第40話 パトラたちの武器を買いに来た。なぜか騎士団に絡まれる。

「うーん。美味しいねーパトラー」


「シャノン美味しいねー」




 武器屋へ行く途中にシャノンのお腹が減っていそうだったのでオークの串焼きを買って、食べながら行くことにした。




 オークの串焼きはこの国ではメジャーな食べ物で、油が乗っていて口の中に入れると、とろっとしていて口の中で旨味がじゅわっと広がる。




 安価の割に腹持ちもよく、流通量も多いので人気の食べ物だった。




 ただ、味付けが塩コショウしかないのが少し味気ない。 


 もう少し何か美味しい食べ方があれば、もっと売れるのではないかと密かに思っている。




 他の従魔たちは箱庭の中でガーゴイルくんが、腕によりをかけて料理をしてくれていた。


 オレンジアントを始め、ラッキーにもガーゴイルくんの料理もなかなか好評だ。




 俺たちは歩きながら串焼きを食べ武器屋へ向かう。


「パトラはどんな武器が欲しいんだ?」


「うーん。考え中ー。合わなければ素手でもいいかなとは思ってるー」


「そうか。ここの武器屋は色々な武器も防具もあるから見て見るといいぞ」


「うん。楽しみー」




 王都の武器屋『オーメン』は王都の中でも有数の武器屋だった。


 前パーティーにいた頃からお世話になっており、武器だけでなく防具などの調整や、オーダーでの作成もしてくれる。パトラたちの防具などもできれば特注でお願いしたいと思っている。




「おっ! ロック大変だったな。パーティー内で揉めたんだって。カラが来て嘆いてたぞ」


「いやー本当に大変でした」




 店主のマッテオが剣を磨きながら声をかけてくる。


「ずいぶん、派手にやったらしいじゃねぇか。昔の仲間相手に本気だして潰しにいったんだろ? まぁロックの支援魔法を舐めていたからな。あいつらもちょうどいい経験になっただろ」


「本気じゃないですよ。ちょっと退職金を多めにもらっただけです。それより、俺が加護を与えていたの知っていたんですか?」




「はぁ当たり前だろ? S級パーティーになる奴らがあんな装備なわけないじゃないか。何年ここで武器屋をやってると思ってるんだよ? ロックとあいつらは幼なじみって聞いてから口はださなかったが、早めに教えてやれば良かったと思ってるよ。それで今日はどうした?」


「あっこの子たちに合う武器と防具を見繕って欲しくて」




「おめぇそれはもしかしてオレンジアントの女王じゃねぇか? 滅火のダンジョンの5階層から連れてきたのか」


「よくわかりましたね! ちょうど卵から孵って……タイミングよくですね」




「そりゃ俺だってダンジョンの情報くらいは仕入れるからな。いやー見るのは初めてだけど、特徴的な触角といいオレンジの綺麗な色しているな」




「初めまして、パトラといいます」


 パトラはマッテオに丁寧にあいさつをする。


「武器屋のマッテオだ。よろしくな嬢ちゃん。武器や防具で困ったことがあればいつでも声をかけてくれよな」


「ありがとうございます」




「他にも作ってもらいたいオレンジアントたちがいるんだけど、ここに呼んでもいいですか?」


「あぁいいぞ。実際に見て見ないと防具はわからないしな」




 腕輪を触りオレンジアントたちを召喚する。


 次々にでてくるオレンジアントたち。最後になぜかガーゴイル君もでてきた。


「ほう。可愛いな……ってなんでガーゴイルまでいるんだ?」


「ガーゴイルくんも仲間になったんだ。ガーゴイルも武器や防具使うのか?」


「僕は、王都の武器屋を見てみたかったので、大丈夫ですか?」


 マッテオの方を見ると大丈夫だと頷いている。




「この子たちに好きな武器持たせてもいいですか?」


「あぁ好きなだけ試せ。それにしてもオレンジアントにもビックリしたけど、王ガーゴイルは魔王軍の先鋭部隊っていうのに、そんな奴まで仲間にしたんだな」




 俺とガーゴイルくんはお互いに顔を見合わせ、複雑な表情をする。


 うちのガーゴイルくんは……料理や家事全般が得意なんですとは言わず、否定も肯定もせずに愛想笑いだけ浮かべておいた。




 オレンジアントたちはそれぞれ剣や槍、弓、杖などを触って見ているが、1人ヌンチャクをカッコよく振り回そうとしたのか思いっきり頭をぶつけていたものがいた。


 しゃがみこんで頭を自分で抑えている。




 オレンジアントEだ。


 チャレンジ精神旺盛なのはいいが、ヌンチャクは訓練が必要だろう。


 回復薬が必要ではなさそうだが、軽く頭をなでてやる。




「武器は自分を守るのにも使えるけど、使い慣れないものは危険だからね」


 オレンジアントEはコクリと頷くと俺に一度抱き着いてから、また武器を探しにいった。




 こう見るとなかなか個性がある。


 杖を持っている奴もいるが……オレンジアントは魔法を使えるのか?


 少なくとも魔法を使っているのは見たことがない。




 うん。魔法というよりは素振りしているところをみると、鈍器として使うようだったらしい。




 しばらくして、オレンジアントたちは、それぞれが自分で選んだ武器を持つことになった。


 Aが剣、Bが槍、Cがトンファー、Dが弓、Eがヌンチャク




 CとEの武器……なかなか使いが難しそうだけど、好きこそ物の上手なれって言葉もある。


 小さい時から親の勝手で方向性を決めてしまうのはもったいない。




 危ない時には助けてやればいいし、できるだけ色々な経験をした方がいい。


 聖獣を仲間にできなかった頃の俺がそうだったように、失敗や回り道から学ぶことは沢山あるのだ。




 事実、あの頃回り道だと思っていた道は俺の可能性の幅を広げ、仲間を守る力をつけてくれた。




「みんな決まったか?」


 俺が声をかけると、パトラだけはまだ決まっていなかった。


 色々な武器を並べて、振ったり、かかげてみたりしながら悩んでいる。




「パトラはなかなか気に入るのが見つからないみたいだね。何と何で悩んでいるんだい?」


「パパー私ね、パパーみたいになりたいの。魔法を使ってみんなを助けたいの。だけど……パトラも魔法使えるかなー?」


「やってみたらいいよ。パトラにも魔力があるから一緒に練習しよう」


「パパーありがとうー! じゃあ杖にするねー!」




 パトラには指揮のスキルもあるし、補助魔法を使えるようになったら、バランス的にも良いかもしれない。でも、まずは自分の身も守れるようにならないといけない。


 過保護に思えるかもしれないが、防御魔法から覚えさせよう。


 何より優先されるのは、自分の命を守ることだ。




 時には逃げたっていい。


 勝てない相手に無理をする必要はない。


 頑張ることと無謀なことにチャレンジすることは同じではないのだから。




 ガーゴイルくんは本当に見に来ただけで、特に何も欲しいものはないということだった。


 なんだかんだ言っても、魔法も使えるし万能型であるのは間違いはない。




 シャノンも色々と武器や防具を見ていたが、今使っているものの方が手に馴染んでいるといった理由で特に必要ないようだ。




「マッテオさんこれで」


「まいど。そう言えばロック、可燃石が盗まれているって話聞いたか?」


「えぇ、丁度依頼を受けたところです」




「なら良かった。俺のところや、パン屋、串屋とか至る所で少しずつ盗まれているんだよ。別に俺らのところは騎士団のところみたいに大量じゃないから、それほど被害は少ないんだけどよー。どうしても、武器を鍛えたりするのに使うものだからな、なくなると困るんだよ。丁度昨日も盗まれてな。ロックが来るちょっと前に街の兵士に報告してきたところなんだよ」




 なるほど。いつも人が多いのに今日はいなかったのは、店を開けたばかりだったからなのだろう。




 可燃石は1個で、ほぼ1日の料理などを賄う火力や熱を発してくれる。


 使い方によっては色々なエネルギーの代用になる。




 それほど高い物ではないが、騎士団ではかなりまとめて盗まれたらしい。




 そこへ新しい客が店内に入ってきた。


「いらっしゃい」


 マッテオが声をかけたので、振り向くと、そのお客は……どうやら王国騎士団のようだ。


 騎士団は胸に羽の紋章を飾っており、一般的な兵士と違って一目で見分けがつくようになっている。




 俺たちがカウンターの前で、マッテオさんが商品を包んでいるのを待っていると、いきなりパトラを蹴り飛ばした。


「魔物使いが調子に乗って、女と魔物連れて武器なんて買い物に来てんじゃねぇよ。お前らは魔物だけ消費して戦ってればいいんだよ」




 男はそう俺にたいして言い放った。


 なんだこいつ。

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パトラ「魔法覚えましたー」

ロック「使ってみな」

パトラ「デスククラッシャー」


なんて可愛さと無縁の魔法を覚えたらどうしようと、

ちょっと心配になるロックだった。


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