ちゅーちゅーえんどれす(社会人)

 日曜日、会社がお休みのA子とB子。

 リビングのソファーに並んで座り、ノートパソコンをいじるA子、本を読むB子。


 不意にブンッと顔を自分の腕に向けるB子。

 B子「!?――蚊だっ」

 気づいて叩こうとしたときにはもう遅く、腕にとまっていた蚊は離れてプーンと飛び去ってしまう。


 A子はB子へ顔を向け、「……刺された?」

 B子「ん、かゆいかもしれない……!」


 ギュンッと顔を前へ向け、視線で蚊を探すA子。

 A子「……許さん」

 B子「え……?」

 A子「B子の血を奪ったからには逃してはおけない!」

 B子「そんな大げさな」

 A子「ぶっ潰す」


 それから立ち上がって蚊を探すA子。


 ――数分後――


 ソファーに戻って腕を組むA子。

 A子「……いない。もしかしたら窓から逃げたかも」

 B子「気にしなくていいのに。夏なんだから普通だよ」

 と落ち着いて本を読むB子。


 A子「まあ、そうだね」

 それからノートパソコンを膝に置いて、「そういえば」と口を開く。

 A子「蚊って血を吸ったあと羽ばたく回数が増えるらしいよ。血を吸って重くなるからなんだって」

 B子「ふーん。そうなの」

 A子「今頃どっかで休んでんのかなぁ」

 B子「気になるの?」

 A子「いや、そうじゃないけどさぁ……」


 口をとがらせるA子へ顔を向けるB子。

 B子「……じゃあ、吸ってみる?」

 A子「?……なにを」

 B子「私の血ー」

 口の前にもってきた人差し指を伸ばして蚊のマネをする。


 A子「私は吸血鬼か」

 B子「吸血鬼でもいいんだよー? A子なら。ほらほら」

 と口の前の人差し指を揺らす。


 難しい顔をしてB子の指先を見つめていたA子。

 ハッとして、

 A子「……それB子も吸血鬼になっちゃうんじゃない?」

 B子「うーむ、夜型になるかもしれないね。会社で寝ないようにしないと」


 わずかに笑みをこぼすA子。

 A子「私はいつでも日中眠いけどね」

 そうしてB子へ顔を寄せ、伸ばされた人差し指をパクっと口にくわえる。


 小さく首を傾げるB子。

 B子「あれ……? これ吸ってるのかな、吸われてるのかな」

 くわえたまま喋るA子。

 A子「はひかに。へもひょうほーともひゅーけつきはよ」

 ※「たしかに。でも両方とも吸血鬼だよ」


 指をスッと抜いてA子を見つめるB子。

 B子「じゃあお腹いっぱいになったら二人とも頑張らないといけないね」

 とA子へ顔を寄せる。

 A子「よくわからないけど、B子のためならたくさん羽ばたくよ」

 微笑みあうA子とB子。


 この後めちゃくちゃバンパイアタイムした。

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