第30話 『月が綺麗だぞ』「一緒に見る月はさらに綺麗に見えるな」

 その日の夜。 


 俺たちは村人から空き家を借りていた。




 あまり綺麗とは言えなかったが俺がクリーンの魔法で部屋の中を掃除したところ、それなりに使えるようにはなった。




 シャノンだけはクリーンの魔法を見て、


「ロックさん……こんな魔法見たことないんですけど……ロックさん……はぁ私のご主人様って本当にすごい人なんですね」




「ん? ご主人様?」




「あっいえ、ダメでした?」


 シャノンがなぜか顔を赤くしている。




「ご主人様はちょっと照れくさいから今まで通りロックさんでいいよ。それに俺はシャノンを奴隷だなんて思ってないしな」




「ありがとうございます。私、ロックさんに出会えて幸せです」




「俺の方こそありがとう。俺もシャノンと出会えて幸せだよ。シャノンは先に休みな。俺は明日の準備があるから」




「えっ? あぁ私も付き合いますよ」


 シャノンはそう言ってくれたが目の下に少しクマができており疲れているのはわかる。


 回復薬を飲んでも精神的な疲れはそう簡単には回復することはなかった。




 色々あったからな。




 従魔たちは箱庭に入って休んでもらっている。


 シャノンも箱庭で休むか聞いたところこっちの小屋でいいと言われてしまった。




 どうやら俺がまだ仕事をしていたの気を使ってくれたようだ。




 今日は開始が遅かったせいで、村の人々はそれほど疲れていないようだった。


 支援魔法を少し長くかけすぎたせいか村の人々が夜も元気に頑張っていた。




 明日に疲れを残さない程度にしてもらいたいが。 




 シャノンたちに頼んだものは無事に回収ができたようだ。




 明日はキャベッツを回収してきてもらい、明後日には王都で売ってきてもらう予定だ。


 今王都ではキャベッツが入荷していないと言っていた。




 チヨウシノ村では食べる習慣がなかったようだが、王都でなら飛ぶように売れていく。


 キャベッツは使い方が色々あり万能野菜だからな。




 ギルドからの依頼の方の準備も進めないといけない。


 勝つことはもう決まっている。


 でも、どうやって勝つかが大事だ。




 翌日の計画と準備をしているとシャノンが机の上でウトウトしだしてしまった。


 こうして改めて見るとシャノンは本当に可愛い。




 今日一日頑張ってくれたせいか顔に汚れがついている。


 シャノンにもクリーンの魔法をかけてあげる。


 サッパリした身体で休んだ方が身体の疲れも取れるからな。




「シャノン。ありがとうな」


 シャノンの髪の毛にそっと触れる。


 ラッキーのとはまた違った気持ち良さがある。




 シャノンを抱きかかえて聖獣の箱庭へ行く。こっちの方が寝るにしても適温で気持ちがいい。




 俺は一人で小屋に戻る。


 さて今度は俺が働かないといけない。準備をしすぎて足りないってことはないからな。




 村の外に出るとラッキーが箱庭から出てくる。




『水くさいぞ』


「なんだ起きてたのか? ちょっと散歩に行ってくるだけだぞ」


『そうか。なら私も散歩だ。なぁロック、見てみろ月がとても綺麗だぞ』


「あぁ本当だね。ラッキーと見る月はいつもより綺麗に見える」




 俺はラッキーを優しくなで頭をラッキー顔に近づけ大きく一度呼吸を吐く。


 そしてから背中に飛びのった。


『どこから行くんだ?』


「まずは虹色トンボを捕まえにな。あいつらは昼間は動きが早いが、夜は木に止まってるんだ」




『ゴブリンはどうするんだ?』


「あぁあれは勝手に倒してくれる冒険者がくるよ」


『そうか。別に夜行かなくても昼間でもいいんじゃないか?』


「昼間はやることが多いからな」




 ラッキーは俺を乗せ風のように走る。


 村から新緑のダンジョンはすぐ近くにある。


 この村は実はかなり便利で幸運な場所にある。




 王都までの道が繋がれば、このダンジョンへ入るための冒険者が沢山やってくるようになるだろう。そうすれば、それだけで村の収入も増える。虹色トンボは戦闘力は皆無だ。捕まえる方法さえ知っておけば安定して収入を得ることもできる。




 村人たちへ捕まえ方を教えてやらなければいけない。


 俺が成長させると決めた以上、村にはしっかりと自立するまで頑張ってもらわないと。




 新緑のダンジョンの周りは夜に来ると緑色にうっすらと発光していた。


 発光虫が月明かりに反応している。




 俺たちはそれから夜が明けるまで虹色トンボを捕まえた。




 そしてダンジョンから虹色トンボの姿は消えた。




『ロック……やりすぎじゃない?』


「えっ? あれ? ダンジョンだからそのうちまた増えるでしょ」


 ラッキーが大きくため息をつかれる。


 ちょっと心外なんだけど!



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ラッキー「ちょっと思ったことがあるんだけど」

ロック「なんだいラッキー?」

ラッキー「一番加減しらないのロックじゃない?」

ロック「そっそんなことは……ない」


結構身に覚えのあるロックだった。


いよいよ本日ドラゴンノベルズさんより2巻が発売です!

目印は可愛い人魚になります。


本があなたが来るのを待っています。

お気に入りの書店でぜひ手に取ってください!

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