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「美羽、」
懐かしくて愛おしい声が聞こえて、目を開くとあなたがいました。
私は驚きと嬉しさでいっぱいになり、声を出すこともできませんでした。沸き上がる感情をどう伝えればいいのか、どう表現したらいいのか、わからなかったのです。
私がそうしている間も、あなたは私を見つめていました。それからまた私を呼びました。
「美羽」
そうして少しだけ困ったように、けれど優しくほほえむあなたの胸に、私は思わず飛び込みました。そして、まるで幼い子どものように泣きじゃくりました。あなたはそんなわたしを私をぎゅっと抱きしめて、髪を撫でてくれました。あなたが好きだと言ったからあなたのために伸ばしたストレートの黒髪です。
「やっと逢えた…圭ちゃんが私のこと、置いていくから…」
泣きながら、あなたの服の胸元をきゅっと握って思いを口にしました。あなたは抱きしめる腕の力を少しだけ強めて言います。
「そうか、それでこんなところまで来てしまったのか…」
そのどこか悲しげな声に、私は思わず顔を上げました。せっかく逢えたことを喜んではくれていない様子のあなたに、不安で堪らなくなりました。
あなたは私を見つめながら、優しく言います。
「美羽、君はまだ、こっちに来てはいけないんだ。だから、元の世界に帰らないといけない」
あなたがなぜそんなことを言うのか、わかりませんでした。どうして私を突き放そうとするのか、私にはわからないのです。
「嫌、そんなの。私は圭ちゃんがいない世界にいるなら、どこにいても暗闇でしかないもの」
いつもなら、久しぶりに会えたときはにっこり笑って抱きしめてくれていたのに。私はあなたの傍にいたいだけなのに。
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