第9話 親友への遠慮

小学五年生の時に現地校でできた私の親友、マイカ。


マイカは、成績優秀で真面目。親は教会の先生として勤めるなど、しっかりとした家庭で育った明るく優しい女の子だった。


いつものように一緒に授業を受ける。

自由時間が設けられ、ある男の子が私たちに話しかけてきた。


彼の名前はサニー。

誰からも愛され、冗談好きで陽気な人。

そんな彼のことが、私は密かに好きだった。



「くるみ~、何やってんだよ。間違えてんじゃん。先生が言ってたのは、こっちだろ~?ま、嘘だけどさ!」



いつものようにちょっかいを出して笑い合う。

私たちは、すごく仲のいい友達だった。



ある日、マイカの家に泊まった。

いつものように楽しくしゃべって、トランポリンをして、映画を見た。すごく充実した時間を一緒に過ごした。


就寝時間が近づき、電気を消してマイカのベッドに並んで寝転ぶ。

するとマイカが恋愛トークをし始めた。



「ねぇ、くるみ。私……実は、好きな人がいるんだ。」


「え!そうなの!?誰々!?」



その瞬間、嫌な予感がした。



「私が好きな人、サニーなんだ。」



まさかの予感的中。



「そうなんだ……。いつか気持ち伝えられるといいね!」



私もサニーが好きだ。

だが、付き合いたいとは思わなかった。


いつかは日本に帰る。上手くいってもいずれ別れなきゃいけない。


人一倍寂しがりやの私は、終わりの見える恋愛をしたくなかった。

辛い思いをするぐらいなら、マイカを応援したい。そう思った。


少し間が空いて、彼女の表情が曇る。



「実は、くるみに言わなきゃいけないことがあるの。」


「うん?どうしたの?」


「実はサニーがくるみのことを好きで、付き合えるか聞いてほしいって言われたんだ。」


「え……?」



嬉しい気持ちと同時に微妙な空気が流れる。



「でもね、断っておいた。くるみは、サニーのこと友達として好きだから付き合えないよって。よかったよね?」



衝撃的だった。

まさか勝手に断られているとは思わなかった。


謝らない彼女を、呆然とした顔で見つめる。

電気が消えていてよかった。動揺が隠せない。



だが、マイカを責める気はなかった。

なんとなくだが、声のトーンやうっすら見えた表情で申し訳なさが伝わったからだ。それにその言葉を聞いた彼女も辛かったはず。

私は親友であるマイカを優先して、彼女に優しく声をかけた。



「そうだったんだ……全然いいよ、気にしないで。教えてくれてありがとうね。私は、マイカのこと応援してるよ。」



それからというもの、彼女はサニーに告白をしなかった。

慎重すぎて勇気が出なかったのか、私に申し訳なさを感じて行動に移せなかったのか。理由は分からない。


私は一度もそのことに触れようとしなかった。


―――

マイカとは仲良しですが、勝手に断ったことを知って少しはムッとしましたよ。でも、怒るきにはなれませんでしたね……。あれから期間が空いて、サニーは別の人から告白を受け、彼女ができていました。小学生の恋愛といえど、なかなか上手くいかないものですね。

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