少数の人間にのみ発現する超常的な能力、「異能」のコンテストにまつわる、さまざまな声を集めた物語。
いわゆる「異能」そのものをメタ的に扱った、というか、「異能のある社会」を描いたショートショートです。
実況と解説の掛け合いを皮切りに、インタビューの書き起こしやアンケート結果など、語り手に加えてその形式までもが変わっていくところが特徴的。
この軽妙さに自然と釣り込まれてしまうというか、「少なくとも重厚なストーリーものではない」とすぐにわかるところが非常に巧みです。
若干ネタバレになってしまいますが、絶妙に予想を裏切ってくる物語の広がり方が大好き。
タイトルと冒頭の一章だけ読んだ時点では、「異能グランプリ」と呼ばれる大会の様子そのものを描いたお話なのかと思ってしまうのですけれど、さにあらず。
思わぬ方向へと物語の焦点が動いてゆき、さて一体どこへ向かうのかと惹きつけられるうちに、いつしか連れ出されていた思わぬ帰着点。その心地よさが嬉しい、まとまりの良い見事な小品でした。