第6話 ポンコツ風味のフェンリル?
「よしそれじゃあ早速脱出するか」
『そうだな。問題は私が脱出できるのかってことだが』
とりあえず入口まで行ってみてその結界というのがどんな感じなのかを見てみるしかない。
俺が歩いて行こうとするとラッキーが俺の目の前で伏せる。
『どうせ行くなら早い方がいい。私の背中に乗って』
「ありがとう。助かるよ」
ラッキーの背中は太陽のように暖かくいい匂いがしてふわふわでモフモフしていた。
「ラッキーの背中はすごく気持ちいいな。まるで小さな頃両親に抱きしめられた時のような安心感があるよ」
『ロックは甘えん坊だな。すぐに出口まで連れて行ってやるからゆっくりしてるといい』
俺はラッキーの首に腕をまわす。
ラッキーは疾風のような速さで走りだす。
階段へ向かう途中に倒された魔物の死体を発見した。
「ラッキー止まって」
『なんだ? 急いでここを出るんじゃないのか?』
「あぁそれでもいいが、このダンジョンの魔物は高く売れるんだ」
『もしかして……最初から私の身体が目当てだったのね?』
「ラッキー?」
『……なんでもない』
ラッキーは前足で頬を掻いてどこか気まずそうにしている。
「魔物の死体は結構高く売れたりするんだ。肉も美味しいしな。箱庭にちょっと回収して旅費にしよう」
『なに? 美味しいのか? それはぜひ食べたい』
俺がラッキーから降り魔物の死体に触り箱庭へと唱えると魔物死体は箱庭の中へ消えていった。これはかなり便利だ。
『おぉすごいな。勝手に箱庭に回収できるとはかなり便利だな。でも箱庭の中が死臭で満たされるのは勘弁して欲しいな。できれば水で洗い流せる場所とかも欲しい』
ラッキーはだいぶ具体的な提案をしてくれる。
どうやって広げればいいのかわからないが何か広げられる方法があるはずだ。
「ラッキーの背中の上からでも回収できるか確認したいんだけどいいか?」
『もちろんだ』
ラッキーの背中に乗り魔物の死体に足を乗せると魔物の死体が一気に弾け飛ぶ。
残っているのは壁に赤いシミだけだった。
『悪い。加減を間違った』
「加減を間違っただけで魔物の死体が吹っ飛ぶって……」
本当にじゃれつかれなくて良かった。
じゃれただけで即死だ。
俺がジト目でラッキーを見ていると少し慌てたように、
『大丈夫だ。任せろ次は上手くいく』
ラッキーが二度目の挑戦をすると今度は優しく触ったはずが圧縮されたように平らになり箱庭に回収されていった。
これではせっかくのお肉もペラペラになってしまう。
「ラッキー」
『おかしい。こんなはずじゃないのに』
「まぁでも回収できることがわかったし潰れてもいいから回収していくか」
『あぁそのうち上手くできるだろ』
ラッキーの背中にのり魔物を箱庭に回収していく。
最初は上手くいかなかったが段々と加減がわかってきたのか余裕がでてきた。
『ロックほらこれを見ろ。だいぶ成長したぞ! 私だってできるんだ。コツはなこうやって爪で触ると簡単に……』
ラッキーがそう言って魔物に触れると魔物はまたしても弾け飛んだ。
ラッキーの手には爆弾でもついているのだろうか。
『ワォォォォォォン』
ラッキーの悲しそうな声がダンジョン内に響き渡る。
「よしよし。それじゃあ入口へいくか。そこを右に曲がってくれ」
『ロックこっちは遠回りになるぞ?』
「あぁそうなんだけどな。魔物をいちいち倒すのもめんどくさいかと思って」
ラッキーを道案内していくとラッキーは少し驚いたようにいう。
『なるほど。かなりロックは優秀なんだな。これほど魔物の数が少ないなんて初めてだ』
俺たちは来た時の半分以下の時間で階段までやってきた。
ラッキーも強いが、魔物と戦わない方が早い。
どうせ戦ったらミンチ死体になるだけだし。
「どうだ? ここから出れそうか?」
ラッキーが階段のところまでくると何か壁のようなものがあり。ラッキーの肉球がむにゅっと壁に押し当てられ潰れてしまう。
『短いつき合いだったな。ロックここまでのようだ。お前に誘ってもらって私は嬉しかったぞ』
「いやいや、諦めるのはまだ早いだろ。ラッキー箱庭に入ってくれ」
ラッキーが箱庭に入り俺が階段に近づくと何か抵抗のようなものを感じたが邪魔をされるような感じではない。
「ラッキー大丈夫だ。出られるぞ」
ラッキーが箱庭から階段にでてくる。
『ロック……ありがとう。これで一緒に世界を見てまわれるな』
「よかったよ。それじゃあ……って外に出れた記念だ。ちょっと首輪を貸してくれ」
『いいけどそれは私のだからな。あげないからな。ロックの首にはダメだぞ』
「誰がつけるか。しかもでかすぎるわ! 俺には装備に加護を付けられるスキルがあってな。せっかく外へ行くんだから首輪に加護をつけてやるよ。これがあれば今までより身体能力が上がるはずだ」
『えぇーそんなこと言って。私はそう簡単に騙されないんだからね』
俺はラッキーの首輪に加護をつけてやり、また首に付けてやる。
これで俺が側にいる間は基礎力があがるはずだ。
『なんだこれー! すごく身体が軽いし動きのキレが増してる』
「それは良かった。それじゃあ後はさっさと街へ戻るか」
俺とラッキーは風を切りながら颯爽とダンジョンを駆け抜けていった。
途中魔物の回収もしたが、ラッキーが加減をわからずに弾け飛ばしまた吠えていたのは言うまでもない。
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