すきあり(高校生)

 高校の放課後、帰路を並んで歩くA子とB子。


 A子「あっ。いいのみっけた」

 と、公園の近くで足元に目をやる。


 B子「?」

 A子「ほら」とそれを拾いあげてB子に見せる。

 B子「枝だね」

 見るとA子が拾ったのは木の枝だった。


 A子「いい形してる。剣みたい」

 と手に持った枝を眺めながら歩き始めるA子。

 B子「なんだか小学生のころみたいだね」

 と微笑みながらB子も並んで歩く。


 A子「そだね」

 と、枝を上にかまえて、「えいっ」と振り下ろす。

 それを見ていたB子は「あっ」と口を開く。

 B子「もう一回やってみて」

 A子「?……うん」


 枝を上にかまえるA子。

 B子「スキありっ――」

 と素早く体をA子の正面へ移動させ、向かい合って立つ。

 至近距離に立たれたA子は驚いた表情で動きを止める。

 A子「どしたの……?」

 B子「つづけて」と期待の表情でA子を見つめる。


 A子「……えいっ」

 腕をおろすと、A子の腕はB子の腰へまわる。

 満足そうな表情のB子。

 B子「スキありだよ」

 A子「やられた」と微笑む。

 B子「修行がたりませんねー」

 A子「じゃあおかえし」

 と、顔をB子へ寄せて、コツンと額を合わせる。


 A子「めんっ」

 ちょっとだけ驚くB子。

 そんなB子を見つめるA子。

 A子「スキだよ」、と微笑む。

 B子「……やられました」

 伏し目がちに照れ笑いを浮かべるB子。


 それから昔を思い出しながら、再び並んで歩き出した二人であった。

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