第66話 ④癒しの天使様は服のサイズを間違えてお困りです
テストもなんとか無事に終わり土曜日。
俺は天谷さんとデートをしていた。
のは、いいんだけど・・・・・・・。
もの凄く違和感を感じるのは気のせいだろうか。
「どうかしましたか?」
「それさ・・・・・・」
俺は天谷さんの服の袖を指さして言った。
「サイズ間違ってない?」
「ふふ、バレてしまいましたか」
天谷さんは楽しそうに笑って服を捲って手を出した。
しかし、すぐに袖は元に戻った。
「実はサイズを間違えて買ってしまったんです」
「紫穂さんでもそんな間違えあるんだね」
「そりゃあ、ありますよ」
「なんか意外」
「ネットで買ってしまいましたからね。一応、サイズを確認したつもりだったんですけど・・・・・・」
「なぜか大きかったと?」
「はい」
天谷さんは恥ずかしそうに袖で顔を隠した。
「変、ですか?」
「いや、変じゃないよ。萌え袖みたいで」
「萌え袖!?いいですね。可愛いですか?」
「そんなの最高に可愛いに決まってるだろ」
自分で「可愛いですか?」と聞いたくせに天谷さんは恥ずかしそうに「うぅ・・・・・・」と呻き声をあげていた。
「さて、どこに行こうか?」
「寒いのでラーメンでも食べに行きませんか?」
「お、いいね。行こうっか」
「はい!」
ということで俺たちはラーメン屋を目指すことにした。
スマホで近くのラーメン屋を検索したところ、味噌ラーメンの美味しいお店がこの近くにあるらしいのでそこに行くことになった。
「それさ、手が冷たくなるのを避けれそうだね」
「確かに、全然寒くないですね」
「いいなー」
今日は手袋を忘れてしまって、さっきから俺は手を何度も擦り合わせていた。
その手は一向に暖かくなる気配はなく冷たかった。
「そういえば、今日は手袋はどうしたんですか?」
「それが学校に来ていくコートに入れっぱなしで忘れてきちゃってさ」
「それはまた・・・・・・」
天谷さんはそう呟いて、袖で隠れた手を差した出してきた。
「中、入れますか?」
「え、いいの?」
「もちろんです。というか、手を繋ぎたいです」
「そ、そっか」
俺は恥ずかしがりながら天谷さんの袖に手を通して、天谷さんと手を繋いだ。
予想通り、袖の中は温かかった。
「文秋君の手、冷たすぎます」
「ご、ごめん」
「しっかりと温かくなるまで離しませんからね」
「う、うん・・・・・・・」
天谷さんと繋いでいた手が温かくなるより先に俺の心の方が先に温かくなったのは秘密である。
それからその状態のままラーメン屋に到着し美味しい味噌ラーメンを堪能して心も体もポカポカに温まったのであった。
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