第37話 閑話 第1回 従魔最強決定戦! 最強の称号はあいつに……

「ラッキーなんか臭わないか」


『そうか。私にはわからないけど』




「なんか臭うんだよな。ラッキーちょっといいか」


『どうぞ』


 俺が鼻を近づけると明らかに異臭がする。




「うっ! ラッキー臭うぞ! 最近いつお風呂入った?」




 ある日、森の中で探索中ラッキーから異臭がする事件が発生した。




『うっ……昨日かな』


「昨日はずっと一緒にいたよな」


 ラッキーが俺たちから一歩下がる。




『一昨日だったかも』


「一昨日も一緒だったよな。そういえば、みんなが身体拭いている時とかも見ているだけで拭いてないよな」


 ラッキーはさらにもう一歩下がる




『何を言っている! 私はちゃんと舐めて綺麗にしているから大丈夫なのだ』


「全員! 箱庭から出てこい!」




 従魔全員が箱庭から出てくる。


「パパーどうしたの?」


「ラッキーを今からお風呂に入れる。みんな協力してくれ」


「うん。いいよー」


「任せてください」




『ハハハッ私をそう簡単に捕まえられると思うなよ。全力でかかってくるがいい』


 どこぞの悪役かと思うようにノリノリで答えてくるラッキー。




「よし、全員俺の周りに集まれ! 補助魔法で全員の身体能力を向上!」  


 俺から発せられた魔法がラッキーを除く従魔、シャノンの身体に吸収されていく。




『補助魔法ごときで私との差が埋まると思うなんて片腹痛いわ!』




「わーい!ラッキーと追いかけっこー!」


 一番初めにかかって行ったのはパトラだった。




『ふん。パトラ少し成長したからと言って、私に勝てると思うなよ』


 パトラ単身でラッキーに突っ込み口から糸を吐き出す。




『甘い、まだまだ甘いぞ。単身でかかってくるなんてお前の指揮のスキルが無駄になってるぞ』


「今だよーラッキー油断してくれてありがとー」




 いつのまに移動したのか、オレンジアントたちがいる木の上5箇所から糸が飛び出してくる。


 ラッキーの手足と大きな木が結ばれ、ラッキーの身動きができなくなる。




「パパー! ラッキー捕まえたよ」


 オレンジアントたちがハイタッチしているが……。


「パトラまだだ!」




『やるようになったのは認めよう。だがまだ甘い! 足を止めてからが勝負だぞ』


 ラッキーが力を入れると糸が切れ、そのままオレンジアントたちを絡めとるように糸を振り回した。




 オレンジアントたちは全員が縛り上げられてしまった。




「えーん。ラッキーが強いよー」


 パトラが負けて悔しいのか泣き出してしまった。


 まだまだパトラたちは子供だから仕方がないな。




 その声に反応したのがガーゴイルくんだった。




「ラッキーさん大人げないですよ。パトラちゃんを泣かせるなんて」


『ほほう。次はガーゴイルくんか。かかってきなさい。遊んでやろう』




「ラッキーさん僕も舐められたものです。ガーゴイルやって100年、それに今はロックさんの補助魔法もかかっています。長年生きてきた経験はそう簡単に埋められませんよ。僕だってやる時はやるんです」




 ガーゴイルくんが風魔法を放つ。


 なんだろうこの光景見た覚えがあるぞ。




『フハハハ。よほど世間知らずのようだな。私に風魔法を放つとは。前回よりは少し加減をしてやろう』


 ラッキーがシッポを大きく振るう。




「ガーゴイルくーーーん!」


 以下ガーゴイルくん見せ場なし。




『さぁ次は誰かな?』


「ラッキーさん胸を借ります」




『シャノン、胸を借りるではなく本気でかかってこい』


「では全力でいきますよ!」


 シャノンが剣を抜きラッキーに切りかかる。


 シャノンの動きは前よりもかなり良くなっているがラッキーにとっては、子供の手を捻るようなものだ。




『シャノンどんないい剣を持っていようと、当たらなければ意味がないんだよ』


「せめて掠るくらいしてくれてもいいじゃないですか!」




 冷静に剣を振るっていたシャノンの剣が段々と雑になっていく。


『そんなに慌ててたら当たる物もあたらんぞ』


「知ってますよ」


 急激にシャノンの攻撃スピードが上がる。


 ラッキーが後ろに下がろうとするとそこには大木があった。




『シャノンわざとやったな。なかなか良かったぞ』


 シャノンは段々とスピードを遅くし、わざと怒りに任せているように大きく剣を振ることでラッキーを大きな木のところまで追い込み、一気にスピードをあげた。




 シャノンの剣がラッキーの毛に触れる。


 だが、切り付けるまではいかなかった。




『成長途中にしてはなかなかだったぞ』


「ありがとうございます。でもまだ終わってませ……んよ?」




 ラッキーがシャノンの首筋に前足を当てる。


『動けば首が飛ぶぞ』




 ラッキーの威圧感がシャノンを襲い、シャノンはそれ以上の抵抗の意思を示さないという意味で剣から手を離す。




「ダメ、降参です」


 シャノンもラッキーを止めることはできなかった。




『さぁ、そろそろ本気をだしたらどうだ? ロックいざ……あれ……なんだこの甘い……匂いが……』




 よく見るとスカイバードがラッキーの頭の上で見たことのない花を振っている。


 あれ……俺も……。




 俺を含め全員がいつの間にか箱庭の中に入っていた。


 ラッキーの臭いは、ラッキーを洗った形跡があったがすでに乾燥までされおり、花の良い香りがラッキーからしている。


 それ以上に驚いたのがラッキーのモフモフ具合いが格段に上がっていたことだ。




 モフモフ最高だ。




 ラッキーはずっとスカイバードがいる木の下から離れなかった。




『まさか……私が眠らされるとは……ワオーン』


 ラッキーはスカイバードに眠らされたのが相当悔しかったのか、その後スカイバードに降りて来いとずっと吠えていた。




 これぞ負け犬の……。


『ロックなんか失礼なこと考えてないか?』


「そんなことはないぞ」




 スカイバードはラッキーを相手にせず、木の上で悠々とのんびりしていた。


 スカイバードが一番最強だった!?




 俺たちは吠えるラッキ―の周りでラッキーのモフモフ感を楽しんだ。


 そのうち絶対お風呂に入れて最高のモフモフにしよう。


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ラッキー「悔しい」

ロック「仕方がないよ。お風呂入ればいいんだよ」

スカイバード木の上で……ニヤリ。


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