第38話 王都を襲ったオーガの群れ

 冒険者たちがオーガと戦っている。




「そっちへ行ったぞ! 何としても城壁に近づかれる前に狩るんだ!」


「ダメだ! 抜かれる! 逃げろ!」




「もう少しだ! 今回は騎士団にも要請があったって話だぞ! 倒せなくても騎士団が来るまで耐えれば」


「ダメだ。あんな奴ら来たところで手柄を横取りされるだけだ。それよりも……」




 俺たちは緊急の依頼を受けてオーガ討伐へ来ていた。


 他の依頼を受けていたせいで到達が遅れてしまったが、まだ死人はでていないようだ。




「遅くなった! パトラ指揮をとれ! こいつ等を全部狩るぞ!」


「任せてパパー」




 王都の近くにオーガが5体現れたと言われ俺たちは緊急で王都東にあるグランドルの森に来た。俺たちが着いた時には、すでに冒険者たちが戦ってはいたが、かなり苦戦している。




「ロック遅い! 突き抜けろ火炎の槍!」


 オーガ一体の足に槍が刺さり、崩れたところで他の冒険者が切りかかる。




 唯一善戦していたのはエミーとカラのコンビのいるグループだった。


 前衛無しの2人のパーティーだが、緊急にパーティーを組み上手くオーガを捌いている。




「遅くて悪かったな。今から挽回してやるよ」


 俺は周りにいる味方に補助魔法、基礎力向上をかける。




「ABとCDはそっちのをお願いー。Eとガーゴイルくんはそこのをー。シャノンさん私と一緒にそっちのを行きますねー」




 エミーとカラのところは2人に任せて大丈夫だろう。


 なら俺は残った1匹を倒しに行こう。




「ラッキー」


『あいよ。思いっきりやっていいんだろ』


「あぁ。そういうこった」




 オーガは魔物の中でもBからAランクに相当する魔物だった。


 王都のこんな近くででること事態が珍しいが5体も同時にでてくるのは異常だった。


 おっと。余計なことを考えている間にラッキーは一瞬でオーガ一体を仕留める。




『これじゃあ運動にもならん』


「そう言うなって。他のメンバーは……?」




 オレンジアントAB、CDは危なげなく、オーガに善戦していた。


 オレンジアントもBランクなので冒険者と協力をすれば、この結果は当たり前だろう。




 シャノンとパトラのペアはもうオーガに膝をつかせ、まもなく止めをさすところまで行っていた。




 オレンジアントEとガーゴイルくんペアは……


 Eが孤軍奮闘している。




 ガーゴイルくん何の封印かわからないけど。封印解いた方がいいのでは?


「ラッキー、ガーゴイルくんのところを助けた後、様子を見ながらエミーたちのところへいくぞ」


『あいよ』




 ガーゴイルくんは風魔法を放っているがオーガにはちょっと強めの風程度で攻撃とまでは言えないようで。オーガには効いてはない。




 その間Eが必死に攻撃を受け止めヘイトを稼いでいる。


 冒険者たちは、あのレベルでは加勢もできないな。




 俺たちはEのところに助太刀に行く。


 ラッキーがオーガの足を斬りつけたことで片膝をつく。


 オレンジアントEはその隙を見逃さず、もう片足を殴りかかる。




 オレンジアントはその小さい身体からには思えないくらい強い力を持っている。


 オーガの足が変な方向へ曲がる。




 オーガが両膝をついたところで他の冒険者が魔法を顔面に放つ。


 視界がなくなった焦りからか大暴れしている。




「よし! みんなロックさんの従魔に続け! 押し返せるぞ!」


「おぉ!」




 もう3年も冒険者をやっているとさすがに多くの冒険者とも顔馴染みになってくる。


 それに前回の件があったせいで俺が従魔を連れているのも自然と周知される結果となった。




 俺たちは一時距離を取り、全体の戦場を把握する。


 従魔たちがAランク相当の魔物と戦うことも、他の冒険者と協力することもあまり経験できることではないのでパワーバランスを見ながら調整に徹する。




 もう俺たちの勝ちは決まった。


 パトラは自分の戦闘だけでなく、全体の把握が上手かった。


 シャノンとの連携も上手く褒めるところしかない。




 あっという間にオーガ1体を倒してシャノンがオレンジアントEの補助へ入っている。


 ガーゴイルくんは……拗ねてないで戦ってくれ。




 それからしばらくしてオーガは全部無事に倒すことができた。


 こんな異常現象、そうあることではないが、死人を出さずに乗り越えることができた。




 怪我人をカラが魔法で癒して回っている。


「聖女様ありがとうございます」


 聖女らしからぬ聖女だったが心を入れ替えたようだ。




「ふん。感謝じゃなくて新しい服が欲しいんだけど」


「えっ」


 冒険者が固まっている。


 そりゃそうだよね。カラの口の悪さは変わってなかったわ。




 俺も冒険者の回復を手伝い、回復が終わった頃に王国騎士団がやって来た。


「冒険者諸君、私は王国騎士団の騎士団長マーカスだ。あなたたちの協力に感謝する。今回のオーガの暴走の原因解明のため、オーガの死体に関しては騎士団が検証させてもらうことにする。なお、異論は認めない」




 この国の騎士団は有無を言わさず手柄を横取りしていった。


 またギルド長と騎士団が揉めることになりそうだ。


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ラッキー「私のライバルスカイバードが出ていないぞ」

ロックー「いつからライバルになったんだよ」

ラッキー「スカイバードを全身水洗いするまで私は諦めない」


意外とラッキーが根に持つタイプだった。


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