第三章 仲間
少年は、しばらくの間、老人の家を拠点とすることにした。老人たちは、嫌がるどころか歓迎した。孫が来たような感じがしてうれしかったらしい。少年も、なぜかこの老人には心を許せる気がして、居心地がよかった。そして、気休めとして、老人と話すのが楽しく思えた。
「そういえば、あんたの名前は何というんじゃ?」と、老人は聞いてきた。少年は困惑した。それもそうだ、少年には名前がないのだ。年は10歳くらいで名前がないのは、不思議でたまらない。しかも、出生もよくわかってないのだ。親もいないらしい。
「ない」と、だけ少年は言うと、老人は、
「ほんなら、わしゃ名前つけようかね?あんたもそれでええかの?」と、提案してきた。少年は、小さく頷き、老人はしばらく考えた。
「あんたの名前は、雄でどうだ?」と、言った。少年は、
「なんで、雄なんだ?」と、質問した。
「そりゃあんた、これから英雄になるってもんでさ、そこから取ったにきまってるべさ」と、笑いながら言った。少年は、笑っている老人を不思議に思った。魔王に支配されているというのに、笑えるというのだ。そして、老人も自己紹介をし始めた。
「わしの名前は優作ってんだ。なんとも、作物一杯取れそうな名前しとるじゃろ?」と、のんきに言ってきた。多分、孫ができたと思い込んで、浮かれているのだろう。少年は、呆れもあったが、そんな老人を守らなければとも思った。祖父のような感じがして、それをなくしたら、多分自我を保てなくなる、と直感で思った。
そして、優作は雄よりを鍛えるようにした。しかし、雄は、鍛えるまでもないようにも思えたが、なんとも不思議なことに、優作という老人は、雄より強かったのだ。少年は驚いた。自分の力を過信していて、優作には、手加減していたが、本気でやっても勝てない、そう感じた。なぜ、優作は、あの化け物を自分で倒さなかったのだろう。魔王の支配も簡単に取れた。不思議でたまらなかったので、雄は聞いた。
「なんで、あの時、化け物を自分で倒さなかったんだよ」
「そりゃあ、お前、噂で聞いたからよ、雄が魔王を倒すってな。そこでわしは思った。こいつに未来を託そうってな。そして、案の定お前さんが来たが、その前にあの化け物が来たんだ。最悪自分で倒そうとしたが、ギリギリのところで雄が来て、助かったって感じよ」と、説明された。
「そっか」と、だけ言って、雄は再び鍛え始めた。
しばらくして、優作は、ある人を連れてきた。この少年は、健というらしい。なんと、雄と同じくらい強いという。そこで、優作は、雄に仲間にして、こいつと一緒に魔王を倒してこいという。しかし、雄は言った。
「その前に、健は魔王の支配から逃れてんのか?」と、すると、
「お前と同じくらい強いって言ってただろ、人の話聞いとけよ、このカス」と、いきなり暴言を吐かれた。それにムカついて、雄は健を殴ろうとしたが、優作に止められた。雄は仕方なしにやめたが、怒りは収まらなかった。
「これからは、一緒に行動していくんだから、仲良くせんか」と、怒られた。
健との出会いは最悪だった。しかし、コンビネーションは初めてとは思えないほどよかった。そしていつしか、互いを認めるようになり、仲良くなっていった。
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