第2話「生い立ち」②

小学生の頃、こんなことがあった。


何か悪い事(学校の点数が悪かった?何か物を盗んだ?良くは覚えていない。)したとき、父親から「お前は勘当だ」、「この家には住ませない」、「施設(児童養護施設)に預ける」と言われた。


今考えると父親は脅したつもりなのだろう。


普通の子供なら「ごめんなさい、もう悪いことはしないからこの家に居させて下さい」ぐらいの事を言うのだろう。


しかし自分は違った。



「ラッキーだ」


「こんなラッキーなことはない」


「神様はやっぱりいたんだ」


「この父親から離れられる!!」



心の中で、生まれてきて最大級の悦びで声を上げた。


しかし、それを表面に出すことはできない。


子供ながらでも、父親を逆上させる事になるのは、分かっていたからだ。




表面上、残念な、本当は出ていきたくないようなそぶりを見せ、


「分かりました・・・施設に行きます(涙ながらに)」と言うと


「本当にいいのか、もう家族には2度と会えなくなるんだぞ」とか、


「ご飯んも少ししかなく、不味い飯しか食えなくなるし、菓子も食べれなくなるぞ

(実際は違うが)」とか、何だか引き留めるようなことを言い出したので、


子供心ながら、父親の気持ちが変わってはまずいと思い、


「自分が悪いことをしたので、施設に行きます」と言うと、逆上したのか、今からすぐに施設に連れて行くから、服とか、学校のものを鞄の中に入れて用意をしろと言ってきた。


私は、心の中で喜んで「はい」と叫び、表面上では、残念そうな、悲壮感を醸し出し、自分の部屋に行き荷物の準備をした。


隣の部屋で、父親と母親が話している声が聞こえた。


少し経つと母親が部屋に入ってきて、「施設に行ったら家族と会えなくなよ」とか、

「妹はどうするの?」とか、必死に止めようとしてくる。


これは父親に言われたんだなとすぐに分かったが、先ほど父親が言った施設に入れるという言葉を既成事実とし、本当に施設に行きたかったので、「いや、絶対、施設に行きます」と必死になって言っていたら、父親が部屋に入ってきて、


お母さんが今回だけ許してやって下さいと言うので、「今回だけは許してやる、二度とするなよ」と声をかけ、まるで本当は施設に入れるところだが、お前も反省しているみたいだし、今回だけはゆるしてやろう・・みたいな顔をして、すぐに部屋を出て行った。



いやいやいや、許さないでくれ、頼むから施設に入れてくれと・・・心の中でどれだけ叫んだことか・・・。


しかしその願いは誰にも届かず、まだこの家で暮らすことになった。


やはり神様なんて・・・神なんていないんだ、つかの間の悦びだった。


これは、小学4年生頃の出来事だろうか。


いまでも頭の中にこびり付いている記憶である。











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父親を憎む・・・ 孔雀翁 @nukumori

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