きみをかんじるということ(高校生)
夏休みにA子のおばあちゃん家へ遊びにきていたA子とB子。家から少し歩いたところにある小川までやってきた。
B子「ん~。近くにくるだけでも涼しい気がするね」、川辺で振り返ってA子に声をかける。
A子「うん、気をつけてね。浅いけどつまづいたりするから」、B子の後ろから小さく手を振る。
B子は靴と靴下を脱いで川辺に置くと、片足から慎重に川へ沈めていく。足が川底へ着いたときの深さは膝の下までで、水流はB子の脚を撫でるように流れていく。
B子「気持ちぃ~。A子もおいでよー」、振り返って手を振る。
A子「私はここで座ってるよ」
そういってA子は、川辺にある岩に座ってサンダルを脱ぐと、足を川へつけて大きく息を吐いた。
B子は歩いて数メートル先の向こう側まで行ったり、川へ手を入れて小石を拾って眺めたりしていたが、それから少ししてA子の元まで戻ってきた。
見るとA子は岩に手を置いて目を閉じていた。
B子「どうしたの。もしかして眠たい?」
A子「うんん、何も考えてないだけ。ここでこうやってさ、何も考えないようにするのが好きなんだ」
B子「そっか。A子はずっと前からここにきてたんだもんね」と笑みをこぼし、A子のとなりまでやってきて腰を下ろす。
B子「でも……」と、となりへ顔を向け、自分の右手をA子の左手の上に重ねると、「私のことを考えてほしいような気がするなぁー」とささやくようにいう。
A子は目を閉じたまま小さく笑い、「B子もやってみなよ」
B子「いいよ。そのかわりあとで一緒に入ろうね」と前を向き目を閉じる。
A子はわずかにうなずき、そうして二人はせせらぎと、どこかのセミの声と、風に枝葉が揺れる音に包まれた。
B子は徐々に、自分の呼吸も、耳から入る音も、足の冷たさも、右手の柔らかさも、すべてが溶けていくような感覚を覚えた。
ただ、ハッキリと言葉には浮かばないけれども、とても心地よい感じがする。
「この世界に、今この瞬間、大好きな人とここにいる」
何も考えていないはずなのに、頭が、胸が、心地よさに満たされていく。
さらさらと川が流れ、ジージーとセミが鳴き、そよそよと風が吹く中、二人は目を閉じてただお互いを感じていた。
……いい雰囲気だけど、このあと川に入った二人がキャッキャウフフと水のかけ合いっこをしたのち転んでしまいビショビショで帰ったという話はここだけの秘密。
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