第9話 不器用人間と要領良い器用な人間

昨日 結局 幼馴染みあいつのおふくろさんからの連絡は無かった。

凄く不安だ。

いや、本当は、高千穂に居る時から、不安を感じていたんだ。

幼馴染みあいつが俺の待ち合わせの遅刻程度の事で、そんなに怒る筈が無いし、スマホ中毒の幼馴染みあいつが、ずっとスマホの電源を切り続ける訳が無いんだ。

何しろ、沢山のスマホやタブレット端末を持ち歩いている程、何が有ってもスマホやタブレット端末でインターネットが利用出来る環境にしている程のスマホ中毒者だから。

自分で「俺 スマホ中毒だから」と言い切る様な奴が、全部のスマホやタブレット端末の電源を切り続けるって、どう考えても変だろう?




「おはようございます」


「あら、おはよう。朝から来てくれたんだ?」


おばさんが、幼馴染みあいつのおふくろさんが、優しい言葉を掛けてくれる。


「あいつから連絡は・・・・・・まだ無いですか?」


「そうなのよ。どうしたのかしらね?まあ、やっと苦労して入社が決まった会社への出社の日までには、きっと帰ってくるでしょう」


「はぁ・・・・・・ そうですよね?」

おばさんは、凄く不安そうな表情をしながら、そんなに心配していない様な言葉を・・・・・・


「連絡が入ったら、必ず伝えるから安心してね?」


「はい!お願いします!」


幼馴染みあいつ 明日 初出社の日なのに、まだ帰らないって変だ。

普通の携帯電話会社への就職に失敗して、それでも格安携帯電話会社の社員募集に最後の望みを繋いで、やっと遅くなって決めた就職先なのに・・・・・・

そんな苦労して採用された所を、初出社の日に自宅にさえ帰らないって、無いよな。

きっと今日中には帰るよな。


俺は、親がやってる店の手伝いをしながら、仕事を覚えて、跡継ぎになる事になっている。

俺が望んだ事じゃない。だから、まだアルバイト感覚で良いって言われてて、仕事に出るのは、明後日で良い事になってる。

地元民なら誰でも知っているどころか、テレビでたまに紹介される程の知名度の店なので、経営も上手く行ってて、小遣いは会社勤めのサラリーマン以上に貰ってる。

俺 本当は幼馴染みあいつと仕事がしたかった。

家業を継ぐにしても、幼馴染みあいつが一緒に働いてくれたら、安心なのにって思ってた。


幼馴染みあいつが志望の携帯電話会社への就職に失敗したと聞いた時、正直 嬉しかった。

他に就職活動をしていない事を知ってたから、俺と一緒に親父の所の仕事を手伝う様に、言おうと思ってた。

俺が失敗しても、いつも不機嫌になりながらも、尻拭いしてくれてきた幼馴染みあいつ

親父もそれを知っているから、幼馴染みあいつが一緒に手伝うって言えば、絶対に反対はしなかっただろうと思う。


幼馴染みあいつ 凄く天才的なんだよね。

俺って要領が悪い。人より覚えが悪いんだ。

でも、幼馴染みあいつは、俺より後に始めても、いつの間にか要領を覚えて、俺より上手く出来る様になってる。

それでいて、俺は幼馴染みあいつより上手く出来ない事が嫌で、幼馴染みあいつより出来る振りをするのに、幼馴染みあいつ傲らおごらない。自慢しない。

それでいて、解らないからと聞くと優しく教えてくれる。


幼馴染みあいつが居なくても、親の仕事を継いで、上手くやって行けるのかな?


親父がたまに言う。

「お前は良い幼馴染みが居たんだから、その縁を大事にしろよ」

と・・・・・・

跡を継ぐ話の時にも、幼馴染みあいつの話が出る。

きっと、親父は幼馴染みあいつが俺と一緒に働いてくれるって思ってるんだ。

俺独りじゃ頼り無くても、幼馴染みあいつが一緒なら大丈夫だって思ってるんだ。


幼馴染みあいつは、俺と違って、面倒見も良いから・・・・・・


幼馴染みあいつは、俺と違って、他人ひとに好かれる人間だから・・・・・・



俺は決めた。


もし、明日中に幼馴染みあいつが帰って来なかったら、俺は宮崎まで、幼馴染みあいつを探しに行く。

絶対に俺が見付けてやる!


そして・・・・・・

頼むんだ。

『俺と一緒に親父の所で働いてくれ』

って、土下座をしてでも頼むんだ。





----------<小説 ここまで>----------

この小説は、「異世界『ながらスマホ』事情」と言うタイトルの小説の派生の物語です。

宜しけれ「異世界『ながらスマホ』事情」も読んでお楽しみ下さい。

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