第15話 不審者が現れた、昨日のエルフだった。

「お~い!大丈夫か~!」


狼と相対したからか精神的に非常に疲れ座り込んでいると、遠くから声がした。

声のした方を見ると不審者が走ってきていた。

顔にはめちゃくちゃ不気味な仮面を付け、耳はエルフっぽい。

服装は何といえばいいのか、民族衣装に鉄製の胸当てを付けた感じ。

それにしても、まだ結構距離があるのによく見えるな。

裸眼でこれだけはっきり見えると、眼鏡をかけた生活には戻りたくないな。


「ケガはないか?……大丈夫そうだな。」


ものすごい速度で迫ってくる不審者から現実逃避している間に、目の前まで来ていたようだ。

というかうっすらと聞き覚えのある声なので、昨夜のエルフかもしれない。

フルフェイスの甲冑かと思ったらポニテ変な仮面だったわけだ。


「何とか生き残ったよ。いきなりこいつがやってきて、逃げる暇もなかった。」


さすがに黙りっぱなしも悪いので答える。


「すまない。昨夜話した中型モンスターは倒したのだが、その時に中型モンスターの作っていた群れから3匹ほど逃げ出してしまってな。」


(これが群れでいたのかよ……。遭遇してたら間違いなく死んでたぞ。)


「そうか。まぁ、精神的に疲れたが、ケガもなかったから気にしないでくれ。」


本当にケガ一つなく倒せたのは運がよかった。

器用さよりも先に筋力を上げるべきなのだろうか?


「それにしても凄いな。そんな木の棒で魔物化したウルフを一突きとは……。」


「本当に運が良かったんだ。次同じように襲われたら間違いなく死ぬ。」


魔物化か、デカいウサギもきっと魔物化したやつなんだろうな。

死にたくないので早くレベルを上げないと。

そういえば……、


「ナイフとか持ってる?この……ウルフ?を解体したいんだけど。」


今持ってる石のナイフじゃ、この大きさは流石に時間が掛かり過ぎる。


「ナイフなら持っているが……。ここで解体するのか?」


「駄目なのか?」


何か問題があるのだろうか?

流石に狼の肉は食べようと思わないから核だけ取り出しておきたいのだが……。


「そっちのラビットも腹を開いているのか?もしかして魔石を集めているのか?」


あぁ、やっぱり魔石だったのか。

合ってるか分からないので核と言っていたけど。


「そうだよ。肉は正直いらないから持って行ってもらってもいいんだけど、魔石は欲しいんだよね。このウルフとか毛皮も期待できない?」


まだまだレベル上げをするつもりなので、さりげなく肉を持って行ってもらおうと勧めてみる。


「確かにこれなら綺麗な毛皮が期待できるが……。肉はいいのか?魔物化したウルフの肉は栄養豊富だぞ。」


そうなのか。

でも食べたいと思わないんだよな~。


「今は魔石がブームなんだ。」


「そ、そうか。だがあまりここを血で汚すのも良くないし、やはり川の近くまで持って行ってから魔石を取り出そう。」


……このクッソ重そうな肉の塊を持って移動するのか。

腰が心配だ。

そう思っていたら、ウルフをエルフが持ち上げていた。

エルフの体はそこまで大きくない。

せいぜい自分と同じくらいだ。

それが三倍は体積がありそうなウルフを軽々と持ち上げている。


「流石にそっちのラビットはお前が持ってくれ。」


目の前の光景に圧倒され、一切反論しようとは思わなかった。

エルフ怖い。


「そういえば私が倒したウルフの群れの魔石も欲しいか?肉と毛皮を貰うなら魔石だけではおつりが出るくらいなんだが……。」


……一生ついていきやすアニキ!

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