第10話 火起こしは準備が大事
さて、とりあえず解体は終わりお肉を手に入れた。
まだ暗くなっていないってことは、この世界に来たのは午前中の早い時間帯だったのだろう。
朝飯も昼飯も食べていないのにまだ空腹にならないので、お肉は晩御飯に取っておくとして、何をしよう?
「石斧も作りたいけど、今はバッグとロープが欲しいな。」
履いているズボンには、右のお尻の位置にポケットが一つあるだけなのだ。
これでは荷物を持っての移動がめんどくさい。
「このウサギの皮は使えないかな?糸も針も無いから縫えないけど。というか革として使うには下処理が必要なんだったっけ?」
うろ覚えの知識。
そもそもがゲーム基準で得た知識なのでほとんど役に立たない。
「この先どうすればいいんだろう……。」
(おかしいな。こういう台詞は夜寝る前に一人、星を見上げながらつぶやくはずなのに。)
意外とセリフとシチュエーションにこだわるタイプだった。
「とりあえず付近で蔓植物を探しながらスライムでも倒してレベル上げするか。」
それから約1時間。
Lv.3ではスライムの核を壊して得られる経験値が一つ10%のようで、六匹目の核を壊したことでレベルアップすることが出来た。
____________
Lv.4(0%)
・HP(体力):10/12
・MP(魔力):10/10
・STR(筋力):12
・MAG(超感覚):10
・SEN(器用さ):11
・COG(認識力):10
・INT(知力):10
・LUC(運):10
SP.4
スキル
・ステータス割り振り
____________
「SPは4増えたか、Lvと同じだけ上がってるな。さて、器用さに1振ってみるとして、他はどうしようかな?筋力か?やっぱり筋肉なのか?」
とりあえずSENを12に上げる。
筋力は後回しだ。
「う~ん、そういえば器用さってどうやって測るんだ?戻って何か作ってみれば分かるかな?。」
器用さといえばゲームだとクリティカル率とかに関係するイメージだけど、DEXではないんだよなぁ。
SENってなんなんだ?せん……センス?センスだと感性って意味になっちゃうか。
わからん。
あまり遠くまでは移動していなかったので、10分もかからず戻ってくることが出来た。
そして石の上に置いたままだったウサギのお肉を見ながら気づく。
「あ、そういえばお肉とか石の上に置きっぱなしだったけど、よく動物に取られなかったな。」
晩御飯予定のお肉を取られる可能性を全然考えていなかったのである。
まぁ、気が付いたところでこんなに多くのお肉を持って移動することは出来ないから仕方がないのだが……。
「肉はどうするかなぁ。何食分あるんだこれ?さすがに痛む前に全部は消費出来ないから、燻製とかにして保存しなきゃいけないんだろうけど。」
燻製肉の詳しい作り方は知らないが、とりあえず肉の水分を抜けば長持ちするってことくらいは知っている。
水分を抜くために煙で燻したり、干したり、塩で揉んだりしてた気がする。
塩はないが、燻すのと干すのを試せばどちらかは長持ちするだろ。
「まだ日が落ちるまで時間はありそうだけど、そろそろ火の準備をした方がいいかな?」
(火起こしなんて小学校の頃のキャンプ以来だ。乾いた木を集めて、燃えやすそうな何かを探そう。)
辺りには上流から流されたのか、木は結構ある。
触った感じ乾いている気はするが、使ってみないと分からないだろう。
とりあえず片っ端からお肉の近くに集めていく。
「火種を大きくする燃えやすそうなものがなぁ……。綿みたいなものがあればわかりやすいんだけど。杉とか松の枯れ葉とか、笹の枯れ葉とかも、集めればよく燃えた記憶があるなぁ……。」
虫眼鏡で火起こしして遊んでたあの頃が懐かしい。
とりあえずパリッパリに乾いた枯れ葉をそこそこの量、適当に集めていく。
「あとは火種だなぁ。マッチとかライターとか虫眼鏡があれば簡単に出来るんだけど。木を擦って摩擦で火起こしとか、知識はあっても経験がないと厳しいでしょ。あとは……火打石とか?石はいっぱいあるけど、火打石に使える石とか知らないんだけど。」
その辺にある石を擦り合わせてみる。当然ながら火花は飛ばない。
「よし!時間はあるし摩擦を試してみよう。テレビで見た感じ簡単そうだったし、実際やってみても簡単にいけるやろ~。(自分を煽っていくスタイル)」
まずは記憶を頼りに木の表面を乾いた石で削る。
ゴリゴリ削る。
削った結果、当たり前だが木の粉ができる。
15分程無心で削った結果、そこそこの量の粉ができた。
次は木の板を2枚用意する。
太めの木を石を使って縦に割り、板状にしたものがこちらです。
器用さがいい働きをしてくれました。
(……初めてでこんなにきれいに木を割れるんだな、器用さって凄くないか?)
木の板の片方の面に溝を掘ります。
この溝はもう一枚の木の板をこすりつける部分になります。
ついでにとがった石で溝の中心にぐりぐりと穴を開けます。
この穴から火種が落ちるんですねワカリマス。
これで材料の準備はできた。
燃えやすい枯れ葉の上に木の粉を盛り、その上に板の穴が開いた部分が来るようにセットする。
「摩擦の時間じゃぁぁぁぁぁ!!うぉぉぉぉぉ!!!」
声は激しいが、板を擦りつけるその動きは非常に丁寧である。
1分もしないうちに溝の部分が黒くなり始め、煙が出始めた。
「おぉ!これ結構簡単にいけるんじゃね?」
そしてついに、小さな、ほんの小さな火種が発生したように見えた。
擦る動きを辞め、火種が穴から下に落ちるように軽く板を叩く。
板をどけ、枯れ葉ごと火種が落ちたと思われる木の粉を包む様に掴み、軽く息を吹き込んでみる。
「あっつ!」
火はついた。
感動するよりも先に、熱かったので急いで燃えやすそうな細い木を置いた場所に投げたが。
細い木に燃え移るようにどんどん細めの木や燃えやすそうな枯れ葉を適当に追加していく。
ある程度火が強くなれば、後は適当でいいのだ。
とにかく追加していく。
「準備がめんどくさいけど、火をつけるのは結構簡単だったな。器用さのステータスも結構実感できたし。」
気がつけば夕方。軽い充実感に包まれながら、夕食の準備を始めるのであった。
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