父親を憎む・・・

孔雀翁

第1話「生い立ち」①

普通の家庭に生まれたかった・・・


そんなことを思ったことはないだろうか?


思ったことのない人は、たぶん幸せな家庭に育ったのだろう。





小さい頃、よく父親に殴られた記憶がある。


記憶があるなんて生易しいものではない。


げんこつ、コップや皿が飛んでくるのはもちろん、身体を玄関に置いてある自転車に向かって投げつける、酒で酔いが回っているときは、リンゴと一緒に置いてあった果物ナイフさえ飛んでくる。



妹はナイフを顔に投げられ、目の少し上側の方に、一生消えない傷を負っている。

もし目にあったていたら、取り返しのつかないことになっていただろう。



酔っていたら、そういうことは何も考えないのだろうか・・・

考えないのであろう・・・

自分さえ良ければよい、自分の気持ちさえ晴れればよい、そんな感じなのだと思う。



また酔っていなくても、少しでも自分の機嫌が悪いときは、些細なことで家の玄関入口の外側で2時間正座させられた。



玄関の外側という事は、通行人が正座している前を通るという事である。

たまに心配して近所の人が、「もう許してあげたら?」というが、



当然聞く耳を持つはずもなく、「これは家庭のことだ、部外者は口を出すな」と声を荒げる。



それでも近所の人が食い下がりしつこく言うものなら、標的は今度はその近所に人になる。



なので、近所の人たちはもう慣れっこで、そのうち何も言わなくなる。



因みに、この正座は母親も何回かさせられた。



ものすごく悔しかったことだろう。



普段日常会話をしている近所の人たちが、自分が正座しているすぐ前を、何も見なかったように通り過ぎてゆくのだから・・・




今でこそ、DV「ドメスティック・バイオレンス」という言葉があり、警察や役所関係が動くのかもしれないが、この頃は只のの夫婦喧嘩、家族間の問題でお終いだ。



こんなことが、ずーと続くのである。



子供がまず思うのは、母親は何故こんな父親と結婚したのだろうか?



同じような家庭環境で育った人ならば必ず思うと思う。



実際に母親に聞いたことはないが、結婚前はそんなそぶりも見せず、暴力をふるうこともなかったのであろう。


結婚してから父親の人間性が変わったのか、ただ単に結婚するまで隠していたのかは知らないが、ここで人生の歯車が変わったのは間違いない。












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