいえる棒と、未だ0キルのこん棒を持ち、忘れ物がないかをしっかりと確認してから、エルフの後を付いていく。
(というか、あんなデカい狼を片手で担いでる時点でやばいのに、なんで俺より足取りが軽いんだ?オカシイヨ。)
そんなことを思いながら歩き、それほど時間もかからず川まで着いた。
「私はいったん仲間の所へと戻って魔石を回収してくる。そろそろ向こうも解体が終わっているだろうからな。そこまで時間はかからないと思うから、ここで休んでいてくれ。」
一切疲労を感じさせないまま、エルフはそう言い残して行ってしまった。
「これはマジで早くレベルを上げないとやばいなぁ……。」
あのエルフが特別強いならそこまで気にしなくてもいいのだろうが、あのレベルがゴロゴロいるのなら、中には性格が破綻した異常者がいてもおかしくない。
そんな奴に絡まれたら間違いなくめんどくさいし、最悪碌な抵抗も出来ずに殺される。
今はとにかくレベルを上げて、ステータスを上げなければならない。
「戻ったぞ。群れのボスも入れて13匹の群れだったみたいだ。肉も毛皮も貰っていいとのことだったが、魔石13個との交換で本当にいいのか?」
結構速く戻って来たみたいだ。
一人のようだが仲間はどうしたのだろう?
大丈夫?人望ある?
「もちろん問題ないよ。13個も貰えるなら助かる。」
非常に失礼なことを考えながら、平然と答える。
「そうか!それにしても魔石を欲しがるなんて珍しいな。砕くとレベルが上がると言われているが、『レベルを上げるより鍛錬した方が確実に強くなる』と言われ始めてからもう数百年は経つんだがなぁ。もしかしてお前のいた国では他に何かしらの使い道があるのか?」
(……なんだとっ!?)
思わず二度見してしまった。
そうか……。レベルを上げるより鍛錬の方が大事なのか……。
いや嘘でしょ?
このエルフの体格であのパワーは絶対鍛錬だけじゃ無理でしょ?
もぉこの世界のことが分からなくなったよ。
「いや……。強くなる為にレベルを上げたいんだ……。」
精神的なダメージが激しく、答える声には一切力強さがなかった。
「そ、そうか。まぁ……頑張れ。……ホントに魔石と交換でよかったのか?」
非常に気まずい雰囲気となったが、このエルフさんめちゃくちゃ優しいなぁ。
そうだな、なんだかんだちゃんと強くはなるんだし、気持ちを切り替えよう。
「交換で問題ないよ。レベルを上げるのが趣味の変な奴だと思ってくれ。」
「分かった。それじゃあこのウルフからも魔石を取り出すぞ。」
(そういえばまだ取ってなかったな。14個の魔石で何レベルまで上がるかな?)
そんなことを考えていると、エルフが仮面を外した。
あまりにも自然に仮面を外したので、またも二度見してしまった。
「女性だったのか……。」
仮面の下は美しいとしか言いようのない女性だった。
なんであんな変な仮面を付けているのか理解できないレベルで美人だった。
エルフに対して持っていたイメージと違うところは、こんがりとした肌の色だけだった。
「ほほぅ……?私を男だと思っていたのか?」
聞えてしまったみたいだ。
「すみませんでした。」
即その場で正座し謝罪である。
「まぁ……いいだろう。」
許された。
ついでなので少し聞いてみる。
「その仮面ってなにか意味はあるのか?正直不気味で、今日パッと見ただけで警戒心マックスになったんだけど。」
「これか?マスク自体は返り血が目に入らないようにするために付けるものだが、模様に関しては狩りの実力を示す意味があるな。この模様は大型モンスターまでなら一人で狩れるという証だ。」
結構重要な意味があるものだった。
「ありがとう。そんな意味があるとは知らなかったよ。」
「気にするな。今の人間たちでこの意味を知っているものはほとんどいない。」
「ついでに大型モンスターってどのくらいの大きさ?」
「大型か……。最低でもこのウルフの十倍はあると思うぞ。強さに関してはモンスターによるとしか言えないが、大きさ故に簡単に狩れるものではないな。」
そこまで大きいなら遠くからでも見えるだろう。
見つけたら全力で逃げよう。
お、魔石を取りだしたみたいだ。
ウサギと比べると結構大きい。
「これが今取り出した魔石で、こっちの袋に入っているのが魔石13個だ。」
受け取って確認してみる。
確かに13個の魔石が入っているようだが、明らかに一つおかしいデカさの物がある。
「それが群れを率いていたグレートウルフの魔石だな。」
魔石がこんなデカいって、中型はどれだけ化け物なんだ?
「ありがとう。袋も貰っていいのか?」
魔石も嬉しいが袋も貰えるとマジでうれしい。
「そのまま持って行ってくれ。そういえばナイフも持っていなかったな。予備で悪いがこのナイフも持って行くといい。」
もしかしたらこのエルフは女神かもしれない。
「ありがとう。本当に助かるよ。」
鞘から抜いてみると、ナイフは鉄製だった。
デザインはシンプルで、予備というだけあって使われた形跡は全くない。
ナイフを差しておく場所がないので、魔石の入った袋に一緒に入れておく。
「では私はそろそろ仲間の元に戻る。お前からは全く邪気を感じなかったから心配はしていないが、ここら一帯はエルフのテリトリーだということを忘れるなよ。」
脅しだろうか?目の前に絶対に敵わない相手がいるのに、そんな度胸はない。
「分かった。本当に助かったよ、ありがとう。」
エルフは後ろを向いたまま手を振って去って行った。
立ち振る舞いがイケメンなんだよなぁ……。
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