第5話  月嘆きの姫

月嘆姫(げったんき)。その名が世に知れるようになったのは、さても、いつ頃からのことであろうか。

 月の都が陥落(かんらく)し、帝国の虜囚と(りょしゅう)なって幾年月(いくねんげつ)、くる日もくる日も故郷の月を見上げては涙に暮れてばかりいたので、そんな名で呼ばれるようになったというが、さりとて幾星霜(いくせいそう)もの間、数えきれぬ悲しみを夜空に訴え続け、怨霊と化した同胞(どうほう)の魂に思いを馳(は)せても彼女の心が癒(いや)されるわけもなく、ただ、その美しさだけが翳(かげ)りも見せず、夜陰(やいん)に咲く白き月下の花はますますその輝きを増していったというのだから、さぞや都に住まう多くの貴人を驚かせたことだろう。

『いかに〈天翼人(あまつばと)〉とはいえ、かの姫には神の力でも宿っておるのだろうか?』

 いくら都に住まう貴人といえども誰もが魔法に精通しているわけではない。やがて、そのような無知が憧(あこが)れにも似た畏敬(いけい)に形を変え、歪んだ形で流布(るふ)し始めると様々な願いと結びつき、根拠のない伝説を生じさせるは必然というもの。

 いわく彼女を妻(つま)に迎えれば不老不死の力を得られ、〈天翼人(あまつばと)〉をも凌ぐ力を授かるのだとか。だが、そんな噂がまことしやかに囁か(ささや)れると、そのうち魔法に縁のない庶民までが姫を見たさに帝都への巡礼を行うようになり、ついには、その憧れがさらなる沸点(ふってん)を求めて席巻(せっけん)し、人々に希望を与えながらも混沌へと導き始めたのは、さても今より三十年ほど前のことだったと史書は記している。

 折しも、揺光国主、煌月鳳晩(たかかげ)が覇者たる地位に登りつめた翌年、連合軍を率いて月下聖京(げっかせいきょう)へ攻めのぼり、帝を奉(ほう)じた同じ頃、かの姫もまた帝都から破軍京(はぐんきょう)へと移り住み、城内の一角に建つ屋敷に迎えられることになるのだが、当時の揺光国民の歓喜たるや、それは毎日がお祭り騒ぎのようであったと言われている。

 しかも、姫をめぐる巷間(こうかん)の話題が、その恋の鞘当(さやあ)てとあっては、それを煽(あお)る読売版誌なども飛ぶような売れゆきで、これにはさすがに朝廷も頭を悩ませた。

 さても愚かなことに、ある貴族は高価な装飾品を姫のために買い求めては莫大(ばくだい)な借財を築き、またある士族は姫への想いを断ち切れず、思いあまって腹を切り、生死の堺を彷徨(さまよ)ったとか。

 されど、そのような愚行が相次(あいつ)ぐほどに大衆熱も冷めやらず、その後、十数年に渡り騒動が続いたというから世の乱れも必至だったにちがいない。おまけに、その頃には絶大な権力を有した鳳晩候もすでに亡く、国力にも翳(かげ)りが差しつつあったというのに揺光の国民は相変わらず国の盛(さか)んを驕(おご)り、それが後(のち)の災いを招くことも周知のことながら国の隆盛(りゅうせい)とはまさにそのような些末(さまつ)なことから綻(ほころ)びるものである。

 ましてや時は乱世である。どの国も覇権を狙い、虎視眈々(こしたんたん)と情勢を窺うなか、覇者に寄生して権威を維持する朝廷も次なる宿主(やどぬし)を模索しているとあっては新たな火種が芽生えるのも、もはや時間の問題であったろう。

 されば、ここに天枢国との結びつきを強めた朝廷は新たな秩序を築かんと目論(もくろ)み、やがて不穏な一石を投じたのである。

 といっても、かの姫を帝妃に迎えようという話ではない。権謀(けんぼう)に長(た)けた朝廷はそんな危険は冒さない。

 帝国の律令(りつりょう)には男女に関する定めもあり、それにはこう記されているからだ。

 いわく側室は何人いても構わぬが女性の意にそぐわぬ婚儀(こんぎ)は認められないと。

 一説によると、大層、女好きだった初代皇帝に業を煮やした神遇皇后(じんぐうこうごう)がそのような律令を強行採決(さいけつ)させたという話だが、ともかく、その法が施行(しこう)されて以来、世の女性は好きな男性を選べる権利を有しており、帝といえども、かの姫に無暗に手を出すのは得策ではなかった。

 そこで朝廷は、ある若者に白羽の矢を立てることにしたのである。

 その若者こそ煌月家(かがやづきけ)の嫡男、鳳熾(たかおき)であった。鳳熾は病死した父に代わり、家督を継ぐことが決まっており、その美丈夫さと相まって世間の人気も絶大だった。

 その家督を許可する場において帝の口から姫を娶(めと)るよう薦(すす)めてみてはと俄(にわか)にそのような奏上(そうじょう)が持ち上がってきたのである。

 もちろん成功するとは誰も思っていないからこその目論見(もくろみ)である。なにしろ相手は〈天翼人(あまつばと)〉の唯一(ゆいつ)の生き残り。同胞を滅亡に追いやった七天帥家(しちてんすいけ)の子孫になど心許(ゆる)すはずもない。

 だが、そのような期待は見事に裏切られる結果となってしまったのである。

 それは、ある夜のことだった。

 

 その日も屋敷の庭で静かに月を見上げていた姫の耳に、その夜は大層美しい笛の音が聞こえてきたという。その清閑(せいかん)と闇を震わす旋律は薄絹(うすぎぬ)のように柔らかく、凛(りん)とした気配を孕(はら)みながらも深まる秋の静けさに溶けこみ、典雅(てんが)な響きで姫の耳を潤(うるお)したそうな。

 いったい、この笛の音はどこから聞こえてくるのだろう?

 ふと、心を動かされた姫は誘(いざな)われるままに屋敷の外に出(い)で、そっと耳を傾けた。

 姫の屋敷は破軍不死鳳(はぐんふしとり)城の敷地内にあり、その傍(そば)には堀から引いた池がある。

 今宵も池には月が浮かび、その水面(みなも)を滑(すべ)るように笛の音が響いてくる。

 やがて、その細い糸を辿(たど)るように闇を彷徨(さまよ)い、姫は池の畔(ほとり)に小さな四阿(あずまや)を見つけた。

 四阿は水面に迫り出すようにして建っており、そこに佇(たたず)む人影がある。

 じつに美しい姿である。白い狩衣(かりぎぬ)をまとった若者である。若者は月の光を浴びながら無心に横笛(よこぶえ)を奏(かな)でていた。まだ年の頃は十代だろう。若々しい魔力を湛(たた)えて旋律を踊らせている。

 そのかくも優しき音色に姫はしばらく時が経つのも忘れてしまうのだった。

 さて、どのくらいそうしていたであろう。やがて一際(ひときわ)高い音色が斜面を降(すべ)るように尾を引くや空気が張りつめたように凝(こご)り、その緊張の中に微(かす)かな息づかいを残して静寂へと誘われた。

 白々とした空虚(くうきょ)が漂い、その余韻を噛(か)みしめるように若者の口から溜息がこぼれ落ちる。

「さても今宵の月は、かくも美しき姿なれど、手を伸ばしても届くわけもなし」

 若者は途方に暮れた様子で水面の月を眺めていた。

その愁(うれ)いに沈む横顔を姫はじっと見つめていた。

「今宵も嘆(なげ)いておられるのであろうか。せめて、その静かな暮らしを妨(さまた)げるような真似はしたくなかったが、勅命とあらば致(いた)し方なし……」

 ざぁっと風が流れ、色づく紅葉(こうよう)が水面に落ち、その波紋に月がゆらめいた。

「やはり帝に拝謁(はいえつ)して、お断りいたそうか……いや、しかし……」

 寂寥(せきりょう)と木の葉が舞い、やがて二人の視線と視線が交差する。

 また風が吹き、姫の心をゆさぶった。

「うわぁっ! い、いつからそこに! そ、それがし、まったく気づきませなんだぞ?」

「えーと、べつに盗み聞きをするつもりではなかったのじゃが」

 と咄嗟に出た言い訳だったが気まずい空気が漂った。

「ちょうど最期の曲が終わる頃じゃったかの?」

「ということは、それがしの独り言も?」

 姫はこくりと首肯した。

「わ、忘れてください。すべて忘れてください!」

 その反応は滑稽だが、なんだか自分だけが置き去りにされてるみたいで腹立たしかった。

「そんなのは嫌じゃ」

「はぁぁ?」若者は羞恥と不可解の狭間(はざま)を彷徨っているような表情である。

「されば、あのような演奏が、今宵でもう終わりとは、つまらぬではないか。そうじゃ。いいことを思いついたぞ。そなた、明日の夜もここへきて笛を吹くのじゃ。これは命令じゃ」

「えっ、いや、その、命令とか言われても困るんですけど……ならば、やむを得ませぬが」

 その煮え切らない態度にも苛立(いらだ)ちを覚えた。しかも、こちらをふり向きもせず踵を(きびす)返すや、さっさと立ち去ろうとしている。その悩ましげな背に向けて声を荒げずにはいられなかった。

「なぜ悩むのじゃ? 世の男どもは皆、わらわに取り入ろうと必死だというのに」

「ありがたいことです。それがしの笛の音など気に入っていただいて」

「ならば、なぜ、そなたは逃げるのじゃ?」

「逃げる? あぁ、そうかもしれません。それがしの身は、それがしだけのものではありませぬ故に、だから迷うておりまする。だから、よく考えたいのです。しからば、ごめん!」

 何を? と問いかけようにも、もう、その時には闇に溶(と)けた姿を目で追うこともできなくなっていた。ぽつんと残された姫はしばらくそのままでいた。姫には若者の懊悩(おうのう)が理解できた。

 彼は帝の命を受けて自分に会いにきたのだろう。さても、この城の主は(あるじ)帝国でも一二を争う笛の名手だそうな。だから、ついにその時がきたのかと覚悟もした。世間を騒がす我が身の処遇(しょぐう)に朝廷は頭を悩ませており、とかく誰かと娶(めあわ)せようと画策する。とはいえ、その恋の鞘当てに帝を参戦させるわけにもいかず、そこで、あの若者に白羽の矢を立てることにしたのだろう。

 初めて会ったが、あの魔力を目の当たりにすれば正体など疑うべくもない。その身は世界に影響を及ぼし、その一挙手(いっきょしゅ)が国の未来を左右する。

 かくいう自分も世界を翻弄(ほんろう)する存在であり、その力を朝廷が恐れていることを今さらながらに危ぶまずにはいられなかった。それだけに今宵の邂逅(かいこう)が悔やまれてならなかった。

 きっと、あの若者は、もう二度とここへはこないだろう。

 ところがである。その次の日も屋敷(やしき)の庭で月を眺(なが)めていると、どこからともなく、あの笛の音が響いてくるのだった。姫は耳を疑った。まさかどうして、あの若者は自分の立場を理解していないのか? 行くべきか、行かざるべきか迷った。行けば引き返せなくなりそうなことは分かっていたが、それでも居ても立ってもいられなくなり、気づけば屋敷を飛び出していた。

「なぜじゃ……?」やはり昨晩と同じ場所にあの若者がいた。笛の音がぴたりと止む。

「よく考えた上での決心です」その応(いら)えに姫は息を飲んだ。

「勅命には逆らえぬと?」

「それもあります。でも一番の理由は、それがしの笛を気に入ってくれたからでしょうか」

「ただ、それだけのことで?」

「されど拙者には大切なことなのですよ。それがしは〈天翼人(あまつばと)〉を滅ぼした一族の末裔(まつえい)です。もちろん、あなたが我々を憎んでいることも知っています。だからこそ、この世に絶望しないで欲しいと願わずにはいられない。あなたには、もう、この世界しか残されていないのだから」

 そんなことは分かっている。でも、あの月を見上げると憎しみや悲しみが溢れだし、心が張り裂けそうになるのだ。そんな呪いに満ちた世界を、どうして受け入れることができようか。

「だからこそ、この世界を少しずつでも愛せるようになって欲しいのです。そのうえで僭越ながらも、この世界を変えていく力になって欲しいと願っております」

「変えていく力じゃと?」

「それがし思うのです。人に魔法など本当に必要なのかと――」

「そのような戯(ざ)れ言は勝手にいたすがよい。わらわには関係なきことじゃ」

 不快さを滲(にじ)ませて横を向いた。世界最強の一角たる魔法の力をその身に宿しておきながら、魔法を否定する愚か者の夢想になど、つき合ってはいられない。

「ですが魔法がすべてだなんて、まちがっているとは思いませんか? 人はそれぞれ様々な理想を求めるものです。例えば音楽や芸術は心を豊かにします。それは魔法より価値なきものでしょうか。身分や魔法に縛られぬ世界であれば、もっと色々な価値が認められていたはずです」

「言うておくが、わらわは、そなたの理想を拝聴(はいちょう)しにきたのではない」

 ならば、なぜ自分はここにいるのかと自問(じもん)しつつも首を傾げずにはいられなかった。

 この若者は何を言わんとしているのか? 何故、そのような話を聞かねばならん。

 わらわが聞きたいのは―――――――――。

「だいたい、その話と、わらわが、そなたの妻になるのと何の関係がある?」

「そうですね。でも、それがしは、誰もが自由に理想を追い求ることのできる国を、あなたと一緒に築いてゆきたいと考え、ここへきたのです。それは誰もが人として生きていく権利を大切にできる未来です。さすれば、もはや誰もが魔法や権力に翻弄されなくてすむはずです」

 その翻弄されなくてすむ中に自分も含まれていることはなんとなく分かる。

「それを手伝えと?」

「なにも、〈天翼人(あまつばと)〉の英知は魔法だけではないのでしょう」

 姫は心底から呆れた。よくもそんな大言壮語をぺらぺら喋れるものだ。こんな口説かれ方をしたのは初めてである。姫は考えた。どうにも真意が読めない。ならば試してみるかと考えた。

「協力するのは吝(やぶさ)かではないが、それならば、それには対価を求めたい。多くの殿方が、わらわの心を惹(ひ)くために様々な贈り物をする。そなたは、わらわのために何を与えてくりゃる?」

「さて心から望むものは無理でしょう。私は、姫のように永久(とわ)の命を得る者ではありませぬ故」

 姫は目を逸らした。自分でも動揺しているのが分かった。それを悟られたくなかった。

 確かに自分は不老不死の存在である。それは、この身に宿る怖ろしい魔法のせいだ。それ故、誰と連れ添っても相手が先に死ぬのは明白である。いや、それよりも、この身に宿る永遠の呪いは、この先もずっと世界の存亡をゆるがし続けるだろう。だからこそ、心の底にある根元的な孤独は決して癒されることはない。それを見透かされているようで、またしても腹が立った。

「なにも、永遠の命など苦にはしておらぬぞ」

「そうですか、ならば、そうですね」

 わざとらしく考えこむ若者に今度こそ溜息を吐いた。

 所詮、この者も、これまでの男たちと同じであろう。

「でしたら、それがしは、子供たちの笑顔を姫に捧(ささ)げたいと思います」

「こ、子供たちの笑顔とな?」思わぬ返答に呆然とした。

「そうです。子供の笑顔は世界が平穏でなければなしえません」

「それは、まぁ、分かる。……が、なぜじゃ? それをわらわに捧げてなんとする?」

「べつに深い意図などありません。ただ姫の周囲が子供の笑顔で満ちていれば、お寂しくはないのではと愚考いたしたまでのこと。きっと、それがしの笛などより効果があると思います。必ず姫の心を明るく照らしてくれるでしょう。それ以上に価値あるものなど、ほかに思いつきませなんだ。ですから、拙者は姫のために、そのような理想の未来を創りたいと思うのですよ」

 あまりにも唐突で、しかも、あまりにも屈託のないその申し出に姫は目を白黒させた。

「何をぬけぬけと」そんな憎まれ口を叩きながらも袂(たもと)で顔を隠さずにはいられなかった。

「これも気に入りませぬか? 姫は子供がお嫌いか?」

 そういう問題ではない。そう言いたいのに、なぜか言葉が出てこない。

「それがし、この世で最も大切なのは子らの笑顔と思うております。ですが、かように呪われた世界では、なかなかそれも実現できませぬ。だからこそ貴重なのです。そのような宝物に囲まれて暮らせば、姫もきっと幸せになれると思うのですよ。喩え、拙者が死んだ後でもね」

「な、何を申すのじゃ。死ぬなどと軽々しく口にするものではない!」

 勝手なことばかり言う若者に呆れ、もはや怒る気力も萎(な)えているのに胸が強くしめつけられ、なぜか涙が溢れてくる。一人だけ生き残ることを余儀(よぎ)なくされた自分に、この世の居場所を見つけることが許されるのなら――もう月を見上げて泣かなくてもよいのなら。

「どうなされた? それがし、何か悲しませるようなことを言うたであろうか? 無骨者ゆえ、知らず知らず姫の心を傷つけてしもうたやもしれぬ。もし、そうであるなら心から詫(わ)びる」

「ならば、その償(つぐな)いに願いを一つ叶(かな)えてくださいませ」

 姫はすんと鼻を鳴らして唇を尖らせた。もはや、このような表情を見せるのもいつしか平気にさせてしまうこの若者と、子供たちの笑顔を求めて理想の未来づくりをするのも悪くない。

 悠久ともいえる永い時のなか、そのくらいの寄り道くらい許して欲しい。

「なんなりと申されよ」

「では申します」姫は夜の闇をそっと抱くように口を開いた。

「殿下の抱かれし希望の光。わらわも大切にしとうございます。ですが、わらわは少々欲深でございますれば、その理想を、はっきりとした形で示していただきとうございます」

 そう言うや、姫は完爾と微笑み、夜空の星々を見上げるのだった。

 それから数年後のことである。

 国主となった鳳熾は評定(ひょうじょう)の決議を持ち、様々な改革を実施(じっし)することを宣言した。

 その一つが、庶民でも士官学校に入学できるという新たな制度の導入であった。

 これは身分の上下に関係なく誰もが理想を追求できる国にしたいと願う彼の第一歩であり、その遠い未来に実現すべく自由と平等を理想とする社会を築くための布石であった。

 ただし、それらの施策は国内外に大きな波紋を広げ、多くの賛同だけでなく批判も集めることになってしまった。だが、そんななかでも国母(こくも)、月嘆姫が自ら園長となって運営する幼稚園の開設などは庶民からも絶賛をもって迎えられ、やがて、それらの様々な改革が、より大きな繁栄をもたらす新たな扉を開けていくことにも繋がるのだが、しかし、それはまた後々のお話である。

 そこへ至るには、まだまだ多くの試練を乗り越えねばならず、その理想が実を結ぶに到るには、さらに多くの血と歳月が必要であったと――史書、〈月下天翼神記(げっかてんよくしんき)〉は、そう記している。

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