始まり

 「おはよう、兄さん」

 「……」

 「今日から高校生になったよ」

 「……」


 一人の少年が誰かに話しかけても答えがかえってこない。それもそのはずだ。少年は仏壇のところに飾られている写真たてに話しかけているんだから。


 「今日から兄さんが通っていた高校にいくんだ。そして……」

 『みなと。そろそろ、行くわよ』

 「今行く~」


 母親に呼ばれて少年はもう一度、写真たてを見た。

 「じゃあ、行ってきます、兄さん」


 少年は、その場から離れて母親のもとに向かった。





 「湊。先に自分のクラスを確認してきたら? 早めに着いたことだし」

 「そうする。母さんはここで待ってる?」

 「そうね……まだ、時間もあるしここにいるわ。見てきたらこっちに戻って来て」

 「了解」


 俺は母さんの車から出て、校舎に向かって歩き始めた。向かった場所は体育館だ。事前にクラス表は体育館の入口前あたりにあると聞いていたし、そこで新入生の受付もあると聞いていた。


 そー言えば、自己紹介がまだだった。

 俺の名前は霧島きりしま湊。今日から崎森碧山さきもりあおやま高校に通う一年だ。勉強はまぁ、自分で言うのもなんだができる方だと思う。普通よりは少し上だと思う。性格は、優しいよね~とよく言われる。自分じゃあ、よく分からない。


 「あれかな?」


 体育館に向かって歩いていたらそれらしいのもを発見した。それを目指して歩いた行くとやっぱりクラス表と今日の日程が書かれたものがあった。


 「えーと、俺は……」

 「二組だよ」

 「!」

 

 突然の後ろからの声に俺は驚いた。驚いて転ぶなんてしないけど、誰が声をかけたのか気になって後ろを見るとそこには俺の幼なじみの凪沙なぎさがいたんだ。

 そー言えば、なぎさも同じ学校だったなぁ~と思い出した。

 思い出したことは黙って凪沙に挨拶をする俺。


 「凪沙かぁ~。驚かすなよ」

 「ごめん、ごめんね。湊の姿が見えたからつい、ね」

 「ふ~ん。それよりも同じクラスなんだなぁ」

 「そう。早めに来て確認したから間違いないよ。二組で一緒のクラス」

 「そっか。また、よろしくな、凪沙」

 「こちらこそ」


 俺と幼なじみの高城たかぎ凪沙。幼稚園からずっと一緒の腐れ縁だなぁ、これは。ショートカットで小柄の凪沙は結構、男子にモテるんだよなぁ~これが。

 見た目が可愛いとかなんかで。あまり詳しくないが、何回か告白されたが断っているみたいだ。理由は知らないが。でも、性格は優しいからモテるのも分かる気がするけど。


 「湊。ネクタイ、似合うね」

 「そうか? 自分じゃあ分からないけど」

 「湊のお母さんは何も言わなかったの?」

 「……別に。もしかしたら俺が聞いていなかったかも知れんけど」

 「そーなの」

 「凪沙はスカートになるんだなぁ」

 「そうだね。中学じゃあ、ジャージだったからね。制服は行事の時くらいしか着なかったし」

 「うんうん。そー言えば、凪沙の母さんは?」

 「そろそろ、トイレから戻って来ると思う」

 「戻って来たら、まだ時間があるからうちの母さんのところに行こう」

 「そうね」


 俺と凪沙はその場で少し話していたら凪沙の母さんが戻ってきたので、一緒に移動することにして、時間がくるまで話し込んでは入学式に間に合うように移動をした。

 






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