番外編 三歳児に対する敗北感
アメリカでの生活に慣れ、私はもうすぐ小学5年生になる。
父の勤務先に新しい日本人が来たとのことで、その家族へ挨拶をしに行く。
家へお邪魔すると、そこにはおかっぱ頭の小さい女の子がいた。
「名前なんて言うの?何歳……?」
すると三本指を出して、元気よく返事をしてくれた。
「みゆちゃん!さんしゃい!」
……可愛すぎた。
それから私は何度か家へ遊びに行き、一緒によくおままごとをするようになった。
――それから三ヶ月後
今日は、みゆちゃんとみゆちゃんママ、私と母の四人でランチに行く。
そこで聞いた話によると、みゆちゃんは現地の保育園を嫌がり、よく泣き喚いていた。
だがある日を境に、少しずつ慣れていったそうだ。
美味しいランチを食べ終え、会計も済んだため、席を立とうとする。
ドアに向かって歩いていると、みゆちゃんが突然きゃっきゃと騒ぎ始めた。
私はびっくりして勢いよく振り返ると、みゆちゃんが隣の男の子を指差して、嬉しそうにはしゃいでいた。
「ボーイフレン!ボーイフレンッ!」
え、まさかボーイフレンド……?
家族といた男の子は一瞬だけ手を振り、すぐ反対を向いて席に着いた。
そして、みゆちゃんママは恥ずかしそうに娘の手を引き外へ連れ出す。
「ごめんね、なんか最近家帰ってもよく言うんだけど、さっきの男の子と同じ保育園みたいでね……」
この時、三歳児のみゆちゃんが彼氏に会って騒いでいたと確信した。
私は黙ってみゆちゃんを見つめた。
これが敗北感というやつか……。
―――
この日から、みゆちゃんを見る目が少し変わりましたね……。
でも今思うと彼氏さんは塩対応だったし、みゆちゃんがただ片想いしてただけとか……?
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