ジューンブライド(遺書)
高月まどか
第1話
お父さん、お母さん、今日まで20年間ありがとうございました。
皆様に祝福されながらこうして安らかにお嫁に行けるのも、お二人のおかげです。
娘として、今の私の気持ちをお届けしたいと思います。
エピソードや心境など思い返せば、私は昔からおてんばで、怪我でもするんじゃないかとよく心配をかけていましたね。
2人は私の挑戦したいことをなんでも認めてくれて、芸能事務所の通信教育で、歌や演技をさせてもらったり、ダンススクールに通わせてもらったりしました。毎日とても楽しく過ごすことができました。
活発でしたが、そのわりに寝つきが悪い子でした。そんな私は毎晩の子守唄を歌ってもらう時間がすごく好きでした。
あまり口にしていませんでしたが、実は今でもあまり眠れないんです。
これから少し重い話になってしまいますが、大切なことなので書かせてもらいます。
憧れのミッション系大学で、好きな作曲を学ばせてもらっているのに漠然とした不安感があり、大学の相談室に行った話を覚えていますか?
その時カウンセラーに「あなたは病気じゃないんだから」と言われたこと、私は今でも忘れません。
助けを求めたのに突き放されたような感じがして、とてもショックでした。
大学で出会った男の子はわたしのことを盗撮したり後をつけたり、女の子の友達は私の化粧品を盗ったり文房具を壊したりします。
カウンセラーに話ができなくなって、「相談室に来たのに話さないの?」と言われました。
病院にも行ってみたかったのですが、病気じゃないなら行ってもしょうがないです。
でも、病気じゃないなら私のこのつらさはいったいなんなのでしょうか?
苦しくて涙が出てきてまいにち泣いていますが、なぜ私はわけもなくこんなに苦しいのでしょうか?
誰かに説明して欲しかった
眠れない、というのがどれだけつらいかみなさんはわかりますか?ベッドの中で、今日されたことや、自分がしてしまった失敗や、今までのつらかったこと、悲しかったことをたくさん考えてしまう。うとうとし始めると空が明るくなってきて、また1日が始まる…いつわたしは休息できるのか?こんなのが永遠に続くのか?
夜が長いと頭がおかしくなるんです。
でももういいんです
わたしは学校にある、綺麗なステンドグラスのある教会が大好きです。
神様への道は、全ての人に開かれていて全ての人を受け入れてくれると学校の聖書の時間に習いました。
教会で聖書を読んだり作曲したりするのがわたしの休息の時間でした。
神様は私を助けてくれました。
神様のことを考えると楽な気持ちになって、いつか素晴らしい神様のもとへ行きたいと思うようになりました。
天国では、苦しみから解き放たれてみんな自由になれるそうです。
きっと神様も「頑張り屋さんの君を愛しているよ、もうこっちに来てもいいんだよ」とゆるしてくれると思います。
今日、私は神に召されて神様のお嫁さんになりますが、いつまでも2人の娘であることに変わりはありません。
大好きな2人の娘に生まれて、本当に良かったと思います。
誰のせいでもなく、私自身の望みで先立つ幸福をお赦しください。
本当に感謝しています。
いままでありがとうございました。
ジューンブライド(遺書) 高月まどか @qmt4dk
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