第105話 愛しく想ふ1
『――――♪ ――――♪ ――♪』
PCの画面である映像が流れている。激しくカメラが切り替わりながらそれでいてそこで踊っている少女たちは皆が見目麗しく輝いている。12人の少女が笑顔を振りまき綺麗でだがそこか可愛らしさが残った表情で歌い踊っている。
手に持つサイリウムを必死に振い、先日のライブで必死に応援していた記憶が蘇りまた額に汗が流れていく。ライブは本当に良いものだ。会場と観客、そしてアイドル。それらが混ざり合いあの素晴らしい舞台を作り上げていたのは間違いないし、その中に自分がいたという事実に興奮を覚える。
「新曲もよかった。今日の0時に配信開始みたいだし、それは当然買うとして問題はCDだな」
昨今の時代の流れを考えればまずCDは売れない。なんせダウンロードならば値段はCDの4分の1程度の値段。しかもCDはかさばるというおまけつき。こんなの誰が買うんだと皆が思うだろう。
だがファンは買う。当然ジャケットなんかをコレクションしたいという気持ちはあるが本命はそれではない。
「ひまりんと会うためにとりあえず100枚くらいは買わないとだしな」
そう握手券だ。元々は別のアイドルグループが始めた商法だがこれがとにかく流行り、今ではどのアイドルグループでも真似をしている。それは
「発売はいつだ? 今日の番組で発表したばかりだし早ければすぐ出るはずだけど」
そう思いPCで歌番組の配信を見ている。同時視聴者数も10万人を超えておりその数字だけで古参ファンの自分としては鼻が高くなる。今回の新曲は自分の最推しであるひまりんがセンターを務めており自然に鼻息も荒くなっていく。するとライブが終わり
『ここで私から実は大事な発表があります。今回の新曲【星織】を最後に
「ッ! 嘘……だろ?」
サイリウムを投げ捨て思わずモニターを手でつかみ顔を近づける。
『メンバーとはたくさん話し合いをしました。でもどうしても一度自分の力だけでチャレンジしたいという気持ちがあり、今後は一人でどこまで頑張れるか挑戦したいと思っています。ファンのみんなには悲しい思いをさせてしまうかもしれませんが今後の新しい私を応援してくれると嬉しいです』
画面の中でそう涙を流しながら話すひまりん。徐々に過呼吸になっていく、視界が暗く明滅し前が見えなくなってきた。
『はい。日葵さんからの発表でした。そしてなんと! 更に重大発表です。こちら!
画面の中の声が遠く聞こえていく。どうしてだ。ここまで頑張ったのに何で今更一人でやろうとする? このままでいいだろう! 他のアイドルみたいに売れない女優とかになるつもりか? その行く先なんて悲惨なものだ。
「はぁ……はぁ……心配だ。ひまりん大丈夫なのか?」
ひまりんはメンバーの中で特に元気がよくなんにでもチャレンジするタイプのアイドルだ。たまに芸人顔負けのリアクションなんかもしており、確かにアイドル以外でも売れる可能性はあるだろう。でも……。
「――心配だ。心配だ」
ーーーー
新章になります。
引き続きよろしくお願いします。
過去編ですが、せっかくGWなので予定より早く公開します。
ここからまともな戦闘シーンに入るのでよろしければぜひ!
https://kakuyomu.jp/works/16816700428079810318/episodes/16816927863075673706
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