第20話 呪詛と解呪と噛まれる俺

「シャノン大丈夫か?」 


 シャノンに声をかけるがシャノンは俯いたままだった。




「リッカさんこれは俺の勝利でいいんだよね?」




「えぇシャノンさんも何も言わないってことは納得されたと思います」




 とりあえずリッカさんにシャノンのことをお願いする。




 地面が濡れてしまうのは仕方がない。


 誰でも起こりえることだ。だけど、それを俺が指摘していいことはない。


 あえて気が付かないフリをする。




 ラッキーの方を見るとラッキーはシッポを身体に巻き付け落ち込んでいる。




「ラッキー、その、まぁやりすぎた感じはあるけど結果オーライってことでありがとうな」




『次から気を付ける。手加減大事だな。あっこの鳥は回収するか?』




「そうだな。一応回収しておくか」




 落ちてきた鳥に触ろうとしたところ鳥は目を開け俺の方を見て来る。


【スカイバードが仲間になりたそうにしている。仲間にしますか?】


 頭の中に声が響いてくる。




 スカイバードは初めて聞く名前の鳥だった。


 ラッキーのせいで墜落させてしまった引け目もあり仲間になりたいなら仲間にしてもいい。


【スカイバードを聖獣化し仲間にしました。聖獣の箱庭へ転送します】




 それからはまた前回と同じような音声が流れてきた。


 前回と内容はほぼ変わらなかったが仲間が増えているのに箱庭が狭くなっても可愛そうなので箱庭拡張を選んでおいた。




 ラッキーはシャノンが地面を濡らしたところに土をかけている。


 あんなところまで気が回るなんてラッキーさすがだ。




 それからしばらくしてシャノンさんが着替えをして戻ってくる。


「ロックさん度重ねる無礼お許しください。未熟な私ですがご指導頂ければと思います」




 戻って来たシャノンさんはまるで別人のようになっていた。


「こちらこそよろしく」


「えっとこちらはラッキーさん? でしたっけ? よろしくお願いします。」




 ラッキーにも頭を下げているシャノンさん。


 まだ動きがぎこちないのはラッキーのあの魔力を直接受けたからだろう。


 ラッキーはシャノンさんの頭を肉球を押し付けグシャグシャと頭を撫でる。




「らっラッキー! だっ大丈夫なのか?」


『成長してるだろ』




 ドヤ顔で言ってくるができれば事前に言ってからやって欲しかった。 


 本当に心臓に悪い。




『それよりも直接触って確信したが、この子かなり強力な呪詛を受けているぞ』




「呪詛?」




『あぁ、ロックと戦っている時にも感情が高ぶった時に変な魔力が混ざっていたから今触ってみたが相当やばくてタチが悪い。周りから生命力を奪い取っていくタイプだな。そして最後にはこの子の命も危ない』




 もしかして呪詛のせいでシャノンにかかわる人間が死んでいったのだろうか。


 それならなんとかしてやりたい。




 ほっといたらシャノンはどんどん孤独になって死んでしまうなんて可哀想すぎる。




「呪詛は解除できそうなのか?」




『私には無理だな。こういう細かいのは向かない。でもロックならできると思うぞ』




「俺がか? 本当か? そんなのやったことがないぞ」


 基本強化をする方向は頑張って覚えてきていたが呪詛の払い方などはやったことがない。




『大丈夫だ。聖獣が仕えるくらい聖魔法が強いから余裕で退治できる。頭を借りるぞ』


「えっ?」




 ラッキーが俺の頭を丸かじりしてくる。


 うわっ涎がすごい。


 そして独特の臭いが……。




 だが頭の中に直接魔力のコントロールの仕方が流れ込んでくる。




 なるほど。加護を付ける手順の逆で力を入れてその後封じ込めれば良いのか。


 あとは回復と同じような感じで聖魔法で除去できると。




「ラッキーさんとロックさんって独特なコミュニケーションを取られるんですね。さっきの魔法しか見てなかったので怖い感じかと思いましたが信頼関係で結ばれているなんて素敵ですね」


 シャノンがなぜか感心したように言ってくる。




「いや、これは初めてのコミュニケーションの取り方だった。ラッキーありがとう助かった。ちなみに非常にわかりやすくて助かったけどこれって頭噛まないとダメなのか?」




『いや、頭に手を置いてもできるぞ』


「じゃあそうしてくれよ。涎がひどい」


『テヘッ』




 頭から涎だらけになったせいで変な匂いがする。


 次何かやるっていう時には絶対聞いてからやろう。




 ただやり方はわかった。さて、そうとわかればさっさと呪詛を払ってしまおう。


「シャノン、ラッキーが君の身体の中に呪詛がかかっていると言っているけど何か身に覚えはある?」




「えっ……」


 シャノンはエルフの里の近くで変なものが身体の中に入りそれからおかしくなったということだった。何か不吉なものを感じる。




「ラッキーがやり方は教えてくれて、俺も理解はできたけど危険はゼロじゃないと思う。あとは呪詛があるとわかっている以上別の解呪のできる人を探すっていう選択肢もある。シャノンはどうして欲しい?」




「私はぜひロックさんとラッキーさんのやり方で解呪して欲しいです」


 彼女の顔には一切の不安がなかった。


 まっすぐに俺たちを信頼してくれている。




 俺とラッキーは顔を見合わせる。


『大丈夫だ。あれだけの魔力コントロールができるロックなら余裕で解除できる。ただこれを埋め込んだのはかなりの使い手だからな。気をつけろ』




「ありがとう。なんとかしてみるよ」


 こんな可愛い子を泣かせた奴の思い通りにさせてたまるか。


 絶対に助けてみせる。


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ロック「ラッキーは偉いな。砂かけてさらっとフェローができて」

ラッキー「ここは俺の縄張りだからな」

ロック……えっ……縄張りの臭い消し?


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