第11話 日本人学校のハーフ君
日本人学校で私のクラスに新しく加わった生徒がいる。
彼の名前はジェシー。アメリカ人の父親を持ったハーフの男の子。
彼は日本語が少し苦手だったけど、積極的に授業へ参加していた。
陽気で堂々としている彼はいつも笑わせてくれて、場の雰囲気を明るくしてくれる大事な存在へとなっていた。
家族で日本人学校に到着し、いつも通り車から降りる。
すると近くでバイク音が聞こえた。サングラスをかけた親子が遠くから見える。
ジェシー君だ……。
後部座席に座っていたジェシー君は被っていたヘルメットを父親に預け、彼一人が入口へと入っていく。
私は自然と彼を目で追うようになっていた。
私とジェシー君は仲が良かった。たった三名しかいないクラスで私は唯一の女子だったからか、彼は私に対して特別優しかった。
帰宅途中の車で、父親がジェシー君の話をし始める。
「ジェシー君、いい子やな!話しやすいし、くるみとも仲良しやん!」
「こいつジェシーとばっか話しとるで!」
「お?さては、恋の予感か~?くるみもやるなぁ~!ヒューヒュー!」
……やばい、始まった。
二番目の兄は、昔から私をいじるのが好きだった。そして父は、恋愛トーク好きでいつも過剰に盛り上げようとする。このノリを今すぐ止めないと嫌な予感がする。
「別にそんなことないもん!普通に仲良くしてるだけやし!」
二番目の兄と父親のにやけ顔が収まらない中、私は必死に白を切る。
私は、いまだに忘れていない。
海外への引っ越し前に、兄が私の好きな人を本人にばらしたことを。(第一話)
それに兄は変に勘が鋭い。
二度目は絶対に回避しなければ……。
ノース日本語補習校で生徒同士の恋愛は、聞いたことがなかった。
もしここで噂が広まったら、今後の日本人学校生活に影響が出る。居づらくなってしまうのは嫌だ。それだけはなんとしても避けないと……。
次の土曜日、いつも通り日本人学校に着き授業が始まる。休み時間になった途端、兄が教室に入ってきた。
あの嬉しそうな顔。確実に何か企んでいる……!
「おい、ジェシー!面白い話あるんだけど!」
ジェシー君が振り向いた瞬間、私はダッシュで教室から逃げた。
お願い!お願いだから何も言わないで!!
心の中で必死に願いながら、休み時間を過ごした。全くゆっくりできず、ただただ心臓が嫌な意味でドキドキしていた。
休み時間が終わった。私はジェシー君が何も聞かされていないことを願い、恐る恐る教室に入っていく。
授業中、私はそわそわしていて落ち着けなかった。ジェシー君の様子をさりげなく確認する。するとジェシー君がいつもと様子が違う私に気づき、話しかけてきた。
「くるみ、どうかした?」
「え?いや……。さっきお兄ちゃん来てたけど、何か言われた……?」
「あー。なんかよく分からないけどおもんなって言って、あの後すぐ教室出てったよ。」
……勝った。私はお兄ちゃんに勝った……!ついに奴の思い通りにさせずに済んだんだ……!やった……!!
安堵で笑みがついこぼれてしまった。ジェシー君は不思議そうに私を見ていたが、私は気にすることなく満足感に浸っていた。
それからは、誰にもばれないようにジェシー君と上手く関係を保った。
正直、私と話していて彼が照れる姿を何度か見かけていた。なんとなく私たちが両想いであることを感じ取っていたが、私は今の関係がベストだと思い、そのまま気持ちを伝えることはなかった。
―――
小学生で兄の悪事をすぐさま予測し、対処した私……すごいと思いません?笑
私も勘が鋭い方だと思うんですよね。
あの後、父は相変わらず話を振ってきましたが、兄は完全に飽きてました。
ばれなくてよかった……。笑
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます