第8話 謎の手紙とガキ大将の先輩

家の住所は変わることなく、私は小学五年生から別の現地校に転校した。


家から五十分ほど離れた学校だが、新しい仲間にも恵まれ、楽しい毎日を過ごしていく。


ある日、自分のロッカーを開けると手紙が落ちてきた。

どうやら隙間から入れたようだ。



「Kurumi, I love you. Let's go out.」



付き合おうって書いてあるけどこの人、肝心の名前がないぞ……。

誰が入れたんだろ……?



返事もできないし、本人も名乗り出てこない。

親友にも話したがどうしようもないので、私は忘れることにした。



音楽、体育、図書、美術、図工など、曜日ごとに各クラスどの授業を受けるか決まっていた。

この学校は五から七年生が対象で、それぞれ三組まである。そして主要科目以外は三つの学年が混ざり、先輩後輩が一緒に授業を受ける機会が設けられている。


もうすぐ体育の授業が始まる。

今日は五年一組、六年二組、七年三組が一緒に授業を受ける日。


体育館に向かうと、いつもより賑わっていた。



「Hey, Kurumi!」



あぁ、この声はガキ大将の先輩、ケイシーだ。


大柄の彼が堂々と近づいてき、他の六年生も近づいてくる。



「You two are going out, right?」



茶化すように女の先輩が、「二人付き合うんでしょ?」と言ってきた。


突然出来事に、全く状況が読み込めない。



「Yeah! Kurumi and I can have a good relationship for sure.」



先輩が堂々と「あぁ。くるみと俺だったら絶対仲良くできる。」と答える。



それを横にいた友達がハッとした顔をして、小声で教えてくれる。



「Hey, Kurumi. Isn't it the letter you were talking about!?」



「ねぇ、くるみ。この前話してた手紙のことじゃない!?」と友達の言葉で思い出した。



あいつか……!!



友達にケイシーはやめた方がいいと提案されたが、それ以前に私は誰とも付き合う気がなかった。



「Umm...... Sorry.」



私はそう答えて、サッとその場を離れた。


周りの笑い声が聞こえてくる。

ケイシーの顔が見られない。



どうしてあんなに自信満々なの。私が変に気遣うじゃん……。



少し申し訳なさを感じた私だったが、次の日ばったり廊下でケイシーと目が合う。


うろたえる私を見て、彼が近づいてくる。



「It's okay. Don't worry about it Japanese girl! You're still my best buddy!」



「大丈夫だから心配するな日本女子!それでもお前は最高の友達だろ!」と言って、彼は私の肩をぐっと寄せてポンポンと二回した。



―――

落ち込んでるかと思いきや、本当に平気そうでした。むしろ元気でした。

やっぱり軽く好きとか興味がわいた時点で、すぐ彼女にしようとする傾向があるかもしれませんね。

私のアメリカの友達には慎重タイプもいましたけど、割合で言うと日本よりもかなり少ないと思います。

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