第11話 分厚いステーキって見た目は魅力的だよね
「夕食はウサギ肉」というと、ウサギ肉を食べる習慣のなかった日本人としては少し豪華に感じるのはなぜだろう?
さて、何度も言うがウサギどころか動物の解体など一切やった経験が無かった。
やったことといえば首を切り落とし、腹を開いて内臓を捨て、皮を剥いだだけだ。
ちなみに皮を剥ぐのが一番苦労した。
内臓が一番精神的なダメージを受けたが……。
そんなお肉を食べやすそうな大きさに切っていく。
手足の肉は特に迷わず付け根の関節部分を目安に切り落としたが、腹のお肉とかどう切ればいいのかな?
肋骨付近はともかく、背骨のあたりはどうさばけばいいのか見当もつかない。
「とりあえず今夜食べる分は十分確保出来たし、残りの解体は明日でもいいか。」
まだ周囲は明るいが、太陽はここからでは見えないくらいまで沈んでいる。
フライパンもバーベキューで使う網もないので、お肉を木の棒を削った串に刺していく。
「塩胡椒をふってないお肉とか初めて食べる気がする。美味しければいいなぁ。」
串に刺したお肉を焚き火の周りに置いていく。
薄い肉なら簡単に焼けるが、肉に厚みがあると中まで火を通すのに時間がかかる。
美味しく肉を焼くのは地味に難しい。
肉が焼けるまで時間があるので、今日一日武器として使っていた棒の先端を片方だけ鋭く削る。
ちょうどいい太さだったので拾ったが、意外と堅く丈夫で気に入ったのだ。
お肉の焼ける面を時々調整しながらも、いい感じに尖らせることが出来た。
これで槍として使うこともできるだろう。
少しいい匂いがしだしたが、肉はまだ表面しか焼けていないようだ。
少し肉と火との距離を調整しておく。
せっかくなので石を積んで椅子とテーブルの代わりにする。
ウサギ肉を置いている石のときと同じように、面の広い石の表面を水をかけながら石で磨きあげる。
「本格的にキャンプっぽくなって来たなぁ。テントとかないけど、寝る場所はどうするかな?」
辺りはすでに暗くなってきており、今から寝床を探すのはさすがにやめた方がいいだろう。
「そろそろ焼けたかな?」
串の一つを手に取り、恐る恐る口にしてみる。
血抜きが不十分だったのか少し臭みがあるが、問題なく食べられる範囲だ。
塩胡椒が一切ないので非常に味が薄いが……。
「思ったより普通に食えるな。あ、中の方はまだ半生だ。まだ焼かないといけないのか、火加減とか分からないし、しょうがないか。」
(もっと弱火でじっくり焼かないといけないのか……。やっぱ肉はある程度薄切りじゃないと面倒だな。外国でよくあるらしい分厚いステーキを一度は食べてみたいと思っていたが、少なくとも自分で焼くのはやめておこう。)
串を戻し、他のお肉も火との距離や向きを変え、のんびりと焼肉を楽しむとする。
ふと、後ろに何かが飛んできたような気配を感じた。
振り向くと15m程離れたところにスライムがいた。
「なんだ、スライムか。」
先ほど尖らせた棒を槍のように使ってみる。突き刺さるのは同じだが、今までとは手に伝わる感覚が全然違った。
経験値は5%しか増えなかった。
「槍はいい感じだな。にしても、さっきの感覚は何だったんだ?」
お肉の元へ戻り、匂いだけは完璧なお肉の焼き加減を調整しながら考える。
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Lv.4(5%)
・HP(体力):12/12
・MP(魔力):10/10
・STR(筋力):12
・MAG(超感覚):10
・SEN(器用さ):12
・COG(認識力):10
・INT(知力):10
・LUC(運):10
SP.3
スキル
・ステータス割り振り
____________
スキルは増えていないようだ。
「気配察知」みたいなスキルがあればレベル上げるための狩りが少し楽になるのだが……。
「スキルが増えてないってことは、他の要因でスライムを察知したのかな?上げてるのは体力と筋力と器用だけど、さすがに器用さは関係ないよなぁ。」
別に困っていないので忘れかけていたが、SPが3余っている。
焼けたと判断した薄い味のお肉をかじりながら考えてみる。
(生きるだけなら筋力をメインに体力と器用さを上げるのが一番良さそうだけど、他のステータスも気になるんだよなぁ。というか、結局魔法はどうなんだろう?魔力はあるけど魔法の使い方が分かんないんだよなぁ。)
薄味に慣れてきたら結構お肉が美味しく感じるようになってきた。
最初に食べたものは少し臭みがあったが、部位が違うからか臭みもなく普通に美味しかったりもして十分満足できる食事となった。
「ごちそうさま。魔法については後回しにするか。HPと筋力と器用さを1ずつ上げて、今日はもう休もう。」
魔法への憧れはあるが、まずは生きる上で上げておきたい能力をちゃんと上げる安定志向だった。
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