えきさいと(社会人)
金曜日の夜。明日は会社が休みのA子とB子は、リビングのソファーに座ってテレビで映画を観ていた。
画面内では壮絶なカーチェイスが繰り広げられており、主人公の男が運転する自動車と、それを追いかける敵の自動車が横に並ぶ。ガンッ、ガンッと何度も車体を接触させていたが、目の前からやってくる大型トラックを避けるため距離を空けた。そしてトラックが通り過ぎた直後、主人公は窓から構えていた拳銃で相手のタイヤを打ち抜き、よろめいた敵の車体はコントロールできずに路肩で駐車中の自動車へと突っ込んで、衝撃音と共にガラスの破片を飛び散らせた。
A子(ドライビングテクニック、集中力、状況判断能力、射撃の正確さ、この主人公はただモノではないな)
と映像に見入るA子。
B子(ハラハラする~……あんな危険なドライブするのってどんな気分なんだろう。そもそも謎の組織に追いかけられることはないけれど……でも私は運転したくないなぁ。……あ、じゃあそうなったらA子に運転してもらおうかな)
と、想像を膨らませていた。
――B子イメージ――
運転席でハンドルを握り猛スピードで車をとばすA子。
A子「B子! お前は私が必ず守る!」
※イメージです。
助手席に座っていたB子は両手を胸の前で構えながらそれを聞くと、「えーん、B子こわーい」とA子の腕にすがりつく。
A子「ちょっ! 今運転中だから、動きづらいから!」と正面とB子を交互に見ながら運転を続けるが、車体はグワングワンと蛇行する。
B子「なんだかドキドキするの。これって吊り橋効果っていうのかな?」
話を聞かないB子。
A子「自分で橋を壊しにかかるヒロインがいるかーッ!」驚愕と焦りの混じった表情でB子へ顔を向けるA子。
B子「揺れる橋、心も揺らぐ、ランデブー!」と片手を突き上げて句をよみ楽しそうに正面を向いたB子だったが、すぐに目を見開いて「前ッ! A子前!」と叫ぶ。
A子「――ッ!」
目前に迫っている対向車。
――イメージ終了――
B子(失敗しちゃったなぁ。でもA子はカッコよかった)
微笑みながら画面へ視線を送るB子は、隣に座るA子に身を寄せて腕を抱いた。
そんなB子へ顔を向けたA子は、「穏やかな表情をしている……アクション映画だけど」、と不思議に思いながらも、再び映画を観ることにしたのであった。
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