第十章 決戦②

 私たちは猛攻を止めなかった。魔王を倒すために、全身全霊をぶつけた。魔王には、まったくと言っていいほど聞いてはなかった。しかし、私たちは、諦めずに攻撃を仕掛けた。魔王の頭、腕、足、胴体、全部を攻撃しまくった。だが、魔王の守りは固く、いとも簡単にはじかれてしまう。これでは、いくらやっても同じで、最悪、私たちの体力が尽きて、十分経った頃には、あの世逝きが決まるだろう。

「これ、無理でしょ。どこやっても全く通用しない。弱点ってものが存在しないのか、こいつには」と、健は言いながら攻撃をしていた。

「はっはっは、私を殺そうなど、永久に無理なのだ。あと、三分もすれば、お前たちの命は消え失せる。さぁどうする?」と、魔王は、私たちを嘲笑っていた。それをされる屈辱に対する怒りや、この先魔王の支配も受け続ける人の悲しみを、私は感じていた。すべての攻撃を全力でぶつけても、魔王には、一切効かない。

 私が、思考を巡らしているうちに、三分経ってしまった。

「三分経ってしまったようだな。貴様らの人生もここまでということか。短い出会いだったが、少しは楽しめたぞ。それでは、さらばだ」と、魔王が言い終わるのと同時に、魔法が私たちに向かって飛んできた。雄は、放心状態になってしまった。何も考えたくない、という感情に陥ってしまったのだ。しかし、体が急に、勝手に動き始めたのだ。魔王の攻撃が私たちギリギリのところで、雄は、消し飛ばした。雄、というよりかは、雄ではない雄、無自覚による攻撃だ。

「なに?俺の攻撃を弾いただと!?そんなことあるわけがない!今のは、この世界もろとも消す威力なんだぞ!」と、魔王は、動揺を隠せなかった。私は、魔王を睨みつけ、高速で、魔王の間合いまで詰めた。魔王は、咄嗟のことで、身動きが取れずにいた。健は雄の行動を見て、

「なんだあいつ。こんな動き見たことがねぇ。本当に雄なのか?」と、呆然と雄の姿を見ているしかなかった。

 雄は、極限の極限まで精神を研ぎ澄ましていて、一度その集中力が切れると、しばらく動けなくなる。雄は、息一つ乱さず、魔王に立ち向かって、攻撃を繰り返す。

「な、なんだこの攻撃の重さは。さっきまでとは全然違う!貴様、何をしたというのだ!」と、魔王は雄に聞いているが、当然、雄は、今何も聞こえていない状態になっている。蜘蛛の一本の糸のように脆いが、ダイヤモンドのように固い精神になっている。

 雄は、魔王の動きを止めることに成功し、魔王は呼吸以外、何一つ動かせる箇所はなかった。

「くそっ、この俺がこんな小僧どもに負けるとは、考えられん、なにかの間違いだ!」と、魔王は、負け惜しみを言って、その場に倒れこんでしまった。

 雄は、しばらくして、意識が戻り、目の前には、魔王がいる状態だった。

「今回、お前が世界中に支配の現状が伝播されていなかったら、お前は、そのまま支配を続けられただろうよ。しかし、広まった以上、お前は結局、誰かに殺される運命だったのかもしれない。世界の人々は、滂沱しながら、お前の言うことに従い、惨憺と日々暮らしていたんだ。それを、今、お前が懺悔しないと、お前は、輪廻転生したとしても、お前は、このような暴動をおこし、誰かに殺される。それでもいいのか?」と、魔王に聞いた。

「それだったら、まだがらんどうとした空間にでも住んで、一人暮らしていきたいな。だが、それだと、結局、意味などないのか」と、魔王は、意味の分からないことを言って、

「それなら、懺悔したほうがましだな。だが、絶対誰も許さない。だから、死ぬ運命は変わらんだろう」と、魔王が言い終わると、全ての世界を、一昔前の世界に変えた。

「!?」私たちは、驚いた。世界が一瞬にして、きれいになったのだ。

「私は、これから、世界中の人々の支配を解く。その前に、テレパシーで懺悔することにしよう。貴様らのおかげで、私は、少し生まれ変わることができるかもしれない。さっきお前が言った、輪廻転生。もし、俺たちが、また会うことができたら、次は楽しく過ごそうではないか」と、魔王が言い終わると、さっき言ったことを、行動に移し、その後、消えてしまった。




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