くーるくる(高校生)

 高校の夏休み。A子のおばあちゃん家に遊びに来ていたA子とB子。縁側に座ってソーダ味のアイスキャンディーをシャクッ、シャクシャクリと口へと運ぶ。


 B子「あ、トンボ」

 二人の目の前を飛んでいるトンボを視線でとらえる。

 A子「うん。近くに田んぼとか川とかあるからいっぱいいるよ」

 B子「ほぅーほぅ、そうなんだ」

 とアイスを一口。

 まだ離れないトンボにB子はアイスを向けてクルクル回す。


 B子「捕まえるときこうするんだよね」

 A子「うん、指でね。でも飛んでるときは効かないんじゃないかな」

 B子「へぇー、そうなんだ」

 とアイスをシャクリと一口。


 B子「じゃあこうだ」

 と隣に座るA子にアイスを向けてクルクル回す。


 A子「ワーヤラレター――」

 とアイスに顔を素早く寄せて口でくわえる。


 B子「わっ、私のアイスが!」

 A子「おいしー」

 とかじって満足げなA子。


 B子「あーっ、私の罠がっ!」

 A子「いいんだって。罠なんてこんなもんだよ」

 B子「えー……」

 と覗き込むようにA子へ顔を寄せる。

 そんなB子へ楽しそうに顔を向けるA子。


 A子「ほら、今なら捕まえられるよー?」

 B子「……じゃあ、ちょっとだけ」

 座っている距離を詰める。肩が触れて、腕に手を回す。


 A子「オッケーオッケー!」

 笑みを浮かべて自分のアイスをシャクリとかじる。


 B子「捕まったんでしょ? それに私はオッケーじゃないんだけれども!」

 A子「私はさ……。罠でもいいんだ。B子と一緒にいたいから」

 と、飛んでいくトンボを眺める。


 B子「……ふぅん。まぁ……、実は罠じゃないけれども」

 と前を向いて、小さくなるトンボが消えても遠くの入道雲を眺める。

 B子「いや、やっぱり罠かもしれない」

 A子「そっかー」

 と変わらず笑みを浮かべる。

 B子「だから……だからだよ? せっかくだし、一緒にいようね」

 A子「そんなの当たり前だし。いいよ」


 空に溶けたセミのこえが降る縁側で、肩を寄せる二人はとけそうなアイスをくわえながら、見えなくなったトンボを眺めていた。

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