第62話 ③癒しの天使様は正月太りでお困りです

 ダイエットを開始して1週間が経過した。

 晴れた日は毎日文秋君と一緒に走った。

 そのおかげか、私の体重は元の数字に戻った。


「ふぅー。よかった」


 このことを早速、文秋君に伝えようと電話をかけた。


「もしもし!文秋君!」

『もしもし。テンション高いね』

「聞いてください!体重が元に戻りました!」

『そっか。それは、よかったね!』

「文秋君はどうですか?」

『もちろん戻ったよ』

「そうなんですね。二人ともダイエット成功ですね!」

『そうだね』

 

 電話越しに文秋君が笑った。

 

『成功したけどさ、これからもたまに走らない?紫穂さんのバイトのない時とか』

「そうですね。せっかくですからこれからも走りましょうか。体力作りにもなりますからね」

『そうそう』

「そういえば、文秋君はいつから学校が始まるんですか?」

『明日からだよ』

「一緒ですね」

『もう、冬休みも終わりか〜』

「ですね。あっという間でしたね」

『そうだね。楽しかったね』

「楽しかったですね」


 文秋君も楽しいと思っていてくれたことが私は嬉しかった。

 明日から平日はあまり会えなくなる。

 そう思うとやっぱり寂しい。

 一緒の学校に通ってたらな、なんてことを最近思うことがある。

 もしも、文秋君と一緒の学校に通っていたらもっと楽しい日々を過ごせてたんだろうな。

 

「文秋君と同じ学校だったらな〜」 

『そうだね。同じ学校だったら、毎日がもっと楽しかっただろうね』

「ですよね。私もそう思います」

『まぁ、こればっかりは仕方ないよ』

「そうですね。一瞬、転校しようかとも思いましたけど・・・・・・」

『あはは、もし紫穂さんが転校してきたら、賑やかな学校生活になるだろうね』


 文秋君は楽しそうに笑った。

 本当に転校しちゃおうかな・・・・・・。

 なんてことが頭をよぎった。

 もちろん、本当にはしないけどね。

 たぶん・・・・・・。

 それからしばらくだらだらとお話をした。


『そろそろ寝よっか』

「そうですね」

『じゃあ、また明日の朝ね』

「はい。おやすみなさい」

『おやすみ』


 電話を切って私は布団に潜った。

 まだまだ寒い日は続きそうだ。

 しかし、私の心はポカポカ。

 好きな人と電話をして、明日も会う約束をして、幸せな気分だった。

 私はその気持ちのまま静かに眠りについた。

 

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