くーる?(社会人)

 日曜日、会社が休みのA子とB子。昼下がりにシャワーを浴び終えたA子がタオルを頭にかぶりながらリビングにやってくる。


 A子「気持ちよかったナリー」

 テーブルでノートパソコンを眺めていたB子は顔を上げる。

 B子「あ、おかえり。お買い物ありがとうね」

 A子「ん。負けは負けだからね。暑すぎて帰ってソッコー水浴びてきた」


 灼熱の太陽が張り切っていた夏の日。A子とB子はゲームで負けた方が買い物にいく約束をしていたのである。ゲームに負けたA子は買い物に出かけ、汗だくとなり、帰ってからすぐにシャワーを浴びに向かった。


 B子「そんなに暑かったんだね。お疲れさ……あっ違う」

 A子「?」首をかしげる。

 B子は思い出したようにパソコン画面へ顔を向け、「べ、別に感謝なんかしてないんだからね。これはゲームに負けたアンタが悪いのよ。一人になってからやっぱり一緒に行けばよかったなんて思ってないんだから」と言い終えて再びA子に顔を向ける。「どうだっ!」と言わんばかりの微笑を浮かべながら。


 A子「……どしたの?」

 B子「クールな対応をしようと思ってセリフを考えてみました」

 A子がパソコンへ視線を向けると、画面には文章がまとめられていた。離れているので内容はわからないが、空白改行を挟んだ文字のまとまりがいくつかある。


「さっきのはクールなのだろうか?」と思いつつもA子はたずねる。


 A子「どうして?」

 B子「暑いからクールなのがいいかなと思って」

 A子「優しいな。クールなのに」


 B子は「えへへ」と照れ笑いをしてからすぐに「おっと」と画面へ顔を向け、「そんなところに立ってないで早く座ったらどうなの。アンタが疲れるとアタシが用事を頼めなくなるから迷惑なの」と読み上げ、またA子に顔を向けると、「ちょっとゆっくりしててね」と立ち上がってキッチンへと向かう。

 その後ろ姿を眺めながらA子は、「矛盾はないのに混乱してくる」と困ったように小さく笑って席に着き、一休みすることにした。


 それからB子はかき氷機と食器やシロップを持ってきて、かき氷を作り始めた。「べ、別にアンタのために作るんじゃないんだからね。罰ゲーム。そう、これは罰ゲームなのよ。アンタの頭をキーンとさせるためなんだからいっぱい食べなさいよね」とセリフを言いながら。


 A子はやっぱり「それはクールではないような気がする」と思いつつ、それからもクール(?)なセリフを挟むB子とクールなかき氷で涼んだのだった。


 ――かき氷を食べているときのこと――


 B子「うっ、キーンとする」頭をおさえる。

 A子「おや、クールだからかな」と微笑む。

 B子「やっぱり慣れないことはするもんじゃないよね~」


「優しいところはずっとB子だったけどね」とは言わずにかき氷を口へ運ぶA子であった。

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