大陸統一へ向けて
三国を同時に攻める。
この作戦は、あまりにも無謀で……でも、成功したらカディ様の名前は、間違いなく歴史に残る。
私は、カディ様と向かい合っていた。
「ラプンツェル、無謀だと思うか?」
「…………」
「正直に言え」
「……はい。やはり、無謀かと」
「はっはっは。やはりそう思うか」
ここは、カディ様の天幕。
作戦会議が終わり、私だけ残るように言われたのだ。イカリオス隊長が反対するかと思ったけど、意外にも何も言わず、「飲みすぎないように見張っておけ」なんて……ふふ、認めてくれたのかな?
ライ君は、私のことチラチラ見てたけど……あとでお土産渡そうかな。
「正直、無謀だとは思う。だが、これしかないと思うのも事実。時間をかければ三国を征服することは可能だろうが……一年という期間を設けた以上、この作戦しかあるまいよ」
「ま、まさか。こんな無謀な策を取るのは、自身が決めた一年という期間を守るため……?」
「ああ。俺は、自分が言ったことは必ず実行する」
さすがに呆れた。まるで、子供みたい……。
カディ様は、ワインを飲み欲す。
「ラプンツェル」
「は、はい」
「この戦いが終わったら、どうしたい?」
「え?」
「間違いなく、お前は手柄を立てる。望むなら爵位に領地、大金をやろう。何か欲しいものはあるか?」
「そんな……私は、命があるだけでいっぱいです。本来なら、ラグナ帝国軍に歯向かった敵兵。そのまま処刑もあり得ました。でも、カディ様は、私にチャンスをくれた……それだけで」
「ふむ。まぁいい……考える時間はある」
カディ様はおかわりを注ごうとしたが、私はワインボトルをサッと取る。
「駄目です。飲み過ぎないように見張っていろと、イカリオス隊長に言われたので」
「くはははは! いうようになったではないか」
「あの、その代わりといっては何ですが……お茶はいかがです?」
「茶?」
「はい。私がラスタリア王国で買った、高級茶なのですが」
「ほぉ……いただこうか」
私は、部屋にあった茶器でお茶を淹れる。
薬草茶……すっきりした味わいの物を選んだ。
カディ様は、ティーカップを持ち、匂いを嗅ぐ。
「ふむ、悪くないな……ん、味もいい」
「よかったぁ」
カディ様、満足したみたい。
私も自分のを飲む。ん、ちょっと渋いかも……でも、おいしい。
「ラプンツェル。お前は茶を淹れるのも上手いな」
「あ、ありがとうございます」
「それに、これはいい味だ……ふぅ、眠気を誘うのか? 実にいい気分だ」
「リラックス効果もありますので……殿下、今日はもうお休みください」
「ああ、そうさせてもらおう。ラプンツェル、肩を貸してくれないか?」
「はい」
私は立ち上がり、カディ様の元へ。
カディ様は立ち上がり、私を見下ろした。
「小さいな……だが、美しい」
「え、あの……あ、ありがとうございます」
「綺麗な髪だ。俺と同じ銀色なのに、お前のはまるで、月の女神のような……」
「か、カディ様!?」
カディ様は、私の髪をつまみ、キスをした。
私は一気に赤くなる───は、恥ずかしい!!
すると、天幕に入ってきたイカリオス隊長が、カディ様の腕を掴んだ。
「おいカドゥケウス。そこまでにしておけ」
「ん……ああ、イカリオス」
「まったく、この酔っぱらいめ……ラプンツェル、あとは任せろ」
「あ、ありがとうございます」
「ほら、しっかり立て!!」
イカリオス隊長は、カディ様を連れていった。
残された私はカップやグラスを片付ける。
「手伝う」
「きゃっ!? わわっ」
「っと……どんくさいな」
いつの間にか背後にいたライ君が、私が落としかけたカップを掴んだ。
そのまま、ライ君の胸に飛び込むような形になってしまう。
「ご、ごめんねライ君。大丈夫?」
「───ッ!! だ、大丈夫」
ライ君を見上げるような形になってしまい、ライ君はそっぽ向いた。
ああ、悪いことしちゃった。離れないと。
「あ……」
「っと。ありがとう、カップ預かるね」
「……ん」
なんだか残念そうに見えるの、気のせいかな?
私はグラスとカップをしまい、ライ君に言う。
「ライ君、ラスタリア王国でお土産買ってきたの。あとで私の天幕に来てくれる?」
「う、うん……ありがとう」
「ふふ、いいの」
ライ君、なんだか可愛いわね。
弟みたいなんて言ったら、怒るかな?
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