ウェイクアップ!(社会人)

 会社が休みの日の朝。ベッドで目を覚ますB子。体を起こして隣を見るとA子はまだスヤスヤと眠っている。今日は水族館に出かける予定があることを思い出したB子は期待に笑みを浮かべ、そしてA子を起こすことを決める。

 ただ普通に起こしたのではいつも通りになってしまうので、今日はいたずらをしてみようと思った。何か、楽しい起こしかたはないかなぁ……と考える。

 そうしてピコンッ! とひらめく。素敵な目覚めになるように、どうせならもっと好きになってもらえるように。

 B子はA子の耳へ顔を寄せ、そっと口を開く。


 B子「むかーしむかし、あるところにA子とB子というアツアツカップルがいました。A子は山へ洗濯に、B子は山へ芝刈りに――はいかないで日がな一日お花畑でお互いの好きなところを言い合ったり、おやつの食べさせ合いっこをしています。そんなあるとき、二人は一本の白く美しい花が光っているのに気づきます。……いとおかし。二人はそばへ寄って見てみます。すると、チクタク、チクタクとなにやら花から音が聞こえるではありませんか。これはいけないっ、A子は言います。そうしてB子の手を引いてその花から急いで離れると、なんと、その白い花は大爆発。二人は背後から爆風を受けてつまづいて転んでしまいます。そうして爆発がおさまると、B子はゆっくりと体を起こしました。そうしてA子に声をかけます。見て、花びらが空から降ってくる。A子は仰向けになって空を見上げると、まるで青空からちぎれた雲が降ってくるかのように、たくさんの白い花びらがゆらゆらと落ちてくるのです。二人は爆発のことも忘れて、ただただしばらくのあいだ空を見上げていたのでした……」


 話し終えたところでA子が目を覚ますと、そんなA子を楽しそうにB子が見つめていた。寝ぼけまなこで見つめ返すA子は、日の光の中で微笑むB子ははたして現実のB子なのだろうか、とわずかに考え、そして「夢か」と再び瞳を閉じた。


 B子「あれ……? おーい、こっちが現実だぞー。起きて―」


 この後A子を現実の世界へと目覚めさせ、出かける支度を始める二人のとある休日の朝の出来事。

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