怒りと闇

しかし、あらゆるヒーローの光を吸収したべリアロスの戦闘力は

ダークネス係数最大を誇る塩河迫しおかわせまる・・・ウルトライダーファイナルを持ってしても

骨が砕ける様な痛々しい打撃音が響く殴り合いと化すほどに

熾烈を極めた。体重を支える地面も一撃を放つ毎にひび割れて

衝撃波で周辺は何度も空気が弾けて爆ぜる。

10分、20分、30分。あっという間に過ぎていく時間の中で

互いのダークネスをぶつけ合う。


対峙して初めて分かる相手の感情。

営業マンとして体得したスキルである・・・

本来は角が立たない様に、相手の気持ちを汲む為に身に着けたそれは

残酷なまでにオリジナル怪人の負の感情を読み取っていた。

敵の攻撃は苛烈でありながら悲しさを纏っているように感じた。


「力を社会の不満の捌け口にしているのをヒーローとは呼ばない!」


確かにそうである。だが、こういう事が無くても

社会には不満の一つや二つ抱えてる人は居るだろう。


「俺が全て破壊してやる!この世界を変える!」


孤独な考え方・・・マジメ過ぎるが故の二元論。

だが、孤独ならだれかに心を開き手を取り合わないといけないのだ。


拳、蹴り、取っ組み合い・・・もはや小細工の必要のない

泥臭い戦い。本部ではデータを取る手も止まってしまっている。


「どぉりゃぁぁ!」


もはや最強のダークヒーローも傷だらけ。

強烈な後ろ回し蹴りで距離を取るウルトライダーファイナル。


「我々は明日を夢見る為に今を戦っています。

 すべてを破壊しても・・・何も変わりません!」


傷つく度に優しさを忘れなかった。いや、悪の組織そのものを背負った男は

ベルトからパワーを放出し、脚へと集中させる。


これは社会で感じた不条理。負の感情・・・

可能性の光とはかけ離れた怒りと闇の一撃。


「ダークネス・ストラァイク!」

空高く舞い上がった塩河はべリアロス目掛けて

強烈なエネルギーを帯びた蹴りを放った。



「ソレヲマッテイタ」


「!?」


べリアロスの核が解き放たれ、それが可能性の光を喰らう

怒りと闇の結晶に変換されたモノである事を知ると

様々な修羅場を経験した塩河は産まれて初めて絶望した。

コイツは人間性など理解しない悪意の結晶体なのだと・・・


可能性も絶望も食い荒らす害獣にダークネス・ストライクの一撃も吸収され

巨大な火柱の後に周辺は大爆発に包まれた。

これは爆発担保保障ではないマジの爆発である。

最強のダークヒーロー、ウルトライダーファイナルは

重傷のまま孤立してしまう・・・

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