元カノ?視点

 どうも私は彼氏のことを振っていたようだった...



 いや、そんなつもりはないのだけど誤解されていた、もしくはさせてしまっていたようだ。とりあえずそんなことはないと否定し言いたいことを言って、彼の部屋を出た。少し悪いことをしたかなと思いながら階段を降りると彼の母と目があった。

「あら、もう帰るの? 一緒に晩御飯でもどうかしら?」

「ありがとうございます。けどうちの母も準備して待っているようなので、また改めてお願いします」

「あら残念ね。まあまた今度にしましょう。何時でもいらっしゃい」

「ありがとうございます。おばさんの手料理美味しいので楽しみにしてます」

「あら嬉しいこと言うわね。ヒカリちゃんのためなら何時でも腕によりを掛けるわよ!」

「うふふ、ありがとうございます。お邪魔しました」

「またねー。……」

(ホントにいい子よね。うちのバカ息子には頑張って捕まえて貰わないと!)


 玄関を出ると日が暮れていた。久しぶりにきた彼の家はとても居心地が良くついつい長居をしてしまった。けれども別れ際のやり取りが少々気になる。少し言い方が悪かっただろうか。そんなことを思いながら隣の我が家に戻ろうとすると、後ろから声をかけられた。

「あ、ヒカリ! おーい!」

 どうやら親友のマナミのようだ。

「マナミどうしたの? こんなところで?」

「いや、最近塾に通ってるんだけどその帰り道だよ」

「塾に通ってるんだ。偉いね!」

「いやー受験も近いしね。親も煩くてさ。それより、相変わらずタクヤくんとは上手くいってそうねー。二人で遊んでたの?」

「いや、うまく行ってるかはわからないけどね。今も何か別れてたことになってたし...」

「え、どういうこと? 」

「いや、色々あってさ...」

 あいつには悪いなと思いながらもマナミに今日あったことを話してみた。


「信じられないでしょ!」

「いやータクヤくんもヒカリの前ではまだそんな感じなんだね笑」

「本当に昔からどこか抜けてるのよね」

「けどそれもあんたの前だけじゃない。今じゃ学校では運動神経抜群のサッカー部元キャプテン。学業は優秀で人当たりも完璧、教師たちからも頼りにされる生徒会長様、後輩からは憧れのマトだよ」

「あいつは外面がいいのよ。本当の姿を見たら皆幻滅するよ!」

「そんなことないよ。昔はさっき聞いた話がそのままイメージできるハナタレボーズだったじゃない」

「……まあね」

「あんたに見合った男になるって、タクヤくん必死だったよ。それで頑張って高校デビューしたら上手くいったみたいでさビックリしたよ。あそこまで変わるんだなと思って。これも愛がなせる技だね」

「やめてよ恥ずかしい!」

「まあ今日の話は黙っててあげな。今の学校じゃタクヤくんの昔の情けない姿を知ってるのは私とヒカリだけだからさ」

「……そうね。そうするよ。話を聞いてくれてありがと。なんかスッキリしたわ」

「いやいや楽しい話が聞けてよかった。あんたら二人は何があっても大丈夫だよ。私が保証する。ヒカリもタクヤくんも末長く幸せになってください」

「ありがと。ごめん、長くなったね。もう暗いしまた明日会いましょう」

「そうね。じゃまたねー」



「ただいま」

「あらお帰りなさい。今日は遅かったね」

「ちょっとね」

「あらタクヤくんと何かあった?」

「……そんなことない」

「えー顔に何かあったって書いてるよ。分かりやすいわねー笑」

「そんなことないって!」

 面倒な母の絡みを無視して部屋に戻ることにした。それにしてもそんなに顔に出ていただろうか...

「もうご飯はどうするのー。先に食べるわよー」

「……」

(あら無視されちゃった。あとでタクヤくんのお母さんに話を聞いておかないと。タクヤくんとの関係が上手くいってないと機嫌が悪くて面倒なんだから)


「はあーなんか疲れた」

 ベットに横たわると力が抜けた。しかしマナミと話せたから少しスッキリしたけどまだモヤモヤが残っている気がする。そもそもなんでこんなに悩んでいるんだろうか。私らしくもない。気になるくらいなら、もう一度謝っておこう。そう決めるとスマホで彼に連絡をいれることにした。

「さっきは私も態度が良くなかった! ごめん! こんな私だけど明日からもよろしく!」

 少し雑だがこんな感じだろうか。まあ彼ならきっと許してくれるだろう。そんなことを考えながら画面の送信ボタンを押した。

「はぁー疲れた」

 そんな独り言が零れる。明日あいつに会ったらなんて言おうか。そんなことを考えていたら瞼が自然と重くなり自身の意思とは関係なく瞼が閉じる。





「おーい、こっちこっち!」

「待ってよヒカリちゃん...」

 幼い彼が息を切らしながら必死に私を追いかけてくる。そんな彼を見かねて私は手を差し伸べる。

「もうーだらしないなー」

「ごめんよ...」

「ほらこっちだよ! もう少しで着くから!」

 幼い彼の手を無理やり引っ張っていく。我ながらなかなか強引ではあるが彼は決して諦めず付いてきてくれる。

「ほらーもう着くよー」

「う、うん」

 彼は昔から偉そうで強引な私を許してくれる。昔から変わらないそんな彼の優しい顔がそこにはあった。



「おーい、ヒカリ! ご飯どうすんのよー。いい加減食べなさいー」

 母の声に驚き飛び起きる。ふとスマホを見ると彼からの返事が返ってきていた。

「こちらこそごめんよ。変な勘違いしていた。これからもよろしく頼むよ。あと、あのマンガの続き準備しておく」

 彼らしい返信に頬が緩む。

「おーい、聞こえてるー。ヒカリー」

「聞こえてるよ。今行くよ」

 母に返事をし、私は彼に一言だけ返信して夕飯に向かった。


「明日の放課後、一緒にマンガを買いに行こう! 私のおすすめも教えてあげる!」





------------------------------------------------------------------------あとがき

 本作の評判が良かったかはわかりませんが思うがままに続きを書いてみました。こちらも駄文ではありますがお付き合い頂きありがとうございました。

 皆さんはこんな彼女がいたらどう感じるでしょうか? 鬱陶しいなーとかこんなの付き合ってられないよと感じる方もいるかもしれません。しかし、本作の主人公のタクヤにとっては素敵な彼女のようです。またヒカリにとっても素敵な彼氏であり、ついつい甘えてしまいあんな態度をとっているのだと思います。二人のお話はこれで終わりにしますが、また別の作品も読んで頂けたら幸いです。長くなりましたがここまでありがとうございました。

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元カノと一緒 かめ @turai

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