第10話 理想は違えど
小学五年生の真冬、現地校で起きた出来事。
休み時間に入り、教室を移動する。
横を振り向くと、学年で一番評判の悪い男子三人組がいた。
先陣を切って歩いていたのは、少し眉毛が濃くて目がきりっとした、ぽっちゃりの強面ボーイ。名前は、マケイブ。
「Hey, Kurumi! You wanna go out with me?」
「Umm......No?」
「Oh, okay!」
今サラッと告白した?
付き合いたいかと聞かれて、反射的に断る。
マケイブは全く落ち込んでおらず、馬鹿にするわけでもなく、けろっとした顔で通り過ぎていく。
「Hey, Lesly! You wanna go out with me?」
「Shut up! McCabe! No way! I ain't going out with you!」
レズリーがマケイブに向かって怒りを表す。右手を顔まで上げて、左耳前で一スナップ。右耳前でもう一スナップ。そのまま手の平をくるっと回して、マケイブの顔面に手を勢いよく突き出す。
決まった……。気性が荒い海外の人がよくするジェスチャー。それ以上、話しかけないで!ってやつ。
「Sheesh! Dude, calm down will ya?」
あー、マケイブは彼女欲しさで手当たりしだい聞いてたのね。
それにしてもレズリーの断り方きっつ……。マケイブ引いてるじゃん。
マケイブはちょっと気を悪くするも、次々と別の女の子に声をかけていく。
私や周りの友達はすっかり飽きれて、教室へと入っていった。
下校時間になり、帰りの準備を進める。
あれからマケイブどうなったんだろう。
さすがに諦めたかな……。
噂が広がるのは一瞬だった。
まさか成功するなんて……!
マケイブの彼女は意外にも大人しくて可愛らしい女の子だった。
評判が悪いのを知っていたはずなのに、なぜ承諾したのか不思議だった。
付き合ったと同時にすぐ別れるだろうと噂されていたのだが、意外にも半年以上続いた。
二人の様子を見ていると、マケイブが荷物を持ってあげたり、ドアを開けてあげたりなど、ちゃんとエスコートをしていた。
お互い一途で大事にしていて、とても幸せそうだった。
人は見かけで判断しちゃいけないってこういうことなのかな……。
始まりはあまり自慢できるものではなかったし、結局終わってしまったけど、いい関係性だったと思う。
別れてからも、二人は友達として仲良くしていた。
―――
ain't は、辞書にないアメリカ独自の言葉です。指導係の先生としては使うなと言いますが、実際は世代問わず使用されてます。
レズリーがしたジェスチャー面白いですよね!子どもならではの表現方法かと笑
理想と現実が違うのはよくある話ですけど、たまに判断基準が分からなくなります……。
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