おもくない(社会人)

 日曜の朝、会社が休みの二人。

 A子がベッドでうつ伏せに眠っていると、先に起きてリビングに行っていたB子が寝室に戻って来る。


 B子「まだねてる」

 とベッドにあがり、A子の上に重なるようにのる。

 B子「おーきーてー」

 A子「ん~……おも」と口を開く。

 B子「ん??」声に気迫がこもる。

 A子「――くない」

 と言い終えてA子は再び眠る。


 B子「もーってばー」

 と体を上下に揺らす。

 A子「ん……わかった。ちょっと待って」

 と体を回転させようとするので、B子はベッドに手をついてスペースをあける。

 仰向けになるA子。


 B子「おはよー」、声をかける。

 A子「んー……おはよ」

 と重いまぶたを持ち上げながら返す。ぼんやりとした視界の中にB子をとらえる。焦点が定まり、やわらかな光に照らされたB子が微笑むのを見つめる。

 A子「…………」

 無言のまま腕を上に伸ばして、つづけてB子を胸に抱き寄せる。


 B子「おや?……朝からどうしたのかな?」

 A子「なんでも」


 B子は「しょうがないなぁ」と小さく笑って顔をA子のほうへ向けると、A子はスヤスヤと眠っていた。

 B子「やられたっ!」

 体を動かそうとしてみると、しっかり抱きしめられていることがわかった。

 B子「逃げられない……!」


 が、結局、B子は秘めたる怪力を解放することでA子を起こしたのであった。

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