ふうりん買っちった(高校生)

 休日、B子の家に遊びに来たA子。

 B子に連れられてB子の部屋へやってきた。


 A子「で、なんで来たんだっけ」

 B子「えっとほら、風鈴の話したでしょ」

 A子「あ、そうだった。風鈴買ったんだよね。見せて」

 B子「いいよ」とクローゼットまで歩いていって、何かを取り出すと、両手に風鈴をのせて戻ってくる。


 A子「おぉ、風鈴だ」

 B子「そのままじゃない。もっとあるでしょう」

 A子「青くて……いや、半透明で、海みたいな、ゼリーみたいな?」

 B子「もしかして、クラゲのこと言ってる? ゼリーフィッシュ」

 A子「あぁ、それそれ。やわらかそう」

 B子「それじゃあ良い音が鳴らないだろうね」

 A子「どんな音?」

 B子「うーん……ムニッ、ぽい音」

 A子「いや本当の風鈴のほうの音」

 B子「そっちか。じゃあこれから吊り下げよう」

 A子「まだつけてないの?」

 B子「うん。初めては一緒に聴いてみようと思ってね。まあ、買ったのが店内で、風もなかったから音を聴かないで買ったんだよ」

 A子「じゃあ見た目で買ったんだ」

 B子「かわいかったから」

 A子「この面食いめ」

 B子「それはなんか違う気がする。けど、まあ、キッカケがかわいかったからっていうのもいいんじゃないかな。まあとりあえず吊り下げよう」

 A子「そだね」


 *


 とりあえず窓辺のカーテンレールに取り付けられた風鈴。

 窓を開けるもピクリともせず。


 A子「無風だ」

 B子「じゃあ手で揺らしてみようか」

 A子「いや、それは風流じゃないよ」

 B子「おもむきがないとかいう?」

 A子「まあ見ててよ」と、A子はフーッと息を風鈴へ吹きかける。


 リン、リン、とちょっとだけ強引に鳴らされる風鈴。


 B子「いい音だなぁ。なんだか涼しいような気がしてくる」

 A子「風があるという錯覚なのでは」

 B子「じゃあA子はどうなの」

 A子「まあ、そういわれれば、涼しい気もしてこないでもない」

 B子「そういうものなのかもね」


 *


 無風。静止する風鈴を座りながらじっと眺める二人。


 A子「暑いよー」

 B子「私に言われても。もう窓閉めてエアコンつけようかな……」

 A子「それは風流じゃないよー」と、隣のB子の肩を揺らす。

 B子「風流もなにも、ホントに暑いから。そんなこと気にしてられない」

 A子は「リンリーン、リンリーン」と、B子を揺らしながら言う。

 B子「人間からそんな音出るわけないでしょ~」

 A子「じゃあB子が自分で鳴ってよー」

 B子「え~」しかし、「……リーン、リンリーン」諦めた。


 A子「私は風~」

 B子「A子は人間だよね」

 A子「ほら鳴った鳴ったー」

 B子「はいはい……リーンリーン、リーン」


 そのとき、どこかからフッと風が吹いて、風鈴が鳴った。

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